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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1962/1966

第1952話、異星人A


 その異星人は、十代半ばの人間の姿をしていた。


「うちのリンちゃんくらいか」


 俺が呟けば、ベルさんは皮肉げな顔になる。


「リュミエールくらいかもしれない。あるいはラッタたちかも」

「一歳ずつしか変わらないじゃないか」

「どうかな。16歳と14歳じゃ、変わるもんだろ。人間のその年頃ってのは」


 それはそう。特に男の子はここで一気に伸びる傾向にある。


「見た目は人間とほぼ変わらないんだがな」


 異星人の宇宙船の中で回収されなかったら、わからないねこれは。


「肌の色がテラ人と違うとか、角があったり、耳が尖っていたりすればわかりやすかったりするんだろうけど」

「なんだそれ?」

「知らない? 俺の元いた世界のファンタジーとかSF映画じゃ、結構定番なんだ」


 創作の中では、そういうので未知の異星人を表現していたんだ。ベルさんは鼻をならした。


「ふうん。だがそれだと人間とは違うが、亜人と見分けがつかないんじゃねえか? ゴブリン、オーガ、エルフなどなど」

「そういえば、エルフ耳の異星人なんて表現もあったか」


 何だか懐かしいな。こちらの世界だと、普通に亜人種族がいて、地球での異星人表現と被っているのも多々ある。


「何にせよ、ベルさんがいてくれて助かったよ。異星人言語もだいぶ捗っているからね」


 文字については完全ではないが、言葉の壁は取り除かれた。

 今も、異星人少年はマギ研究所宇宙支部で、ユナや職員たちと聞き取り調査を受けている。


「で、今んとこ、わかっていることは?」


 ベルさんが尋ねた。俺は携帯型データパッドを操作して、昨日までのレポートを相棒に見せた。


「大したことはわかっていないよ。どこから来たかについては、宇宙船のログを探しているんだが、そっちは解析待ちだな」

「本人に聞いているんだろう?」

「鉄らしい」

「テツ? 何だそりゃ」


 当然の問いがベルさんの口から発せられた。まあ、そうなんだけどね。


「翻訳の影響だよ。こちらでは『鉄』に訳されて聞こえる」


 仕方ないので、俺たちも『鉄星』カッコ仮カッコ閉じる、みたいな感じで記録している。


「で、その鉄星とやらはこの宇宙のどこにあるんだい?」

「その辺りがざっくりしていて、正直言葉ではよくわからない。ここより銀河系中心に近い方向から来たらしい、というのはわかった」


 後はさっきも言ったけど、航行ログさえ出てくれば、そこから詳細な位置などわかるだろうよ。


「どうして、惑星テラの月に来たかについては?」

「思い出せないそうだ」

「思い出せない?」


 はっ、とベルさんは大仰に肩をすくめる。


「何ともな。前にもこんなことなかったか?」

「いつのことかは知らないけど、コールドスリープの影響で、記憶の齟齬や一時的な記憶喪失があるらしい。テラ・フィデリティアの医療コンピュータはそう答えた」

「本当かね? 記憶喪失のフリをしているんじゃないか?」

「その可能性はある」


 俺はパックをとって、栄養ゼリーのチューブをかじる。


「彼からしたら、俺たちを完全に信用しているわけではないからな。記憶喪失のフリをして様子見はあるだろう」


 たぶん、俺もそうする。そもそも異星人だもんな。向こうからしたらこちらもそうだし、会っていきなり味方だってどうして信じられるのか。疑って当然。自身の身を守るべくできる範囲のことをするのは、正常な判断ではある。


「だからといって、こちらから自白を強要したり、まさか拷問をするわけにもいかないからね。現状は友好的に付き合っていかなくてはいけない」

「友好的ね」

「俺がこの世界に召喚された時を思い出してくれよ、ベルさん」


 つい皮肉を言いたくなる。


「俺に優しかったベルさんと、俺に厳しかった大帝国。その後の運命がどうなったか、言わずもがなだろう?」


 軍事政権だった大帝国は滅びた。俺を敵に回さなければ、そうはならなかった。


「相手のバックボーンがわからないうちは迂闊なことはできない。ヘタに事を荒げて敵対なんてことになったら、後が怖いでしょ」


 大昔に月にきたから彼は一人だ、なんて考えていると、鉄星から報復の大軍団がやってきて宇宙戦争だ、なんてのも有り得なくはない。

 過去の人間が現代に蘇ったというのなら、その長い年月で鉄星の科学力はさらに上がり、テラ・フィデリティア軍でも手も足も出ないほど技術力、軍事力を持っているかもしれない。


「少なくとも、彼が何故、月に来たのか。鉄星がどうとか、もっと情報を得ないと何とも言えない」

「それを承知の上で、記憶喪失のフリをしているんだろうがな」


 ベルさんは言った。


「まだフリと決まったわけじゃないぞ。記憶の齟齬は本当かもしれない」

「まあ、そうかもな。……そういや、名前くらいかはわかっているんだろ? 何て言うんだ」

「ニーゴ」

「ニーゴ?」


 とっさに聞き返すベルさん。俺はゼリーを平らげ、パックをダストシュートへ放り込む。


「25。数字みたいなんだけどね。ニーゴと呼ばれていたとか本人は言っている」

「その辺りも、記憶の齟齬ってやつかい?」


 ベルさんは皮肉った。


「番号とか、何か怪しいな。もしかして人型をした実験生物とかだったりしてな」

「異星人ではなくて?」

「異星人が作った人型の人工生物。なんつーか、見た目もそうだが、あまりに人なんだよなぁ」


 それが正解だったとしたら何のために? 鉄星人が、テラの人間とコミュニケーションをとるために、人に似せてニーゴを作った?

 ……あるかもしれないな、それ。

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累計45万部突破! 既刊1~13巻(12巻以降は電子書籍版のみ)も発売中! コロナEX、ニコニコ静画でも連載中!

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リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

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姉妹に発育が良くてちょいちょいエロ被害に遭う真面目ちゃんいねえ?(゜д゜)
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