第1998話、中枢へ突撃!
シェイプシフター特殊部隊兵やシーパング情報局コマンドは、消音器付き突撃銃を手に、ネメジスの構成員を打ち倒していった。
敵も本格反撃に出てきていて、銃声がそこら中から響いている。
普通に銃が活躍する戦場。今時、剣といった近接武器は――なんて思っていたら、敵兵が隠れている障害物の側面に回り込んだセイバーズ隊員が、超鋼ブレードで切り込んだ。
遮蔽の多い都市遺跡は、遭遇近接戦の場面も少なくない。
それはネメジスの構成員も同様だ。彼らもまた正面からの撃ち合いが膠着状態になりやすいのを理解している。
側面に回り込もうとするのは彼らもまた同じであり、拳銃とショートソードを手に迂回しようとして、側面援護の兵に待ち伏せされた。
マシンガンの雨あられを浴びて、全滅するネメジスの迂回チーム。一進一退の攻防が繰り広げられる。
……が、俺たちは、まあそうね。
「転移」
ネメジスの構成員らの後ろに瞬間移動。雷鳴!
電撃と轟音に、複数いた構成員が吹っ飛んだ。うわぁっ、とかそういう声がした。
さて、次だ次。
立てこもる敵陣地で爆発する手榴弾よろしく、俺はシーパング部隊と交戦する敵兵の守りを崩す。俺が隠れていた敵を遮蔽から弾くと、交戦していた味方兵が一気に前進してくる。
そしてさらに前へと出ていく。すると次の敵兵か、即席の防御陣地が撃ってくる。市街戦というのは、通りの一つ一つが戦場にある。ついでに言うと建物も。
「おっと」
俺めがけて狙撃。銃弾は防御魔法具によって弾かれた。いわんことでではない。
聞こえてきた狙撃銃の銃声。音速を超えたそれは音が後からやってくるが、防御膜の当たった場所、角度から大体の場所は把握。
「お返しだ」
グレネードランチャーよろしく爆裂魔法を仕込んだ火の玉を放つ。それは狙撃兵が隠れている建物の三階の窓際にぶつかると、爆発した。壁ごと中にいた敵を炎に飲み込み、排除。
おや、正面の敵と撃ち合っていたシェイプシフター兵たちが、俺を待たず前進を始めた。……ベルさんが、敵陣地内に踏み込んで一掃したようだ。
今どき珍しいかもしれない暗黒騎士が遮蔽に隠れた敵の横合いから襲いかかり、大剣でバッサリ。銃を使わない辺り、ベルさんのこだわりを感じるね。
それはさておき、こちらは、都市遺跡の中にある屋敷――ディーシーのスキャンでも敵の中枢と思われるそこへ向かっている。
抵抗する雑兵は始末。投降してきたら捕縛。要人らしき人物も捕まえる。特殊部隊員やコマンドーにはそう徹底させている。
本部らしき屋敷には、それなりの兵がいて、こちらの攻撃に備えている。都市へ進出したソニックセイバーズが道を切り開いたこともあって、こちらは屋敷に対して三方から包囲、前進しつつあった。
なお、その屋敷の裏手に、例のブァイナ金属製貯金箱、もとい貯蔵庫がある。こちらの側面迂回部隊が屋敷を避けて回り込んでいるが……はてさて、敵さんはどうでるやら。
せっかく奪った貯蔵庫。開けるまでは死守するか、それとも放置して逃げ出すか。はたまた貯蔵庫をどこぞへ転移させるか。
連中のとれる策はそれくらいだろうが、どう出るかね。
俺は前線へと徒歩で移動する。銃の飛び交う戦場というのは、姿勢を低く、遮蔽から遮蔽へ素早く移動するのが鉄則だ。
その観点から言えば、一応気をつけているとはいえ、堂々と歩き過ぎではある。すっかり王族や上級貴族が染みついてしまったな。こういう身分の人間というのは、戦場でも見栄を張らなくてはいけない。
もちろん銃撃されれば伏せるが、そうでない場では、たとえ銃声が聞こえても安易に伏せたり、あからさまに隠れたりは避けたい。周りの兵たちの目があるのだ。主君たる者、臆病な振る舞いはできない、というやつだ。
……あからさまに遮蔽に飛び込むのは格好がつかないが、さりげなく遮蔽に身を寄せるくらいはセーフ。要するに立ち振る舞いだ。
とはいえ、安易に撃たれるようなところを歩かないようにはしている。偉い人が態度や表情で見栄を張る一方、周りの兵たちをヒヤヒヤさせてもよろしくないのだ。
「うん……?」
魔力スキャンが今、通過していった。おそらく、ネメジスの構成員の中の魔術師だろう。こちらの人数を把握しようとしているのだろう。方向からすると、本部屋敷からの発信だろな。
「ディーシー。今の魔力サーチの場所は掴めたか?」
『肯定だ。カウンターか?』
ディーシーの念話に、俺は返す。
「雷を落としてやれ」
直後の突然の落雷が、屋敷に落ちた。自分で言っておいてなんだが、やっぱり雷が落ちた時の轟音は凄まじい。心臓が掴まれたんじゃないかってくらいビビるね。大気が震動しているな。
敵に位置情報が読み取られると、こちらの裏をかいた配置や適切な迎撃をとられるかもしれないからね。味方は情報活用、敵には利用させない。
これが戦いの鉄則だ。肉弾戦や銃撃戦の場でもフレッシュな情報は味方を生かし、敵を殺すのである。
散歩するように先頭に追いつく。走らなくても先頭に来れてしまうのは、いかに市街戦の前進が距離を稼ぐことが難しいことの現れでもある。
わずか数メートル、十数メートル進むために、消費される人命と時間。……味方がシェイプシフター兵だからよかったものの、人間だったらと思うと気が遠くなる。
「閣下」
「どんな様子だ?」
俺がシーパングコマンド隊員の伏せている障害物の裏に移動すると、そのコマンドーは答えた。
「屋敷の窓から銃撃です。正面は即席の防御陣地が築かれていますが――」
轟音と共に、積み上げられていた土嚢が吹き飛んだ。暗黒騎士が暴れているのが見えた。
「ベルさんがやったな」
気が早いなぁ。屋敷の入り口周りにいた敵をバッタバッタと薙ぎ倒していくベルさんだけど、建物の二階や三階から敵が銃撃してくるので、すでに踏み込んだ暗黒騎士以外は、すぐに動け――
煙幕が焚かれた。さらに援護射撃がそれぞれの窓に撃ち込まれている間、煙に紛れて、特殊部隊員が屋敷正面へと飛び込んでいった。
特殊部隊は伊達ではないな。
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