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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1983/2032

第1973話、不審な視線


 休み時間になって、ニーゴはさっそくクラスメイトたちに包囲されていた。美少女転入生は、クラスの話題の中心になるものである。


「ほら、あんたたち、あまりニーゴを困らせないの!」


 リンは、そうクラスメイトを牽制した。何かあっても困るので、フォローしなくてはいけない、と自分の役回りを解釈していた。


「ねえねえ、リンちゃん」


 そこへクラスメイトが声をかけてきた。


「妹さんが来ているよ?」


 あ?――視線をやれば、長い銀髪をなびかせた美人な妹、リュミエールだった。ニーゴの面倒を見なければいけないのに、何だというのか。

 席を離れ、廊下で待っている一学年下の妹のもとへと歩く。


「姉さん」

「何かあったの?」


 リュミエールの神妙な表情に、よくない直感が走った。だから軽口を叩くでもなく、リンは真顔で応じる。


「授業中に、学校の外から視線を感じたんです」

「覗き?」


 最近は聞かないが、以前に学校の敷地外から望遠鏡やカメラで教室にいる生徒を見ているという事件があった。


「おそらく」


 気配を感じて、その方向に遠距離視力の魔法を使い、逆に見返したのだが――


「どうも複数いるみたいなんです」

「複数?」


 それはまた、とリンは腕を組んだ。


「今日は覗き野郎が、たまたまかち合ったのかしら」

「いえ、一緒にいるみたいなんです」


 たまたま、ではなく、最初から二人組で動いていると、リュミエールは言った。


「さらに言うと、わたくしが見ていることに気づいたのか、すぐ隠れてしまいました」

「え、ちょっと待って」


 遠距離視力の魔法を使っていることを察して伏せた、ということ?――リンの眉間に皺が寄った。それはただの覗き野郎ではないのではないか。

 普通、それで逆に見られていると気づいて反応できない。それとも目があったと思って反射的に身を隠したのか。

 黙り込むリンに、リュミエールは続けた。


「以前受けたサバイバルキャンプで、軍隊の狙撃手の話を思い出したんですけど」


 射手には、スポッターという観測手がつく。二人で行動し、粘り強く狙撃の機会を窺ったり、偵察をしたりする。

 見られていると気づいての反応のよさからすると、狙撃手と観測手であったというのは、的外れな推測とも思えない。

 ただ、軍のスナイパーユニットが、何故アポリト・ソフォス学校を見張っているのかわからない。

 この学校には、シーパング同盟の有力者の子供がそれなりの数通っているので、その警護だとしても、生徒に気づかれるようなヘマをするような者をつけるとも思えないが。


「……どうするべきだと思います?」

「先生には言った?」


 リンは尋ねる。リュミエールは首を横に振る。


「相手がわからないので、どうしたものかと。ほら、今日からニーゴさんがいるじゃないですか」

「!」


 途端にピンとくるリン。昨日までなかった覗きの正体――それはあの異星人くんさんではないのか。


「どこかの国の諜報員? それともパパラッチ?」

「そのどちらかでも、学校の手に余るのではないか、と思いまして」

「なるほど」


 リンはポケットから携帯を取り出すと、電源を入れてスクランブル通信に切り替える。リュミエールは首をかしげた。


「どちらに?」

「パパに」


 呼び出したら、すぐに電話に出た。


『はいはーい』


 ジンの明るい声が返ってきた。


「あ、パパ。ちょっと今、大丈夫?」

『大丈夫だよ。どうかしたかい?』

「うん、授業中にさ、リュミが学校の外から視線を感じたっていうのよ――」


 リンは妹の話を簡潔に伝える。そろそろ休憩時間が終わりそうだったからだ。次の授業が始まる時に、電話でお喋りしていたら先生に叱られてしまう。


「――今日は、ほら、ニーゴがいるじゃん。それに関係しているかもって思ったんだけど」

『なるほど、それはあるかもしれないな。……知らせてくれてありがとう。こちらで手を打つよ。他に何か気づいたことは?』

「いいえ、特にない」


 それから二、三話して通話を切った。


「対処してくれるって」

「なら、もう安心ですね」


 リュミエールは頷くと、時間を確認して自分の教室へと戻っていった。友人のアグナ・シェードが顔を覗かせた。


「何だったの?」

「なんでもないよ」


 下手に騒ぎ立てるものではない、とリンは曖昧な態度を取った。



  ・  ・  ・



「何だったの?」


 グレーニャ・ハルの質問に、俺は苦笑した。


「リュミエールが学校の外にいる覗きに気づいたって話だった。この状況で学校を見張っているというのはおそらく――」

「武装集団の仲間ね」


 シーパング情報局局長は、周辺地図の画像を拡大した。


「学校の外から……十中八九、援護要員ね」


 警察や軍が学校を包囲した場合の、突入部隊の援護、脱出時のかく乱など……まあ、そんなところだろう。


「こいつらも追跡できるようにしたいな」

「手配する」


 グレーニャ・ハルは、自身の通信端末で部下に指示を出した。俺は視線を別のモニター――学校を離れた二台の位置情報を見た。

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