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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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2013/2022

第2003話、ネメジスのフネ


 都市遺跡マーリンの戦いは急速に終息しつつあった。


 ブァイナ金属製貯蔵庫が転移し、ネメジスの連中が最低限守らなければならないものがなくなったことも大きいのだろうな。

 敵構成員は、順次撤退しつつあり、それを追いかけるシェイプシフター兵やシーパング情報局コマンドーと最後のドンパチをやっている。

 ここの制圧が時間の問題である以上、逃げた敵さんを追跡するとしますかね。


「ベルさん、ここは情報局に任せるつもりだけど、追いかけるか?」


 暗黒騎士姿のベルさんに確認すれば。


「あぁ、そうだな」


 後始末や、組織の情報収集はシーパング情報局にやらせればいい。そもそもそういうことは、ベルさんの得意とするところではない。

 ……できなくはないが、それより体を動かしているほうが好みなのだ。

 俺はシーパング・コマンドーを見る。


「ここは任せるぞ」

「承知いたしました」


 ちら、と俺は、倒れているネメジスの女性――士官とも秘書にも見える彼女を一瞥する。リーダーとおぼしき男の部下だったようだが。幹部級の秘書なら、色々情報を持っているだろう。


 跳ね返った魔弾で意識を失っているが、死んではいない。治癒魔法をかけたからね。即死していなくてよかった。

 まあ、情報局の捕虜となったら、どうなるかあまり考えたくはないが。彼女からすれば果たして、跳弾で死ぬのとどっちがよかったのだろうな。


 搬送される彼女をよそに、俺とベルさんはマーリンを後にした。転移で移動した先は、我らが超戦艦『バルムンク』。


 すでに艦は空中にあって、航行中である。


「ご苦労様です」


 艦橋にいたラスィアが声をかけてきた。うんと俺は頷きつつ、艦長隻へ。ベルさんが、手近なシートに座った。


「ひどく用意がいいな」

「何かあった時のためにね」


 ネメジスの誘拐犯たちが国外逃亡の気配を見せた時には、『バルムンク』の出撃準備はさせていた。

 ただの学校襲撃だけだったなら、まだドックにあっただろうけど。サウス・カラビナス基地を襲うような敵なら、戦艦のみならず戦闘機や魔人機だって用意するさ。


「ラスィア、情報局からフネは出ているか?」

「高速艇と揚陸母艦くらいでしょうか」


 褐色肌のエルフさんは事務的に答えた。


「そもそも情報局は、戦闘部隊とは運用するものが違いますから」


 工作員移動用の小型の偵察高速艇と、輸送やコマンドー部隊用の中型揚陸母艦があるくらいだ。専属の偵察ポッドは、さすがに艦艇には入らないが。

 しかし隠密の偵察観測機などは保有していて、日夜情報収集を行っている。

 ベルさんが口を開いた。


「まあ、あちらさんは偵察専門。大砲をドカンとやるのは正規軍の仕事ってわけだ」

「その視点で言えば、ネメジスの戦闘艦艇と戦う時は『バルムンク』が引き受けることになるな」


 俺が言えば、ベルさんはニヤニヤする。


「果たしてネメジスの野郎どもに、この『バルムンク』に対抗できるフネなんてあるのかな?」

「普通に考えれば……ない」


 このバルムンクは、就役から18、19年ってところだが、未だにシーパング同盟系列の戦艦の中でもトップクラスの能力を持っている。

 ぼくのかんがえた超戦艦がコンセプトで採算度外視で作ったロマン艦だからね。その影響もあって、大抵の戦艦が相手であっても余裕だ。


「ネメジスが保有する空中艦艇がどれほどのものか、興味はあるな」


 戦後、放置された兵器の残骸を回収、修理して色々なところでそれらが使われた。盗賊や山賊が魔人機を動かして云々というのはあったが、艦艇となると……せいぜい、空中輸送船や貨物船を改造した武装船くらいか。


「ネメジスの奴らがまともな軍艦を持っているとも限らないぜ」


 ベルさんは鼻をならす。


「貯蔵庫を回収にくるっていうなら、民間の輸送船を改造して使っているだけかももしれない」

「全容は不明だからな」


 思ったより巨大組織って可能性が、ここにきて出てきた。

 果たしてどの程度の軍備を持っているのか。サウス・カラビナス基地の戦いや、マーリンでの敵の武装を見れば、そこらの武装組織というより軍隊に近いレベルにある。


 しかし、どこぞの国の軍隊というわけではないなら、ベルさんの言うとおり、民間船の改造型というのが、一番可能性が高い話だ。

 戦場で放棄され、それを修理となるとまずそこの国が手を出すだろうし、人の手の届きにくい場所に墜落していた艦艇があっても、それを修理できる技術も設備もそうそうあるものではない。


 大陸の国々が大戦からの復興を行う一方、同盟情報局は同盟内外の情報を収集していた。

 だが、ネメジスという組織は昨日までまったく不明で、その勢力の大きさ、兵器、そして支援する背景などもわからない。


 これまでよく隠し通せたものだが、それはある意味、空中艦艇など目立つものを保有していなかったからではないのか。……とも思えたのだが、ここにきて実は軍艦持ってました説が出てきて。


「さあて、何でくるか」


 民間船の改造船か、軍艦の再利用か、まったく新規のものか。ブァイナ金属貯蔵庫を回収するとなると、やっぱ、それなりに大きい船なんだろうか。

 興味あるね。


『閣下』


 シェイプシフター兵がコンソールより振り返った。


『監視ポッドが、目標に接近しつつある飛行物体を確認しました』

「来たか。映像を回せ」

『了解』


 戦術モニターに表示される。


「ほほぅ」


 これはちょっと意外。同時に悪い意味でドキリとした。ベルさんが露骨に顔をしかめた。


「なあ、ジン――」

「まさか円盤とはね」


 アンバンサーの円盤兵器に似ている……似てはいないか。円盤と見るとどれも似ているように見えていけない。ヒヤヒヤさせてくれる。

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