第2026話、自衛よし
我が家の自家用機アドヴェンチャーⅡ号を追跡する謎の飛行物体。形は把握できたが、これまで見たことがない。まさしく未確認機だ。
『吸血鬼帝国のスカルヘットみてぇだ』
ベルさんが、かつて戦ったスティグメ吸血鬼帝国の空飛ぶ頭蓋骨戦闘機を思い出したらしくそんなことを言った。
確かに、あれに突起をつけたら見えなくもないか。
「翼のない航空機とは、すでに交戦したことがあったんだな」
俺もちょっと懐かしくなった。あれに似たような飛び方をするなら、初見でも対応はできそうだ。
まだ敵か味方かわからないけど――ん? スキャナーに反応。7、8……9機?
『団体さんが現れたようだぜ』
漆黒のドラケン・ベルさんスペシャルが高度を若干上げた。
『つか、今どこから出てきた?』
「いきなり現れたように見えた」
遮蔽か何かで隠れている母艦があるのか。廃墟都市から発信されたものを拾って急行したのなら、まあ小型機だけのわけがないよな。
「これまで目撃されていないって考えると、何だか怪しいな」
『ああ、ネメジスの時みてぇだ』
嫌な共通点だ。まさかこいつら、つるんでいるんじゃないよな。
『にしても、こっちに9機も未確認機ぶつけてくるってことは、こいつらやる気だぜ』
「向こうは、こっちが戦闘機だってわかっているからな」
カスタムのドラケンと、トロヴァオンの最新モデル――正確なデータがなくとも、同盟軍で使用されている機の派生だってことは、ちょっと資料を見ればわかることだ。その上で逃げるでもなく向かってくるということは、明らかに同盟国とドンパチやる気のある連中ということだ。
なにせここは、同盟軍テリトリーでもあるから、不法侵入をしているのは向こうであるわけだしな。
とはいえ、こっちも今は正規軍じゃなくて、ボランティアだ。勝手に戦端は開けない。仕掛けられたら自衛はできるんだけど。
「まあ、黙っていても仕掛けてくるんだろうけどな」
『やっぱ、一発殴らせないと駄目か?』
ベルさんは若干不服そう。気持ちはわかるけれども……まあ、説明しなくてもベルさんはわかっている。
「シールドの出力を上げよう。なに、向こうはお構いなしに撃ってくるさ」
緑色の光が走った。
「な? 言ったとおりだろう?」
『だな!』
未確認機はビームを放ってきた。アンノウン改めてボギー。正面からのヘッドオン。機体をロールさせながらプラズマカノンを連射。針路上に入ったら、吹き飛ぶぜ。
横転するように機動して、一つ、二つ!
青いプラズマ弾が直撃し、敵機は火を吹いた。球体を撃ち抜き、爆発四散。すれ違い様の攻撃。シールドがなければ、自殺に等しいからまずやらない行為だ。
敵機はシールドなしか、トロヴァオンのプラズマ弾の直撃に耐えられない程度のものしかない。
敵機の間を抜ける。センサー上では、敵機は6機になっていた。おいおい、ベルさん冗談だろう? 俺、二機墜としたぞ?
「久しぶり過ぎて、腕が落ちているじゃないか?」
『言うなよジン。乗ってないと腕が落ちるってのはそうなんだからよ』
しかしベルさんの声には余裕しかなかった。
『残りはオレ様が片づけておくから、お前はアドヴェンチャー号のカバーに回れ』
「いいのか? 俺は喜んでそうするぞ?」
家族優先だからね。アドヴェンチャーⅡ号を追っているのも、この敵機と同型。撃ってきたからには、あれも敵だ。
・ ・ ・
アドヴェンチャーⅡ号は、敵性航空機に追いつかれた。
リムネは操縦しつつ、モニターで追跡者の記録をとらせていた。この辺りは元魔神機操者、軍人の性かもしれない。
コ・パイロット席のリンは、ママの一人であるリムネを見た。
「リムネママ、このフネなら余裕で振り切れるのに、何で全力を出さないの?」
「これ、自家用車なのよ。私物をいっぱい乗せているから、無茶な操縦ができないのよ」
ロールだって急旋回、急上昇、その他色々対応できる器用な小型艇で、それを存分に振りまわせる腕前をリムネは持っている。だが――
「あなたたちが持ち込んだ模型がひっくり返って壊れても知らないわよ?」
「そんなこと――」
自分たちの命より大事? そもそも模型はあたしは持ち込んでなんか――言いかけるリンだが、リムネは返した。
「あなたたちのママをやっているとね、子供が不機嫌になる要素は回避したくなるものなのよ」
もっとも、真に危険と考えるなら、リムネだって全力で手を尽くす。だが彼女は、このアドヴェンチャーⅡ号の性能を信用していた。
「大丈夫よ。お父さんがこの船にあらゆる防御手段を装備させた。撃たれたって簡単にはやられないわよ」
多様なシールド、たとえ抜かれても装甲にブァイナ装甲+ダンジョン壁を採用している。これを破壊できる武器があるなら見てみたいとさえ思える。もちろん、その時にはこの船も乗っている全員もおしまいだが。
あと、子供たちには言っていないが、転移離脱装置を装備しているので、ジンがいなくても、定められたセーフティーゾーンへの転移脱出が可能なようになっている。今から入らなくても保険は万全である。
「さあ、せっかくわざと追いつかせてあげたのだから、正体を見せなさい」
リムネは、追っ手の動きをモニターで見やる。緑色の光――それを刹那で反応し、機体をスライドさせて躱す。急な回避機動に、リンは席の中で傾いた。
「攻撃された!? ってか躱したの!? 嘘……」
「どうやら、悪い人たちだったみたいね。リン――」
リムネは口元を歪めた。
「相手は攻撃してきた。ここからは自衛可よ! 反撃しなさい!」
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