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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1975/1980

第1965話、二つの事件を結びつける


 俺は、最後にシーパング情報局に連絡を入れた。

 すぐに局長であるグレーニャ・ハルのもとに繋がった。映像が映し出され……いつぞやの時のようにバスローブ姿であった。


『先生、あなたは私のバスタイム時を狙っているのかしら?』

「むしろ、君が俺が連絡するタイミングを見計らって、その格好をしているんじゃないかという疑いがある……」


 適当にやり返して、とりあえず本題に入ろう。


「情報局からの連絡を見ている。例の貯蔵庫強奪グループの件で報告とあるが、それだけではないな?」

『ええ、アポリト・ソフォス学校への侵入事件ね。こちらにも連絡がきて、シェイプシフター諜報部と情報を共有した』


 グレーニャ・ハルは、手元に携帯型データパッドを引き寄せた。……少し胸を盛ってない、君?


『どちらから話を聞く?』

「貯蔵庫強奪グループの件から」

『了解よ。まずこのグループ、ブァイナ金属の扉を開けることができずに難儀しているみたいよ』


 だろうね。そう簡単に開けられない、破壊されないように作ったからね。……中身はスパムしかないけど。


『それで、同盟軍のシステムにハッキングを仕掛けてきた……まあ、これは逆探知してアジトを逆襲してやったのだけれど』

「いつの話かは知らないが、盗まれた貯蔵庫が発見されたわけではなさそうだから、まあ情報は特になかったのだろう?』

『ええ、そう。小癪ではあるけれど』


 グレーニャ・ハルは鼻をならした。


『わからないながらにわかったことは、敵は近代的な軍事組織、もしくは熟練の暗殺、諜報組織である可能性が高いということ』

「基地襲撃の手並みからすると、前者臭いが……。魔法国はダミーっぽいんだろう?」

『その考えは今も変わっていないわ。けれど、古くからの諜報組織が高度に近代化されて強くなった、という説も考えられる』


 その可能性は高いな。ハイブリッド。


『まあ、何にせよ、敵の足取りを追ってはいるわ。正直、手がかりが足りないのだけれど』

「今さらだが、貯蔵庫の中に発信機でも仕込んでおくべきだったかもな」


 外側だと見つけられて解体されていたかもしれないが、中を開けられないのでは、発信機を解除することはできない。


『それはそう。ただまさか貯蔵庫ごとごっそり運び出す奴がいるなんて、考えもしなかったわ』


 確かにな。扉が開けられないからって、倉庫ごと持ち出すなんて普通は考えない。というか、運び出すものではない。棚に収まるサイズの金庫を持ち出すのとわけが違うんだ。


『というわけで、現状、特に進展はなかったのだけれど、もしかしたら新たな手がかりが見つかるかもしれない』

「というと?」

『アポリト・ソフォス学校の不審者事件』


 グレーニャ・ハルは、カップに飲み物を注ぐと口にした。酒ではなくお茶であると思いたい。


『もしかしたら、それが貯蔵庫強奪グループと関係があるかもしれない』

「ずいぶんと飛んだな」


 普通に並べても、まったく両者が関連づけられそうな要素がない。警察だって別の事件として考えるだろう。……まあ、警察は、軍の貯蔵庫が盗まれた件を知らないから、絶対に結びつかないだろうけど。


「話を聞こうか」

『シェイプシフター諜報部から話は聞いていると思うけど、学校の不審者事件。あれ仲間がいるみたいなのよね』

「……ただの酔っ払いや、変態が忍び込もうとしたとは違う」


 そう口に出してみて、グレーニャ・ハルが関係性があると言ったことも、何となく理解できる気がした。

 諜報部の話から見ると、テロ、あるいは要人の子供の誘拐、または人質を取るつもりではないか、という説もある。


「学校を狙ったということは、対象は不特定多数か? 誰か要人を標的にするなら学校より家を見張ったほうが早そうだが」

『要人の家のほうが警備が厳重。だから学校に通っているところを狙う……という説もあるのだわ』


 その用心が王族、大貴族ともなれば家のほうが難攻不落なんてこともある。なるほどね。


『付け加えるなら、標的の家がわからないから学校に子供がいる時を狙う、というのもあるんじゃなくて?』

「……それ、遠回しに俺の子供たちを狙っている、って言わない?」


 家の所在がわからないVIPと言えば、まんま俺ん家じゃん。有名人過ぎて、一般人が詰めかけてプライベートを滅茶苦茶にされないよう、家の場所は一般公開されていない。……寺でもないのに毎日お参りされるなんて優しいほうで、病気や怪我の誰々を看てくださいだの、村境がどうだの、民族問題だので助けてほしい、と国や議会通り越して個人で持ち込んできたりとか……。妻にも子供にもよくないからね、そういうのは。

 閑話休題。


「学校の不審者集団の狙いが俺の子供だとした場合、その意図は……ブァイナ金属か」


 そこで、サウス・カラビナス基地の襲撃班が繋がってくる。あの貯蔵庫の中身を手に入れるために、あの貯蔵庫を開けさせたい。ブァイナ金属を知る俺に対して、子供たちを人質に取ろうというわけだ。


「一見無茶な話だが、一応筋は通っているか」

『証拠はないけれど、否定できる材料もない。こじつけに見えなくもないけれど、それらしい説でもある』

「状況、組織での行動……。可能性があるという時点で無視もできないな」


 はずれていればいいが、当たっていた時の反動がでかすぎる。俺たちは、そういう最悪を避けるために動かなくてはいけない。


「万が一に備えるとして、君の説を採用する場合、不審者集団は遅かれ早かれ、近いうちに学校を襲撃する。テロに見せかけるのか、誘拐で動くかは相手さん次第ではあるが」


 ただ同盟の有力者の子供たちも通う学校だ。襲撃されること自体、大きなニュースになる。シーパングの安全神話にもかかわる大問題。理想を言えば、攻撃される前にシャットアウトしたいが……。


「情報局としたら、敵の手掛かりも欲しいんだよな」


 何せ、十年前のアレを狙っている可能性の高い敵だ。それで基地を一つ破壊しているのだから、放置しておいていい存在ではない。

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