第2025話、未確認機に追跡されるアドヴェンチャーⅡ号
「――それで、この円盤と六脚の目的は、魔力生命体とやらを捕獲することで間違いないんだな?」
ベルさんの確認に、俺は頷く。
「このデータパッドが嘘をついていなければな」
回収された時、偽の情報をバラまいて、こちらを混乱させようとする手――諜報の世界じゃ、割と珍しくない。
「機械どもに任せてか?」
監督役の人間がいないことにベルさんも疑問をいだいている。確かにな。ただ――
「記録によると1年前からここに待機状態になっている。遭遇する可能性が低いから、機械に任せて人間は引き払ったのかもしれないな」
「まぁ、ここじゃ暇だろうからな」
ベルさんは苦笑した。ここはアポリト文明時代の廃墟。それも半分地中に埋まっているような場所で、一般人だって近づかない。というか近づけない。
退屈すぎて、人間が逃げ出すのもわかる話だ。組織としても、そんなところに人件費は出せないよ。
『閣下』
シェイプシフター兵がやってきた。
『捜索しましたが、無人でした。自動機械ばかりです』
「ご苦労」
俺はシェイプシフターを労う。ベルさんは首をひねる。
「どうする、ジン。魔力生命体が何だか知らねえが、一応放っておいても無害っていえば無害だが」
「動きがあった時のために、見張りは残しておく」
魔力生命体を手に入れて何をするか知らないが、あまりいい予感はしないんだよな。ただここで、この母船ごと破壊すると何事かとネオ・ナチャーロが確認に来るのではないか。
「今のところ、ネオ・ナチャーロって中立だからな」
怪獣騒動以来、シーパング同盟とは衝突していない。独自に国家建設にかかっている勢力については、情報局が見張りをつけているが、その勢力については同盟国と対立はしていないし、その気配もない。
「ただ、ネオ・ナチャーロも一枚岩ではないからな。過激派が存在するって話ではあるが、そちらについてはよくわからない」
「じゃあ、この円盤もその過激派のものってか?」
「かもな。それを確認する意味でも監視が必要だよ」
ただまあ、現状は無害そうというのはそう。
「魔力生命体というのも興味があるし、しばらくは様子見だな」
と、その時、通信機が鳴った。はいはい――
『あなた、ちょっとよろしくない状況になったわ』
通信機から聞こえてきたのはリムネの声。彼女は、アドヴェンチャーⅡを操って、この廃墟都市から離れたはずだったが――
『所属不明機が船を追尾しているの』
「所属不明機?」
なんだい、それは。
『識別データにない航空機が3機。遺跡から出た私たちの機を追いかけている。心当たりはあるかしら?』
「ない」
あるわけがない。……と思ったんだけど、ここにネオ・ナチャーロの無人船があることを考えれば、それ関係の可能性が高いと頭の中に浮かんだ。
でも突然、どうしてだ? たまたま定期的に確認する日付が重なったアンラッキーパターン。それか、アリーシャが捕まった時、あの六脚機械が自動的に送信されるようになって、その通報を確認して、やっていたという可能性。
「すぐ駆けつける。攻撃を受けた場合に備えて、シールドは最大に上げておけ」
俺は通信機にそう呼びかける。すでに足はこの母船の外へと向いている。シェイプシフター兵に仕掛けをするように告げて外へ。
「さあ、何者だろうな。ここから出てきたところで遭遇とは、タイミングがよすぎるんだよな」
ベルさんが、異空間からドラケン・ベルさんスペシャルを出す。俺もストレージからトロヴァオンE3を出した。
「ネオ・ナチャーロだったとしても穏健派か過激派で対応が変わる」
「攻撃してもいいのか?」
「向こうが攻撃してきたらな」
機体に乗り込む。エンジン始動。ナビに命じれば自動でシステムが立ち上がる。ついでに索敵範囲にあった六脚機械が動き出した。
「さすがにこの音に気づかないほどボンクラではないか」
次の瞬間、ベルさんスペシャルの背部旋回レーザー砲が動き、向かってきた六脚機械を蜂の巣にした。ヒュー、さすが。
『ジン、行けるか?』
「問題なし」
行こう――浮遊機能で機体は浮かび上がり、十メートルほど上昇したところでスロットルを開く。加速した二機の戦闘機は、巨大な地下廃墟都市を飛び抜け、外への大穴へと飛ぶ。
垂直上昇からのあっという間に地上に出る。澄み渡る青空。太陽光がキラリと光る。索敵装置が、アドヴェンチャーⅡの位置情報を表示する。さらに衛星軌道上の監視ポッド――大陸戦争の時にばらまいたものより高性能。実際のところ監視衛星――から、未確認機の情報がもたらされた。
「ベルさん、データは見たかい?」
『見た。これ合っているのか? 何とも珍妙な形をしているぜ?』
戦術モニターには、真下と真後ろにトゲが生えた球体が映し出されている。これ、航空機……?
「このトゲは、スラスターの一種なんだろうけど……、変な形だな」
大きさは球体が5.5メートル。下へ伸びるスパイク状はおよそ10メートル。推進器と思われる後ろのスパイクは7メートル。
全長12.5メートルとなると、小型戦闘機並の大きさというところだ。あの球体が胴体なのだろうが、有人機であるならコクピットなどはそこなんだろうけど。
アドヴェンチャーⅡが速いのだが、それでも距離を縮めているあたり、まさに快速の戦闘機みたいだ。
さあて、こいつは敵か味方か……?
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