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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1963/1966

第1953話、異星人の扱いについて


 ニーゴは、極めて人間に近い体を持っている。見た目だけなら、異星人と言われてもわからないほどに。

 そこからベルさんが思いついた『テラの人間と交流するために作られた人工物』説が、もっともらしく思える。

 もっとも、人工物というのは、ちょっと違和感ではある。機械じゃあるまいし、スキャン結果においては、100パーセント生物である。


 だが俺たちは、クローンを見ているからね。これについては、100パーセント生物なんだけど、遺伝子をもとに人の手で工業的に製造されているわけで、人工物という見方もできる。

 クローンの人権問題というのも、そこのところも賛否がわかれている所以なんだろうね。

 そのあたり、ニーゴの口から言ってくれれば、はっきりするのだろうが、あいにくと彼は一部の記憶が喪失している。


 何故、月にいたのか。ここへ来た理由も、コールドスリープしていた理由も不明。追々思い出す可能性があるが、果たして正直に話してくれるかも今のところわからない。


『それで、ジン・アミウール殿』


 ホログラフィック状の衛星通信に浮かぶ男――シーパング同盟議会議長ムナールは、毅然と、しかし親しみのこもった声を出した。


『そのニーゴ君について、どう扱うべきか、意見はあるだろうか?』


 リヴィエル王国王太子であるムナール殿下は、いい歳ではあるが、いまだにかの王国ではパッセ王が君臨しているので、殿下ではある。

 今は持ち回りであるシーパング同盟議会の議長を務めている。


「――敵なのか味方なのか、まだ判断できません」


 俺は正直に答えた。


「まずは信用を得ないと話にならないと考えます」


 相手の背景がわからない以上、強硬的な手段を取ると、何かあった時が怖い。


『我々としても、彼の星の軍隊が攻めてくるというのは願い下げである』


 事は慎重にあたるべきだ、とムナールは首肯した。


『とはいえ、世間に向けて、何かしら対応を決めておくべきではある。月の遺跡発見のニュースは、すでに同盟国で知れ渡っている。続報を期待している者も多い』


 宇宙船発見についても、もうニュースに流れているんだっけか。異星人発見、保護については、まだ発表されていない。


『高度に政治が絡む。彼は、客寄せの生き物ではないが、事が知れれば取材が殺到することだろう。それを彼が煩わしく感じて、惑星テラの民に悪い印象を持たれたくはない』

「かといって、議会が報道に制限をかけるのはよろしくない……」

『そうだ。戦時中であれば、作戦上の機密で抑えることもできるが、平時に報道に制限はよくはない』


 情報がオープンである社会も楽ではないということだ。せめて、敵か味方がはっきりしていれば話も変わってくるのだが、万が一敵だった場合、あるいは敵になってしまった場合を考えると、慎重にならざるを得ない。


「できれば、早いうちに解決したい問題ではありますが……記憶喪失が絡むとなると、時間がかかると覚悟したほうがよいでしょうね」

『そこを何とかならないか、というのが本音ではある』


 ムナールはそこで首を横に振る。


『もちろん、手荒なことはなしで、だが』

「味方であるなら、こちらの社会を体験してもらうのが早いとは思いますが……」


 テラの人間はこうなんだよ、ってね。ホームステイとか、種族間交流というか。


「敵であった場合、こちらの社会構造から明確な敵と判断されたり、侵攻のための情報を与えかねない」

『だが、彼は一人なのだろう?』


 ムナールは眉をひそめる。


『彼の所属する星の軍隊が、今も存在しているという証拠はない』

「存在しないという証拠もありませんよ」


 アンバンサーの機械兵器が、緊急通信を聞きつけて惑星テラに大挙押し寄せた前例がある。アンバンサーの巨大要塞からの、たった一つの通信が、この星を滅ぼすところであったのだ。


『その辺りを、ジン・アミウール殿の方で上手くやってもらえないだろうか?』

「つまり……私に預かれと?」


 なるほど、ここで同盟議会が、俺個人にコンタクトしてきた理由を察してしまった。どこの国で預かるかで、議会ではすでに揉めたのだろう。結局、特殊な立ち位置にある俺に丸投げしようということだ。


『おそらくそれが、一番波風が立たないと思う』


 ムナールのホログラフィックは手を組み合わせた。


『より正直に言えば、どこも面倒を引き受けたくないということだ』


 はっきり仰る。まあ、敵かも知れない存在を自国に引き入れるというのは難しいよな。いざ牙を剥かれた時、最初にやられるのはその引き受けた国だろうし。


「責任重大ですね」

『だから、皆が渋ったのだろうね』


 すまなさそうにムナールは言った。


『何かあった時、その場で上手く対処してくれそうなのが、あなたしか浮かばなかったのだ、ジン・アミウール殿』


 困った時のジン様ってか。神様に片足を突っ込んでいる人間だからこそ、とも言えるが、それで何かあったら、俺が大戦犯扱いされてしまうじゃないか。いやだいやだ、まったくもって面白くない。

 さりとて、他の誰かに任せて、それで何か起きたら、火消しのために結局、俺が出張ることにもなりそうなんだよな。


「技研とも話してみますよ」


 現状、接触して何か問題が発生しているわけでもないが、向こうで何か気づいていることがあれば、細かな情報であっても共有しよう。


「彼の背後関係については調査を続行するとして、私に任せてくれるという解釈でいいんですね?」

『是非に』


 少しホッとしたような声に聞こえたのは気のせいか。


「報道の方はどうします?」

『そちらはあなたの一存に任せる。公開しても問題ないと思ったなら、そのようにしてくれても構わない。……もちろん、同盟に不利益にならない範囲で、お願いしたい』


 完全に丸投げしやがったな、同盟議会。

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