表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2018/2022

第2008話、野望者の集い


 ノースパーク。そこは漆黒の空間に浮かぶ島のようであった。

 複数の皿が半分ずつ重なるように配置されたその岩の大地。その皿状の一枚、その地面に戦艦級円盤『トゥーアン』が着陸した。


 トゥーアン号もまた大型なのだが、それが小さく見えるほど、皿状の足場は巨大であり、ノースパーク全体の大きさを物語る。


「バローグ、貯蔵庫を見張れ。回収の者たちが来るまでな」


 グーワィが部下に告げると、隊の幹部であるバローグは頷いた。


「承知しました」


 後を任せて、到着した『トゥーアン』から降りるグーワィ。すでに彼を迎えにきた魔力自動車が待っていた。


「お待ちしてしておりました、グーワィ様」

「総帥がお待ちです」


 うむ、と頷き、グーワィは後ろに乗り込む。ノースパーク内の道を進むことしばし、中央司令塔に到着し、そこで降車。案内役の兵と共に司令塔内へ。


 緑の内装。無機的な黒と緑のコントラスト。行き交うネメジス構成員らを尻目にさらに奥、上の階を目指す。

 やがて総帥専用の展望台兼指令室に辿り着いた。


「入るがよい」


 鷹揚に言ったのはネメジス総帥、グーウェンだった。長身の男である。銀色の髪をオールバックにしたその男は、冷めた顔立ちで、黙っていれば自然と相手を緊張させる雰囲気の持ち主である。


「戻ったか、グーワィ」

「閣下」


 グーワィは一度頭を下げた。グーウェンは席についたまま、じっとグーワィを見据えた。


「報告を」


 すでにあらましを知っているが、それでもグーワィの口から直接の説明を求めた。


「貯蔵庫の解錠を試みた作戦は失敗致しました」

「……」

「シーパング軍の反撃を受け、部隊は壊滅。拠点マーリンは放棄、撤収。貯蔵庫は何とか持ち帰りましたが、成果は何一つありません」


 総帥も速報は受けている――グーワィはそれを察しているので、嘘、偽りもなく、事実を説明した。

 グーウェンは表情一つ変えずに言った。


「何の成果もなく、か。ブァイナ金属に手間取るものだな」

「はい」


 何せ扱える者がほとんどいない代物だ。アポリト魔法文明時代のものを再現したのはジン・アミウールだが、それ以外にあの金属の扱い方について世に出ていない。


「まあいい」


 グーウェンは席を回した。


「地底人の遺産は、こちらにある。それだけで、よしとしよう」


 使えずとも、確保し続けている限り、敵――シーパング同盟もこの地底シェイプシフター装置は使えない。彼らがそれを兵器として活用し、ネメジスに対抗できないというだけで、一つの攻撃手段を潰したことになる。


「シーパング同盟も、我々の存在に気づいたな」

「はい。マーリンが落とされた時点で、遅かれ早かれ、我々の元に手が伸びるでしょう」


 グーワィは首肯した。グーウェンは立ち上がる。


「では……。いよいよ世界を動かす時がきたのだな。――ゲストが集まっている。貴様も来るといい」

「はっ、お供します」


 父上――その言葉を呑み込むグーワィであった。



  ・  ・  ・



 会議室のテーブルにはゲストたちがついていた。


「よう、総帥。先にやらせてもらっている」


 そう言ったのは灰色髪の若者――ヴァラン国の第三王子リェート・ヴァイナーは、杯を掲げてみせた。

 その反対側では、赤毛で巨漢の人物が、同じく杯で酒を呷っていた。ネオ・ナチャーロ、真・武闘派ルカー・ストラーフという。


「お待たせした」


 グーウェンは自身の席に着席した。その後ろには配下としてグーワィが控える。


「今宵は、よくぞ参られた」

「なに、オレ様の軍隊を受け取りにきただけだよ、総帥」


 ニヤリとするリェート。ルカーもまた杯を置くと頷いた。


「そういうことだ。我々がそれぞれ好き勝手をやるための、な」


 それぞれの野心のために。見るからに暴力的なルカー。そしてふてぶてしい態度のリェート。

 それを冷ややかに見やるグーウェン。


「心配は無用。必ずや満足してもらえると自負している」

「頼むよ、総帥。でないと、シーパングと戦争できないんだからな」


 リェートはくっくっと笑う。何とも品のない男だ、と控えていたグーワィは思う。これで一国の王子というのだから呆れる。


「確認だが――」


 ルカーは、杯に注ぐのが面倒になったか瓶の口から直接飲んだ。


「軍隊をもらった後のことだが、いつ始める? それぞれ勝手に動いて、各個に叩かれても面白くない」

「そうそう、貧乏くじを引くのは、誰だって嫌だもんな」


 ヴァラン国の第三王子は、視線をルカーに向け、そしてグーウェンで止まった。


「おれとしては、そちらと違ってちょっとタイミングを図らないといけないから、即行動できるそちらさん方のようにはいかん。みんな揃ってヨーイ、ドンなら、悪いがこっちに合わせてくれると助かる」

「それはどれくらい先の話になる?」


 ルカーは尋ねた。そうだな、とリェートは少し考える。


「うちの爺様が間もなく天寿を全うする。それから数日で、オレ様がヴァランを掌握するから、まあ、最短一カ月以内ってとこか」

「充分だ。戦争には準備がいる。こちらも支度を進める。……で、総帥さんよ。おたくらもシーパングと戦うのだろう」

「左様。こちらも、そのように準備を進めよう」


 グーウェンは頷いた。切り札になり得た地底シェイプシフター制御装置は手中にできなかったが仕方がないと諦めもついた。


「では、我らの世のために」

「我らの世のために」


 三人はそれぞれの野望のため、共通の敵であるシーパング同盟との戦いを決意した。ここまでは引き返すことができた。

 だが今、この時、矢が放たれることが確定したのであった。

累計45万部突破! 英雄魔術師はのんびり暮らしたい@コミック、1~14巻(12巻以降は電子書籍版のみ)発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも連載中!

オーディオブック1巻配信中です。どうぞよろしくです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ