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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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2022/2022

第2012話、クルフ艦隊、好き勝手やって離脱す


 クルフ艦隊とネメジス軍第一打撃艦隊は交戦状態に入った。

 ゴルドアⅡ級戦艦、サヴァルⅡ級戦艦の40センチプラズマカノンが砲撃を行う中、快速の巡洋艦、駆逐艦が敵艦隊へ突撃する。


 ネメジス軍の主力、戦艦級円盤が緑色の光線を放つ。その一撃は、アラガン級クルーザーの防御シールドに一発は弾かれた。

 だが次の二発目は全長190メートルのクルーザーの装甲を貫通し、爆発、四散させた。

 それより小型のファイリー級駆逐艦は、シールドを貫通し、その艦体を吹き飛ばした。


「火力は高め。吸血鬼帝国並みはあるか」


 旗艦『インペラートルⅢ』から、クルフ・ラートルは戦況を見やる。

 ゴルドアⅡ級戦艦の砲撃を浴びて、戦艦級円盤が火を噴いたが、相当数を撃ち込んだ後であった。

 滅多打ちにすればシールドを破れるし、撃沈も可能のようだ。だが、ゴルドアⅡ級より火力の落ちるサヴァル級では難儀していた。


 そうこうしているうちに、敵戦艦級の光線の集中で、クルフ艦隊の戦艦が1隻、また1隻と破壊されていく。


「純粋に数で負けているな」


 こちらの戦艦が12隻に対して、敵は50隻だ。一対一であれば対抗はできるが、そうでなければ、この有様である。多少の性能差は関係ない。


「では、奴らが同盟軍に対する対策をどこまでやっているか見てやろう」


 クルフは、ゴーレム・リーダーを見た。


「魔導放射砲、用意次第、発射。目標、正面の敵艦隊」

『リョウカイ』


 ゴーレム・リーダーはただちに命令を実行した。

 全長400メートルの『インペラートルⅢ』は艦首の十門の船体内蔵型魔導放射砲をスライドさせて展開する。

 ゴーレム艦隊を半壊させたネメジス軍第一打撃艦隊の砲撃が後方の『インペラートルⅢ』と空母群に伸びつつあった。


 だがそれに構わず、『インペラートルⅢ』は白い光の傍流を放った。五門一斉に放たれた光は、ネメジス艦隊の過半数を抜けた。

 十数隻が光に飲み込まれたが、半数以上が無事な姿を見せた。防御シールドが、魔導放射砲の直撃に耐えたのだ。

 戦術モニターにて、その様子を見やり、クルフはニヤリと口元を笑みの形に変えた。


「発射」


 十門中、残る五門が光を押し出した。その光の流れは、再び第一打撃艦隊を襲う。



  ・  ・  ・



「シールドが、敵攻撃を防ぎました! ですが、シールド消失!」


 ネメジス軍第一打撃艦隊旗艦の艦橋。シールド・オペレーターの報告に、第一打撃艦隊司令長官、ホージュ大将は表情を歪めた。

 参謀長が告げた。


「魔導放射砲、同盟軍の艦隊決戦兵器ですね」

「あの奥の未識別の戦艦は、同盟軍のものか」


 ホージュが唇を歪めた時、艦橋の窓が真っ白に染まった。


「敵、第二射――」

「なに――!?」


 そこまでだった。再び艦隊を駆け抜けた魔導放射砲により、円盤型艦艇を次々に吹き飛ばされた。

 それは旗艦もまた同様だった。すでにシールドのエネルギーを根こそぎ奪われていた戦艦級円盤は、連続して襲ってきた光に抗えず、その光に溶けたのだった。



  ・  ・  ・



 敵艦隊の六割が消滅。そのレポートに、クルフは頷いた。


「記録はとったな?」

『ハイ』


 ゴーレム兵は即答した。これで、ネメジス軍の主力艦艇の防御性能について、ある程度の資料になるだろう。


『閣下、新タナ敵艦隊ガ出現』


 戦術モニターに、新手の艦隊反応が現れる。識別の結果は、ネメジスの艦隊だった。どうやら、敵は使える艦隊を総動員してノースパークに急行したようだった。


「さすがに多勢に無勢か。よろしい、では、撤収しよう」


 クルフは残存艦隊に集結を命じると、転移による艦隊離脱を実行。包囲しつつあったネメジス軍を振り切り、脱出した。



  ・  ・  ・



 ノースパーク司令部。総帥グーウェンは、モニターを注視していた。襲撃艦隊が姿を消しても、しばしそこを睨みつけていたが、被害報告に注意を向けた。


「――第一打撃艦隊は半減しました。ホージュ大将も戦死です」

「何とも嫌な滑り出しだな」


 シーパング同盟軍と戦う時は先制攻撃を――そう考えていたグーウェンだったが、状況はまったく逆となった。

 仕掛ける前にこちらが奇襲されてしまった。何とも笑えない話であった。


「いったい何者だったのでしょうか?」


 幕僚団から、襲撃者の正体について疑問の声が上がる。無理からぬことだ。同盟軍の使用する艦艇とは異なる真・大帝国系列の敵。シーパング同盟軍が報復に動いたとしても、通常の艦隊を送り込んでくるはずで、あんな正体のわからない艦艇派遣してくることは考えられない。


 そもそも同盟軍が、このノースパークを見つけられるわけがない。もし知っていたら、軍備増強に励んでいる間に、仕掛けてきたに違いない。ここまで何もなかったのは、同盟軍がここの所在を掴めていなかったからだ。

 第一、ネメジス軍の存在すらつい最近知ったばかりの同盟軍である。


「気に入らんな」


 だが同盟軍であれば、今度はさらに数を集めて押し寄せてくるだろう。始まる前から本拠地を放棄しなくてはならないかもしれないというのは、グーウェンにとって甚だ不愉快であった。

次話は明日、水曜日更新予定。

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