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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1964/1966

第1954話、俺氏、異星少年と直接話す


「――ということで、ニーゴ君。君を預かることになったジン・アミウールだ」


 俺が自己紹介すると、銀髪の少年――ニーゴ君は表情乏しく首をかしげた。


「預かる、とは?」

「君、ずっとここにいたい?」


 マギ研究所で、あれこれ質問の日々というのは、いい加減ウンザリしているんじゃないかと思っているんだけどね。


「俺たちの、惑星テラというものに触れてみるのもいいんじゃないかと思うんだ。そうしたら、君も何故、テラの月にきたのか、昔のことを思い出すかもしれない」


 はあ、と要領を得ない顔をしているニーゴ君。それはそう。


「君にも日常というものが必要だろう。それはこの研究所にいることではないだろう?」


 君もヒューマノイドであるなら、人生ってものがあるわけだ。


「嫌になったら故郷に帰ってもいいし、それが叶わないなら他の道に進むこともあるだろう」

「他の道とは?」

「君が決めることだよ」


 俺がとやかく言うものでもないだろう。もちろん、何ができるかわからないから、いくつか道を示してほしいとか、ヒントをくれというのなら答えるけどね。


「ということで」


 俺はデータパッドを出して、彼に画像を見せる。


「これから君が住む部屋を作ろうと思っているんだが、希望はあるかな? サンプルもあるからそこから選んでもらってもいい」


 どういう環境ならリラックスできるだろうか。そういう異星人の趣味趣向はわからないからね。生活をしていく上で、やはりストレスが少ない環境にしたい。


 このストレスというのが何気に厄介なところだ。何せ目に見えないもので、ちょっと観察していないと気づかないこともしばしばある。

 普段から顔を合わせている人間同士なら、ちょっとの違和感にすぐ気づけるが、ほとんど初見では普段を知らないから、割と精神的に参っていてもわからない。


 ストレスの強弱は、人のみならず生物にも影響する。体調不良、食欲減退。消化能力の低下……要するに体を弱くしてしまう効果が色々で、結果、食事を受け付けずに衰弱、最悪の場合死んでしまう。


 先にも言ったが、ストレスというのは受ける側によって度合いも変わる上に、目に見えないために、はっきりそれとわかる頃には深刻な状態というのも少なくない。

 異星人であるニーゴ君は、ただ一人。代わりは誰もいないのだ。だからこそ、ストレス度はより気をつけないといけない。違う星の人間であるから、こちらの当たり前は通用しないと考えるべきだろう。


 ……そうそう、それで言えば着るもの。あと食事も好みを把握しないとな。これもまたストレスにかなり影響する。


 衣食住。そして特に食事だ。料理は日々のやる気に影響する。まずい料理など、ストレスそのものであり、こいつがストレス環境下での死因でも割合が高いのではないか。

 まあ、これは旨いまずい以前に、体が受けつけるか、という問題もある。毒とか食えないものは吐き出すなどの反応でわかりやすいのだが、食べて消化されないとか、栄養にならないというのが問題だ。


 聞いた話によると、日本人がバリバリ食べる海苔も、外国人は海苔の成分を吸収できないらしい。

 また戦時中、南の島のとある芋を食べても日本人は栄養を吸収できず、食べているのに栄養失調で死亡したとかいう話もある。

 ここ数日、マギ研究所で出された合成タンパク食などは問題なく食べていて、体調も悪くはなさそうだが、色々見ていかないとな。



  ・  ・  ・



 まず部屋についてあれこれ話した。この辺りは遺跡の内装を話しつつ、鉄星人の建築、家具についてと考え方を知る。細かな形は違いはあれど、椅子に座り、机の上で食事や作業などを行うメンタリティーは持っていた。

 ……とりあえず研究所スタッフがよく考えずに用意した家具一式について、特に間違いはなかったのを確認。


「緑の内装は?」

「ありきたりな色ですよ」


 俺たちの世界で言うところの灰色に近い感覚か。機械といえば緑なのだそうだ。金属の色なんだろうね、鉄星人にとっては。鉱物から加工すると緑系列の色になるらしい。


「じゃあ、君たちにとって灰色は?」

「白と黒の間」


 文字通り灰の色らしい。なら、彼の目には月面というのは死と灰の世界だったかもしれない。


「そんな月によく降りようと思ったね」


 遺跡――彼らにとっての基地を作った理由とか目的を思い出してくれれば、と思い尋ねたが、ニーゴ君は首を傾げるばかりだ。


「どうして降りたんだろう……? 惑星には人がいたから……?」


 下手に惑星テラに降下したら、原住生物や当時の人間から攻撃されると思ったのかもしれない。

 ……そういう考えが本当であれば、機械文明時代ではないのは確かだろうな。テラ・フィデリティアが月面でも活発に活動していた時代ではない頃に、ニーゴ君と彼の宇宙船は、月に来たのだ。

 月に基地はあれど、何をする施設かよくわからないんだよな。現状は居住区と宇宙船用の格納庫と整備工場程度ではないか、という推測。軍隊や国の使いというより、開拓民がやってきて月に家とか村を作るみたいな感覚か。


 こっち方面で特に情報はなく、部屋作り案は決まった。ディーシーに見せたら、どういう反応をするか。異星人の内装に興味を持つか、それとも面白味がないと一蹴するか。果たしてどちらかな。


「じゃあ、次は衣装かな」


 今は、病院の患者衣みたいなのを着ている。清潔感はあるが、簡素なんだよな。

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