第2005話、円盤と異星人技術
『各種、索敵システムに反応なし』
シェイプシフター・オペレーターが報告し、俺もまた戦術モニターを眺める。ベルさんは首をかしげた。
「見えないな。完全に見失ったか?」
「中に追跡装置と潜入員を潜り込ませていなかったら、完全にロストしていたところだったね」
俺も苦笑する。まだ探れなくなったわけではないので、セーフだよ。
「ただまあ、あの円盤は完全に予想外だったな」
「まったくだぜ。で、結局アレは未知の円盤ってことでいいのか?」
ベルさんは片方の眉を吊り上げた。初めて見る型ではあるんだけどね……。
「まったく知らないかというと、そうでもないんだよな」
「というと?」
「鉄星人の宇宙船だよ」
俺が言うと、ベルさんはさらに首をひねった。
「ニーゴの宇宙船ってか? あれは四角っつーか角張っていて、円盤じゃなかったぜ?」
「パネルライン、まあ、線の引き方というのかな。それが似ている。それに索敵装置に引っかからない遮蔽技術とかな」
そう指摘すると、あー、とベルさんが相槌を打つ。
「なるほど。確かに似ているな」
そこでラスィアが自身のシートのコンソールを叩きながら言った。
「ディアマンテ・コピーのデータと照らし合わせましたが、閣下の言うとおり、鉄星人の宇宙船と共通点が見受けられます」
「つーとあれか? あれは鉄星人の乗り物ってことでいいのか?」
「おそらくね」
まだ確証はないが、機械の分析でも確率は高そうではある。
「この惑星テラにも、あの円盤が落ちていたか……あるいは――」
鉄星人が動かしているか。ネメジスって突然わいたこの謎組織に、異星人が絡んでいるのか。
「これまでの捕虜や死体の中に、鉄星人は混じっていなかったと思うんだが……」
「ということは、拾いものか?」
「さあね。今のところは何とも言えないな」
うちにいるニーゴなんて、黙っていたらテラの人間と見分けつかないからな。ネメジスの末端は人間だが、もしかしたら裏で手を引いているのは人間になりすましている鉄星人という可能性もあるわけだ。……推測だけどね。
「ネメジスってのは地底シェイプシフターの制御装置を手に入れて、世界をどうこうしようって連中だろう?」
ベルさんは鼻をならした。
「もし鉄星人の隠れ蓑だとしたら、もしかして、この世界の人類を滅ぼしてこの星を征服しようってのかね」
「現在の時点では、その可能性もあるな」
わかっていることから推測すると、それもあるよねって話で、例によって例のごとく確証はない。
「単に、どこぞの成り上がりが、世界を滅ぼそうって宇宙人の円盤を拾って利用しているだけかもしれないけど」
これまでシーパング情報局が回収した敵の死体は、この星の人間ばかりだが、民族やその所属組織はバラバラ。例の魔法至上主義者の組織とか、どこぞのテロリストとかもいたはずだ。
「推測はいくらでもできるけど、真相を知るにはもう少し詳しい情報が得ないとわからない」
ただ、敵の死体を喰らったシェイプシフターらが、鉄星人のワードを記憶に取り込んでいない点を見ると、拾いものの再利用説が最有力。そしてネメジスの支配者が鉄星人だが、他はこの世界の人間説が次点じゃないのかな。
『閣下。敵をロストしていますが、このまま進みますか?』
シェイプシフター航法士が確認してきた。いま『バルムンク』は、消えた円盤の進行方向から推測される予想針路を辿ろうとしていた。
「停止だ。消えた直後に針路変更をしている可能性もある」
コンピューターの予想針路もあてにならない。追跡されるのを避けるために消えたのなら、消える直前までダミー針路をとって偽装したかもしれない。
「追跡装置が機能するまでは待機だ」
潜入員が位置を発信すれば、どこにいるかはわかる。まだ追跡は可能だ。
「しかし、遮蔽技術とはな」
ベルさんが言った。
「まさかここで鉄星人技術が出てくるとは思わなかったが……姿を隠せるということは、敵の本拠地とか、この手の遮蔽で隠れやがるかもしれねえな」
「十中八九、そうだろうな」
これまで同盟軍や情報局の目を躱してきた連中だ。
「ここで円盤を使ってきたのは、それだけブァイナ金属の玩具箱を連中が重要視しているということなのだろう」
俺たちが見ていないと思って使った――とは思えないな。状況によっては同盟軍と接触するかもしれないんだから。やはり、あの貯蔵庫が大事だから、隠していた円盤を投入したのだろうな。
「ラスィア、情報局に円盤の件は――」
「すでに報告済です」
ラスィアは頷いた。さすが、仕事が早いね。情報の共有は大事大事。
「マギ研究所宇宙支部にも連絡を。ニーゴの宇宙船と鉄星人の遺跡について最新の報告をもらえ。ついでに、こっちで観測した円盤のデータも送って、専門家の意見も伺おう」
発信機が働くまで多少時間はあるだろう。その間に関係しそうな知識を入れて、分析する。
いま位置情報が発信されていないのは、敵側がスキャンしているか目を見張らせているからだろう。
だがそれもずっとということもあるまい。必ず隙ができる。それが早いか遅いかの違いしかない。
異空間にでも転移しない限り、惑星テラのどこでも探知できる。深海については若干の不安もあるが、たとえば宇宙であっても衛星軌道を含めて、テラ・フィデリティア宇宙軍が発信を辿ることができるのだ。
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