第2024話、母船の中には……
六脚機械は、通過する俺たちに反応を示さなかった。
正直、相手が機械だから、透明なくらいで誤魔化せるか不安ではあった。赤外線とか、見え方、捉え方は複数あって、人間が見ているそれが『見る』ことのすべてではない。
ついでに言えば、見るだけでなく聞く方もまた、広い範囲の音を精巧に拾える可能性も高く、近づくのは簡単ではないと思うわけだ。
俺は警戒した。いくら光学迷彩で隠れているとはいえ、不用意に敵に近づき過ぎないように距離を置いて、さらに忍び足。
何ならこちらを探っていると感じた時は、動かずじっとしてやり過ごした。
こうした慎重に慎重を重ねた結果、俺たちは敵の拠点と思われる円盤に取りついた。近い位置に、敵の姿はない。
「ここまではこれたな」
姿を消したまま、ベルさんが小さな声を発した。
「中に入れそうか?」
「あそこに、見張りがいるところ。あの後ろから入れそうだ」
俺は出入口らしきものを見つける。あの六脚機械が邪魔だが。ベルさんが言う。
「あれは潰すか」
「よし」
シェイプシフター兵たちには外側で、他に侵入できそうなところがないか散開して探してもらう。……彼らは人間にはできない動きで張り付いたり、侵入したりできるからね。
魔力を圧縮――!
グシャリと六脚機械が頭から潰れてスクラップに変わる。
「おーおー、エグっ」
「そうかい?」
壊したら、どうやろうが一緒だろう?
俺たちは、邪魔なマシンを排除し先へと進む。物資の搬入口か、横に広い。ゲート式で、中の倉庫のようなエリアは開け放たれていた。中はほぼ空で何もないようだが。
「何が入るんだろうな?」
ベルさんが言った。俺は壁際の機械を見やる。
「六脚機械の格納庫なのかもな」
壁のそれはエネルギー供給用のバッテリーとかさ。
「おい、ジン」
ベルさんが呼び止める。何についてかは、俺も見当がついた。壁にある大きなオレンジ色のエンブレム。
「ネオ・ナチャーロのに似ているな……」
「じゃあ、この円盤だか、六脚は、ネオ・ナチャーロの?」
「かもしれないな」
鉄星人でもアンバンサーでもなく、ネメジスでもないかもしれない。第三勢力の登場ってか。
まいったね。
これはさっさと調べて白黒つけないとな。
「ここから先は、あの六脚マシンは入らないな」
通路の大きさは、人間サイズ。こういうのを見ると、この円盤だか拠点の内部は、人間かそれに類する大きさの生き物が使うようにできているのがわかる。
「完全機械ってわけではなさそうだ」
「そうだなぁ。そうでなきゃ、こんな通路はいらねえもんな」
ベルさんも同意する。
「だが、人がいる気配はねえんだよな」
「人が作ったものに違いないが、無人って可能性もあるわけだ」
通路の先の部屋を探索する。やはり、人はいない。明かりはついているけど、無人なら電気の無駄だ。
「どういうことなんだろうな? 隠れているのか?」
ベルさんは、じれったい顔をする。
「魔力スキャンを使ったら駄目なのか?」
「あの六脚機械が魔力に反応している可能性を考えると、使ったらここの警報が鳴るかもしれないぞ」
「それはマズいのか?」
「よくないだろう」
いいかい、ベルさん。
「侵入者を感知したら、非常時コマンドが発動して、迎撃システムが発動するかもしれない。ここから離脱を図るならともかく、自爆装置とか働いたらどうする?」
俺たちも巻き添えだぜ?
「考えすぎじゃねえの?」
「否定できる材料をくれ。俺の取り越し苦労だってさ」
迂闊な行動は身を滅ぼす。敵地にいるならいくら慎重であっても足りない。
「……ここは、資料室か?」
「まずは指令室とか、あるいは艦橋とかを探るべきじゃねえかな?」
「同感」
ということで、中枢と思われる場所を探して行ったり来たり。内部の地図はないのかまったく。
ようやく探し出したのは指揮官らしき人間用の部屋。軍艦の艦長室に雰囲気が似ているからたぶんそう。
「データパッドがある」
俺は席に座ると、デスクの上の端末を操作する。起動は機械文明のそれと同じ。キーの配置もほぼ同じだが。
「見ろよ、ベルさん。キーの字が、ナチャーロ文字だ」
「じゃ、ネオ・ナチャーロの連中ってことで正解か」
キーパッドの字で、どこの人間が使っているのかわかるのってあるよね。
「ナチャーロ文字は?」
「大丈夫、覚えている」
そもそも字の表記が違うだけで、文字の配置は普段使っているのと同じだ。つまり、このデータパッドのオリジナルは、ナチャーロではなく、機械文明やシーパングが使っているものと同種ということだ。それなら、俺でも操作できる。
ざっと記録を参照。ここで何をやっているのかなっと……。
「魔力生命体の捕獲……?」
「何だそりゃ?」
ベルさんもモニターを覗き込む。何だろうね、それ。俺は魔力生命体について資料を呼び出す。
「形態不明。生物らしいということしかわからないな。体内に莫大な魔力を持っている」
「わからねえな。いったいそれが何だってんだ?」
「さあね。ネオ・ナチャーロの連中は、その魔力生命体とやらを捕獲するために、遺跡に無人の部隊を派遣したってことらしい」
あの六脚機械が、その捕獲マシンということだ。うちのアリーシャちゃんは、魔力が高めだから、機械のセンサーに引っかかったのかもしれない。
「じゃあ、オレ様たちに群がってくるんじゃね?」
「魔力を消して正解だったな」
念話とか使ったら、それで察知されていたかもな。
累計45万部突破! 英雄魔術師はのんびり暮らしたい@コミック、1~14巻(12巻以降は電子書籍版のみ)発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも掲載中!
オーディオブック1巻配信中。どうぞよろしくお願いします!




