第1959話、アミウール家の子供たち
ニーゴの参加したアミウール家の晩餐は、まあまあ賑やかだった。……間違ってもお通夜状態ではなかった。
ただまあ、ニーゴ的にはどうだったんだろうな。見た目は人間だけど、鉄星の異星人。その考え方、感じ方、受け取り方は、俺たちとは違うはずだ。
人間的な感覚の話をすれば、ちょっと気まずかったかもしれないけど、ニーゴはどう感じたのだろうか。
俺の本音を言っていいのなら、結構ヒヤヒヤものだったけどね。
「ニーゴさんって、格好いいですよね!」
四女のルマが言えば、彼女と仲良しの五女ジュイエが目を輝かせる。
「モデルみたいですよね。こういう男の子、あまりいない!」
「……変かな?」
ニーゴはちょっと照れが入っている感じで尋ねた。二人は首を横に振る。
「ぜんぜん!」
「格好いいですよ! 世の男子も見習うべきだわ」
ルマとジュイエは、割とイケメン、割とパンクなファッションに好奇心が抑えられないようだった。
これには一つ上のジュワンとユーリが渋い顔になった。一方で一つ下のエミールは、しげしげとニーゴを見つめ、首をかしげている。……そういうファッションがいいのか? 僕にはわからない、という顔をしている。
さらに下のリザベッタとアリーシャは、イケメンのニーゴに直接話しかけはしなかったが、何やら二人でコソコソ話して照れていた。ルマとジュイエが彼とベッタリだから、話しかけにくいせいもあるだろう。席も若干遠いし。
末っ子のシエルは、胡散臭そうな目でニーゴを見ている。ヨソ者が、って顔をしているぜ。アミウール家の団らんに入ってくるな、という顔。警戒感というよりは、若干人見知りが入っているかもしれない。
三女レオナ、長男ラッタは遠巻きに見ていて、好意、あるいは敵意も感じられない完全中立を決め込んでいる。
「いいんですか、姉さん」
次女リュミエールが、長女のリンに顔を向けた。
「本当は、ニーゴさんとお喋りしたいんじゃないですか?」
「あたしが? 何で?」
「顔に出てますよ?」
「は? え、マジで?」
自身の頬あたりに触れて、マッサージするように撫でる。
「顔に出てた?」
「本当は、宇宙とかニーゴさんの星のこととか聞きたいんじゃないですか?」
「そりゃあそうよ」
リンは否定しなかった。
「この星とは違う星に生まれた人なのよ? 色々聞きたいじゃない。……リュミはそういうのないの?」
「まったくないと言えば嘘になりますけど、そこまで急がなくてもいいかなって」
落ち着き払って、さっさと食事を済ませたリュミエールは口元をナプキンで拭う。その所作は優雅そのものである。
「しばらくいるんですよね?」
「だと思うけど……。パパ! どうなの?」
リンが、聞き耳を立てていた俺の方に聞いてきたので、しばらくいるよと返事しておいた。彼女はリュミエールとの会話に戻る。
「それにしても、ルマとジュイエは何であんな俗っぽいことばかり聞いているのよ」
リンは妹たちのニーゴへのインタビュー内容に不満を露わにする。
「異星人なのよ? もっとこう……あるでしょうに」
「鉄星のファッションについて、聞いているんじゃないですか?」
リュミエールは四女と五女をフォローするように言った。
「これも貴重な意見と思いますけど?」
「まあ、確かにここらでは見ないわよね」
服自体は、この星のもので、ファッション雑誌辺りで見かける『ちょっとこの国では見ないような前衛的デザイン』のそれを思わせるが……。
「リアルでああいうの、初めて見たわ」
「そうですよね……」
リュミエールは同意した。なお、子供たちの中でファッション雑誌を購読しているのは、意外にもリュミエールである。女王後継者として、着ないにも関わらず俗世なファッションに対して、ちょっとした憧れがあるようであった。繰り返すが『着ないけれども』。
次に熱心なのが、ルマとジュイエコンビ。レオナもチェックはしているが、それを表に出さず、でもしっかりやっているタイプ。
最低限の確認で済ませているのがリンである。彼女は他のことに時間を使うのだ。
「姉さんも、きっと似合うと思いますよ?」
「男勝り、って言いたいの?」
ニーゴと同じような服装って、あれはメンズだよね――というリン。リュミエールは小悪魔めいた笑みを浮かべる。
「でも姉さん、どっちもいけるじゃないですか? 学芸会の男装も滅茶苦茶、人気でしたしー」
「女からモテてもねぇ」
手をヒラヒラさせるリンである。
「男子からもモテてますよ、姉さんは」
「それはあんたのほうじゃなくて?」
イタズラっ子めいた表情になるリン。
「『深窓の令嬢』だっけ? あたしには絶対聞かないフレーズだわ」
「窓際で本を読めばいいんですかね?」
冗談めかして笑う二人。リンの不機嫌さは吹っ飛んだ。ちょうどリンが夕食を終えたタイミングで、サキリスが立ち上がった。
「リンちゃん、これ貴女宛て」
「手紙? ありがとう、サキリスママ」
封筒を受け取るリン。リュミエールが口元を手で隠す。
「あら、お姉様、ラブレターですか?」
「こんな野暮ったい封筒で送ってくるラブレターなんて願い下げよ」
「なに、姉貴。ラブレター?」
ジュワンが興味を引かれて言えば、長女は「うっせ」と辛辣に返した。
「――アポリト・シーパング・ピクチャーズ? うわっ、マカンタ監督からの招待券!」
「マカンタ監督って映画監督の?」
ユーリもまた食いついた。ここ数年、シーパングで公開されている映画をいくつか監督した著名人である。
「見学会に応募していたら……当たっちゃった!」
リンはニシシと笑った。へー……、そういうのも興味あるんだねぇ。多趣味だよね彼女は。
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