第2011話、猛攻、ゴーレム艦隊
その通信は、異空間内を航行するネメジス軍第一打撃艦隊にも届いた。
第一打撃艦隊司令長官ホージュは耳を疑った。
「ノースパークが襲撃されただと!?」
恰幅のよい艦隊指揮官の声に、参謀長は答えた。
「はっ、真・大帝国艦艇で構成された艦隊による奇襲とのことです」
「真・大帝国だと……?」
ホージュは眉をひそめた。
存在しないものが突然現れた。しかもこちらの存在が表舞台に立つ前――つまり知る者もほとんどいないにも関わらず攻撃された。これはあり得ないことだ。
「ノースパークからは、ただちに帰投するようにとの命令です」
戻ってこの大帝国の皮を被った何者かわからない敵艦隊を撃滅せよ、ということだ。
「了解しだ。第一打撃艦隊は、ノースパークへ急行する!」
ホージュは命令を出した。
戦艦級円盤50、巡洋艦級円盤50、突撃型砲艦150、五段式円盤空母15は、ただちに演習を切り上げてノースパークへ急いだ。
・ ・ ・
ノースパークでは、クルフ艦隊とネメジス軍守備隊が激しい攻防を繰り広げていた。
ファラガ級空母から飛び立ったDEF-5-t3シュトラムⅢ型艦上戦闘機が、ネメジス軍の円盤戦闘機と空中戦を広げる。
同盟軍の小型軽量戦闘機であるファルケ同様の小型高速機であるシュトラムは、機敏にネメジス軍戦闘機の背後に回り込むと空対空ミサイルを発射する。ゴーレムによる誘導機能のついたミサイルは、円盤戦闘機を追いすがり激突、爆発させた。
敵機を撃ち落としたシュトラムだが、そこに側面から後ろについた円盤戦闘機が緑色の光線を発射した。
シュトラムはリバーススラスターを噴かして、急回避。人間が乗っていれば強烈なGで操縦者を殺している機動だったが、操っているのはゴーレムであり、機体強度以上でなければぶん回しても壊れないようにできていた。
敵機をオーバーシュートさせたシュトラムは、20ミリ機関砲とプラズマ砲を連射し、円盤機を返り討ちにする。
戦闘機隊が奮闘する中、トンボ型のシルエットを持つリヴェルリ攻撃機が魔法爆弾投射機で、ノースパークの地上施設を爆撃する。地上に駐機されている魔人機が爆撃によって吹き飛ばされ、工廠の建物、クレーンなどが倒壊する。
対空銃座が、爆撃を許さないとばかりに曳光弾を吐き出し、それが爆撃コースに入っていたリヴェルリの1機を、クモの巣に絡めとるように引っかけ、撃墜する。翼を失い、ぐるぐると回転しながら落ちた攻撃機は、荷を運び出そうとするネメジス輸送兵らを挽き潰し、そして爆発した。
一方で、クルフ艦隊のゴーレム戦艦群が、プラズマカノンの猛撃を浮遊島に撃ち込んでいた。
地表にある基地施設への艦砲射撃である。しかしネメジス側も基地の重要施設を破壊させまいと防御シールドを展開する。
だが――
「そのシールドはどこまで持つかな?」
クルフ・ラテースは司令官席から、その様子を眺める。基地のエネルギーをシールドに回せば、あるいは攻撃を防ぎきることができるかもしれない。
だが巨大なノースパーク全体を守るきれるほど広範囲かつ、強固なシールドは維持にかなりの負担を強いる。
さらにこちらは、前方投射力で他の戦艦を凌駕するゴルドアⅡ級戦艦がある。一点集中。シールドのエネルギーをゴリゴリ削る激しい猛攻が、雨あられと基地に降り注ぐ。
ノースパークに駐留しているネメジスの艦艇はすでに存在しない。先行したアラガン級クルーザー、ファイリー級駆逐艦が浮遊島の上空にまで踏み込み、警戒艦を蹴散らした。
係留されていた戦艦級やクルーザーも、飛び立つ前に砲撃しスクラップに変えている。
現状は、有利に進んでいる。魔人機を主力にした上陸部隊も用意しているが、そろそろ進ませてもいいか――
『閣下』
ゴーレム兵がコンソールから首を回した。
『左舷方向ヨリ、艦隊ガ出現。索敵範囲内、ナオ増大中』
「来たか」
ネメジスなる連中が、どの程度の軍備を持っているのかまったくわからない状況で仕掛けたわけだが、艦隊を編成できる規模の戦力を持っていることがこれで明らかになったわけだ。
戦術モニターを注視する。たちまち敵の艦艇がスキャンされ、その外観が表示される。そして同型の船が何隻なのかカウントが増えていく。
「これは聞いている以上に大兵力だな」
クルフは感嘆する。戦艦級50にクルーザー級50。この規模は、そこらの国家の保有する艦艇よりも遥かに多い。
「ネメジスというのは、もはや武装勢力のレベルを超えている。これは軍だ」
その力は、国家級の国力がなければ賄えない。
――いや、そうでもないか。
クルフは思い直す。自分のゴーレム艦隊は、別に国家規模の資材や資金を必要としなかった。兵器の大量生産についても、一種の魔法装置系統でどうとでもなる。
それをやったのがシーパングであり、ジン・アミウールの軍隊だ。そしてそのレベルではないにしろ、クルフもまた同様に一人で艦隊と戦力を作り上げた。
「あれが無人兵器と決まったわけではないが」
人間が操っているのであれば、人件費がかかる。これらは訓練し使えるようにしなければならない上に、衣食住も提供しなければならない。毎日食べ、装備も支給し、寝床も用意してやらなければならない。
膨大な兵器に、それ以上に膨大な人間。軍隊における予算でもっとも多く占めているのは兵器ではない。その軍にいる人間なのである。
どこかの国の軍隊か、それとも何かしら魔法の裏技で作り上げた軍隊か。
「まあ、戦っていればそのうちわかるだろうさ」
クルフは艦隊に、敵艦隊への突撃を命じた。
累計45万部突破! 英雄魔術師はのんびり暮らしたい@コミック、1~14巻(12巻以降は電子書籍版のみ)発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも連載中!
オーディオブック1巻配信中。どうぞよろしくお願いします!




