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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1959/1967

第1949話、潜入部隊と青エルフ・クローン守備隊


「賊は基地内に侵入しています!」


 同盟軍のボディアーマーをつけた青エルフ兵は、魔力通信機に呼びかけた。周りでは銃声や破壊音が繰り返し響いている。


「内部の様子は不明。敵は目下抵抗を続けてします!」


 町の住人――武装した青エルフたちはそれぞれヘルメットとアーマー、ライトニングバレットを手にカラビナス基地を包囲している。

 サウス・カラビナスの青エルフ全てが兵隊である。この町は、とある存在を守るために存在しているのだ。


 大陸戦争以後、大帝国が軍用に製作した青エルフ・クローンは、戦後その扱いについて揉めたが、シーパング同盟の兵士として現在雇用されている。

 このサウス・カラビナスのような地下世界の辺境の守備隊として、現在も稼働しているのである。


『基地司令部は沈黙している。こちらからも援軍を出した。それまで敵を施設から逃がすな。可能であれば突入して制圧せよ』

「了解です!」


 近隣のプロモ渓谷基地への報告を終えて、青エルフ・クローンは仲間たちに同盟軍からの命令を伝達する。

 これを受けて、基地への突入が計画される。中央建物、その司令部はすでに賊によって抑えられて音信不通。中の状況はわからないが、地下貯蔵庫にある『特S物体』を外部の存在に渡してはならなかった。


「パワードスーツ、来ます!」


 町の至る所に格納されているパワードスーツ『ウォーリアⅢ』が基地敷地外の塀の裏手に到着する。敵が歩兵を中心にしているならば、パワードスーツの装甲が敵弾を弾く。


「正面から、敵の立てこもる建物を攻撃させろ! その間に、突入部隊が塀を越えて敷地内に侵入する!」


 要するに、ウォーリアⅢで敵の注意を引くということだ。正面ゲートよりパワードスーツは侵入。すると建物入り口からの攻撃が一時やんだ。


「いいぞ、敵はパワードスーツの投入に動揺している!」


 前進!――ウォーリアⅢは手に持つ12.7ミリ重機関銃を短い連射をしながら歩き出した。

 その銃弾は、すでに銃撃戦によって穴だらけの建物入り口周りをさらに貫いた。


「各突入部隊、行動を開始せよ」


 包囲している青エルフ・クローン兵がスモークグレネードを投擲。敷地内に複数の白煙が噴き上がる。

 ジャンプブーツをはいた青エルフ・クローン突入部隊員が塀をジャンプして飛び越える。援護射撃を受けつつ白煙を盾に、敵が立てこもる基地へと走る。

 建物からの反撃はなく、そのまま壁まで辿り着く。後は非常口や窓、あるいは二階、三階部から中へ踏み込むだけである。


 ライトニングバレットのストックを叩きつけて窓を叩き割る。あるいは非常口の扉を蹴破る。青エルフ・クローンの突撃兵が侵入を開始するまさにその時――


 赤とオレンジの閃光が走った。

 一際大きな爆発が起きて、突入部隊員を飲み込んだ。施設外の見張り台とその付近にいた青エルフ・クローン住民臨時司令部は騒然となった。


「今の爆発は――?」


 あまりに大きなそれは、基地丸ごと吹き飛ぶようなもののような迫力があった。


「まさか……!」

「基地で爆発!」

「それはわかっている!」


 見張り台からの報告に現場指揮官の青エルフ・クローンは声を荒げた。問題は、破壊の規模だ。どれくらいの破壊か、突入部隊はどうなったか。塀の外からではわからない。



  ・  ・  ・



 上で大きな衝撃が起きた。

 グーワィは見上げたのも一瞬、淡々と任務を継続した。地下最深部の最後の防衛線である青エルフ・クローン兵を掃討。貯蔵庫の前にきた。

 戦闘員がその分厚い扉の操作パネルを調べる。もう一人が周りを調べ、そして眉間にしわを寄せる。


「グーワィ様、この扉、ブァイナ金属製です」


 現在存在するものの中で、もっとも強固な金属。これを破壊できるものは、ほぼないと言われる代物だ。そんな材質で作られた扉とくれば――


「おそらく、ここだな。例のモノがあるのは」


 これだけ頑丈な扉に守られているのだ。ただの金庫や貯蔵庫にこんな希少かつ高価な扉は使わない。最強の防犯扉が、彼らの行く手を阻むのである。


「どうだ?」

「ダメです。端末の電源が落ちています。操作できません」


 操作パネルをいじっていた戦闘員は、苛立ちをにじませる。


「非常時には操作できなくなるようになっていたのでしょう」


 これではたとえパスワードや他のセキュリティの解答を用意していても開くことはできない。パネルを操作できないのだから。

 上で襲撃があった場合、速攻で電源が切断されるようになっていたのだろう。これをやられないようにするのなら、こっそり忍び込んで、電源が生きているうちに操作するしかなかっただろう。


「ここで解錠は無理です」


 正攻法は駄目。破壊しようにも無敵のブァイナ金属の扉には無効。完全にお手上げである。


「あまり時間をかけますと、敵がやってきます」

「どの道、一階は吹き飛ばした」


 グーワィは事務的に告げた。地下への階段も天井が落ちてきて埋まっただろう。生き埋めである。通常の手順では脱出もできないが、逆に言えば彼らも掘り起こさなければ地下へは来られない。


「ここでは開けられないなら、拠点でじっくり試してみればいい。――転移術式」


 戦闘員が扉に札を張り、魔法陣を描く。同時に地下にいるグーワィら戦闘員らも転移魔法陣を床に描き、脱出の準備にかかる。

 貯蔵庫ごと転移させ、敵のいない場所でゆっくり解錠する。目的のものが中にあるのか、実際に目で確認できないのは心残りだが、この厳重さから確実にあるだろう。

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