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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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2001/2024

第1991話、家庭にも共有


 何だかんだ、家に帰ることができた。

 ネメジスの手先に捕まっているのが、シェイプシフターじゃなくて、俺の実の子たちであったならこんなのんびり帰宅なんてできなかっただろうな。


 仕事場というか、犯人を追うための司令部とかに詰めてさ、娘たちのことが心配で夜も眠れず疲弊する……。

 娘は大丈夫だろうか、酷い目に遭わされていないか。不安でいてもたってもいられなくて、苛々したり心配したりで感情が追い詰められていく。


 あまり考えたくないな……。

 その点、学校が危ないかも、と即対応したことが結果的に、この余裕を生んだわけだ。戦争でも、末端の戦闘でもさ、危ないなと思った時に即動くことが、大きな失敗を未然に防ぐことに繋がることが多々あった。


 勘のようなもので、その時ははっきり説明できないんだけど、後でいいやとか、大丈夫だろうって思うことがそうであった試しがない。

 おかげで、今回の騒動は、ブァイナ金属製貯蔵庫強奪犯だったネメジスという組織を追う、軍の特殊作戦という形に収まっている。


 俺も作戦指揮官の一人として、より客観的な精神状態で挑める。子供を誘拐されている状態なら、その感情が集中力を欠く要素として、作戦から外されていたかもしれない。人質を助けたいと想っている分、それでその行動から遠ざけられてしまうという皮肉であり、悲劇。そうならなくてよかったというのは本音だ。


 閑話休題。

 俺は学校から帰ってきた子供たち――ニーゴも含めて、全員車でお迎えしたけど、その子供たちと母たちを集めて、今日のことを報告した。


「アポリト・ソフォス学校で、武装組織が学校ジャックと誘拐事件を引き起こした」


 お母さんたちは吃驚する。そりゃそうだ。子供たちは「え?」と皆、固まってしまった。そんなのあったっけ、って顔だ。あったんですよこれが!


「先日、学校に不審者が侵入しようとしていた事件があってね。何かあったらまずいと保険をかけておいたら、今日、さっそく引っかかってね。テロリストはそっちへ引っ張ったから、皆無事で済んだけどね」


 えぇ……という顔をするお母さんたち。リュミエールが手を挙げた。


「もしかして、わたくしが学校の外から視線を感じたのって」

「うん、そのテロリストの仲間だった。そちらも情報局で全員捕まえた」

「昼間のランチスペースのやつは?」


 リンが言えば、ラッタやレオナも頷いた。


「そうそう、突然だったよね」

「あれもテロリストの仕業?」

「それについては目下、調査中だ」


 正直に俺は答える。


「おそらく今回のテロリストたちと関係はないと思うが……まあ、はっきりしたら教えるよ」


 ランチスペース?――と話を知らないアーリィーが、リンたちを見たので、俺はその件は後で話すと伝えた。


「それで、話を続けるとだ。そのテロリストの犯行の動機、その拠点を割り出すために現在、シーパング軍が動いている」

「じゃあ、もう学校は大丈夫?」


 ルマが聞いてきたので、頷いた。


「今のところはね。ただ、軍が動いていて作戦中であるから、皆にも多少不便をかけることになると思う」

「と言うと?」


 ジュワンが眉をひそめる。俺は、子供たちにとっていい話からすることにした。


「明日、君たち全員学校はお休みだ」

「ほんと!?」

「やった!」


 下の子たちが喜ぶ一方、ラッタや上の子たちは怪訝な顔になる。


「実は、偽装とはいえ、うちの子供たちがテロリストに誘拐されていることになっていてね。そんな状況で、君たちが呑気に学校に通っていたら、そこから作戦が怪しまれることになるかもしれない」


 ここまで事態を大きくしておいて、肝心の敵拠点――強奪された貯蔵庫の在処がわからなくなっても困るからね。


「まあ、安全のためと解釈してくれ」

「ちなみに、誰が誘拐されたことになってるの?」


 ユーリが聞いてきた。それを聞きますか。下手に隠すとかえって勘ぐられるから、さらりと流すのがよかろう。


「エミールとリザベッタだね。なお、エミールは解放された」

「よかったな」


 ジュワンが言うと、当のエミールは苦笑い。


「こういう時、どういう反応すればいいのかな?」


 自分の身代わりに別の人――シェイプシフターがさらわれたという状況である。


「笑えばいいんじゃね?」

「不謹慎だろ」


 やんややんや。俺は付け加える。


「妹の救助のために、我らがリンちゃんが犯人グループと交渉するために自ら人質役を買って出たことになっている」

「さすが姉貴」

「あたしじゃないわよ」


 その通りではあるのだが、自分が言われたように少し照れるリン。俺は話を続けた。


「とまあ、そんな状況で、正直、君たちに何かしなければならないことはないんだけど、事態が沈静化するまで、行動自粛というやつだな。……休みだからって町にお出かけはしないように」

「はーい」


 子供たちは返事し、特に文句はなかった。行事で他の子と違う行動をとることがある家ということもあって、この手の大人の要件で予定がキャンセルされたり変更になるのは、まれにあるのである。


 それで子供たちは解散。アーリィーたちお母さんグループに、状況の説明をする。敵さんがどうして我が家の子供をさらったのか云々。自分たちの子供だもの、お母さんが心配になるのは当然だ。

 保険がきいて、実際にさらわれたのがシェイプシフターで済んでいるので、パニックになる者はいなかったけど、つくづく対策しておいてよかった。そうでなければ彼女たちも眠れない夜を過ごすことになっただろうから。


 なお、明日はアポリト・ソフォス学校が休校になった。うちの子だけでなく、全生徒対象である。

 理由は、ランチスペース断絶の調査のためだ。つまり、まだ原因不明ということである。

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