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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1974/1980

第1964話、急な知らせ


 俺たちが映画スタジオから家に帰ると、まずサキリスと14歳組に会った。


「冒険者登録は、問題なく」


 サキリスが報告すると、14歳組の四人は満面の笑みを浮かべた。これで晴れて冒険者か。感慨深いね。


「おめでとう」


 お祝いを言わせてもらうよ。さて、そんなピカピカシャイニーな冒険者たちに、ひとつ提案があるんだ。


「来週、急遽だがアポリト・シーパング・ピクチャーズのジョセフ・クルフ・マカンタ監督が、取材を兼ねた古代遺跡探索に行く。俺たちも招待されたが、君たちも来るか?」


 何なら新人冒険者に護衛依頼を出してもいい、という話なんだけど。


「冒険者として指名依頼!」


 ジュワンが声をあげた。


「スゲぇ! そのマカンタ監督って有名人だろ! その人から護衛依頼なんて!」


 喜ぶ次男。長男であるラッタは、悪戯を咎められた子供のような上目遣いを寄越した。


「もしかして、父さんが頼んだの?」

「頼んだというか、誘われたからな。護衛がいるなら、うちにイキがいいのがいるとは言ったけど。……な、リンちゃん?」

「え? あ、ああ、まあ、そうね……」


 14歳組はマカンタ監督がクルフおじさんだってことを知らないのだ。友人の家族を誘っただけで、冒険者に対するギルドを通した依頼ではないのはリンも理解していた。だがどうせ大した違いもないし、水を差すのもなんだからと、この場のノリに合わせる方を選んだようだった。


 ともあれ、遺跡探索と聞いて、今から子供たちはワクワクしていた。14歳組からしたら、早く冒険者としての仕事をしてみたいのだろう。

 学生身分なので、当面はクエストを探したり仕事をするのは、週末になってからというパターンになる。当日にできそうな依頼を探すたけだが、すでに先約で依頼――のようなものが入ったから意気に感じているのだ。


 さて、この件は、アーリィーたち奥様や下の子供たちにも話しておこう。大きい子たちばかり楽しそうなことをしていると、小さい子たちからやっかまれても困る。


 奥様たちも何か意見があるかもしれないし、とにかく黙っているのが一番よろしくない。もしかしたら週末に予定がブッキングしてしまうなんて可能性もあるのだから。……まあ、俺は分身を出せば解決だけど、他はそうはいかないからね。

 ひょっとしたら、アーリィーも遺跡と聞いてお出かけするかも、と、ちょっと期待したり。



  ・  ・  ・



 結論から言うと、週末の予定は俺とベルさん、サキリスを保護者として、リン、エミール、リュミエール、ニーゴと、14歳組のラッタ、ジュワン、ユーリ、レオナが行くことになった。

 アーリィーは次の週末は予定があるそうだ。妹姫のフィレイユの育児相談がどうとか。あの姫様も結婚して三児の母である。


 他の子供たちと言えば、リュミエールが知的好奇心から同行したいと申し出た。彼女の弟であり、末っ子のシエルも来る素振りを見せたがニーゴが来ると聞いたら、拗ねてしまって行かないと手のひらを返した。

 ……わかるんだけど、難しい年頃だよね。


 とまあ、週末の予定が経ったところで、自室に戻ってデータパッドを起動。俺宛ての連絡事項のチェックをしたら……おや、これは。

 シーパング本国警察局と、機密アクセス欄に、シーパング情報局。さらにシェイプシフター諜報部までそれぞれ一件ずつ入っていた。


 嫌な予感を想起させるオンパレードだ。シーパング情報局辺りは、例の地底世界の貯蔵庫強奪グループの件の続報かもしれない。

 重要度的には、後ろの二つが高そうだが、警察局の通知を最初に開くことにした。他に比べて見て処理するまでの時間が一番短そうだからだ。ちゃっちゃと片付けて、重要度の高い知らせに時間をかけよう。


 何々……アポリト・ソフォス学校に侵入しようとした不審者……?

 おいおい、うちの子たちが通っている学校だぞ。一気に警戒感が跳ね上がった。詳細を確認する。生徒の親にはここまで詳しい話は書かないが、警察局が俺に知らせるのは、俺がシーパングのお偉いさんだからというのもある。

 そもそも、あの学校の創設者が、俺というのもあるんだけども。


 ふむ……。もしかして――俺は、シェイプシフター諜報部の通知を開く。あぁ、内容はこちらも同じだった。アポリト・ソフォス学校への侵入を図ろうとした者がいた件について。

 俺は通話キーを押した。相手はすぐに出た。


『マスター』

「スフェラ。メールを見た。詳細を」


 報告によれば、休みの学校を不審者が徘徊していたらしい。警察局の報告では、侵入者を警戒するセンサーが反応したという。添付された監視カメラの映像では、身なりの怪しい男の姿が映し出されていた。

 帽子を深く被り、マフラーで首や口元を隠したその男。顔はよく見えないが、動きのよさから、素人ではなく訓練された戦闘員、もしくは軍人ではないかと推測された。亜人や獣人ではない。


『数時間を遡って映像を調査した結果、単独ではなく複数で行動しているようです』


 スフェラは淀みなく告げた。複数とは、警察局の報告にはなかった。さすがはシェイプシフター諜報部。

 新たな画像には、学校に侵入しようとした男が仲間とおぼしき者と何事か話したり、移動したところが収められていた。


「嫌な予感しかしないな」


 同盟所属の有力者の子供たちがそれなりの人数通っている学校だ。そこに不法侵入しようとしたとか、テロ、要人の子供を誘拐や人質をとるための下見にしか見えない。


「で、今、こいつらは追跡できているのか?」

『いいえ。シーパング情報局と連携し、町の監視装置とその記録から調査をしている段階です』


 つまりわからないということだ。


「警察には、共有していないのか?」

『はい。現状、警察が大仰に動けば、かえって不審者グループを警戒させてしまうものと判断いたしました。シーパング情報局と相談したところ、意見は一致をみました』

「有名人の子供が通う学校だもんな」


 そこに通う生徒のことを考えれば警察も力を入れて捜査するだろうが、それはマスコミも動き、そこから敵に捜査状況が伝わる恐れがあった。


「とはいえ、生徒の親には通知しておかないとな」


 一国の王族の子もいるからね。傷でもつけられたら国際問題だよ。

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累計45万部突破! 既刊1~13巻(12巻以降は電子書籍版のみ)も発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも連載中!

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