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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1958/1968

第1948話、基地強襲


 サウス・カラビナスの町は1000人規模の町だが、シーパング同盟軍の基地があった。

 地底世界で、敵がいないにも関わらず、これだけの施設があるということは、守る必要のあるものがそこにあるということでもある。


 町に侵入した大型トレーラー三台は、頻繁にある曲がり道に自然と速度を落とさざるを得なかった。

 カラビナス基地は、中央通りを真っ直ぐ行けば辿り着けるようにはできていなかったのだ。

 もちろんそれには理由があるが、敢えて交通に不便に作った町というのが、ある種の人間たちにとっては注意を引くに充分であった。


「正面から突っ込めないというのは、こういう時不便なものだ」


 グーワィは防弾ベストを身につける。後ろを見れば、すでに黒装束をまとう戦士たちが、魔石銃や刀剣の最後の確認をしていた。

 運転手が声を張り上げた。


「基地正面入り口! 右方向です!」


 わずかなブレーキがトレーラーにかかる。元々スピードは出ていなかったが、車内にわずかな慣性がかかる。


『ここは駐車禁止区画ですが――』


 外から警備の兵士が声をかけてきた。しかし助手席にいた者の返答は、消音器付き魔石拳銃だった。


『うわっ!?』

「突入!」


 グーワィが短く叫び、待機していた黒装束姿の戦闘員が飛び出した。そこはカラビナス基地の正面入り口。すっかり場は暗くなり、基地の照明がポツポツと光っていた。


 その瞬間、基地に警報が鳴り響いた。

 入り口詰め所にいた兵が警報のボタンを押したのだ。わずかに遅れて戦闘員の一人が詰め所にマシンガンを撃ちまくり、兵を射殺した。ガラスが砕け、警備兵が倒れる。


「間に合いませんでした!」

「構わない。突入!」


 グーワィはまったく怯むことなく言い放った。

 トレーラー三台から、わらわらと戦闘員が飛び出し、カラビナス基地敷地内へ侵入する。


「正面、ゴーレム!」


 基地建物前、入り口を守る哨兵として置かれたアイアンゴーレムが二体、ゆっくりと前進する。

 その間に、建物から武装した兵が次々に現れた。


「さすがに警備の反応が早い」


 地方の小基地ではなく、重要なものを守るために臨戦態勢にある基地ということだ。黒装束の戦闘員たちは魔石銃で、基地兵と撃ち合う。あちらもまた同盟軍式ライトニングバレットMk-11で反撃してくる。

 頑丈なゴーレムが前に出て、魔弾を弾きながら侵入者に迫る。遮蔽に身を隠し、基地兵を狙撃するグーワィ。


「ゴーレムが邪魔だな」


 そして彼は振り返る。


「マジックロッド!」


 戦闘員が魔法杖によく似たそれをゴーレムに向けた。次の瞬間、大砲級の魔弾が放たれ、アイアンゴーレムを吹き飛ばした。

 マジックロッド――使い捨ての魔弾発射機。一発しか撃てないが、門やゴーレム、戦車など装甲物を破壊する歩兵携帯用武器である。

 ゴーレムを破壊した爆発のあおりをくらって倒れる基地兵が数人。しかし建物からは、わらわらと敵兵が現れる。


「グレネード!」


 戦闘員たちは魔石手榴弾を投げつける。連続した爆発が基地兵を薙ぎ倒す。


「行け! 行け! 行けっー!」


 前進する戦闘員。だがその先頭が突然、胴を撃たれて倒れた。パーンと銃声が、騒音の中に混じって聞こえた。


「狙撃だ!」

「屋上に狙撃兵!」


 同盟軍スナイパーの攻撃。機関銃持ちの戦闘員が基地狙撃兵の潜んでいる辺りに銃弾の雨を叩き込む。さすがの狙撃手も伏せただけでは危ないと後退する。


「今のうちだ!」


 グーワィは足に加速魔法をかけて、基地建物へと駆けた。戦闘員の何人かも加速魔法で一気に建物入り口までたどり着く。

 しかしそこにはすでに即席のバリケードができていて、基地兵が待ち構えていた。

 ライトニングバレットに加え、重機関銃まで配置された即席陣地が、戦闘員たちを撃つ。特に重機関銃は壁をも容易く貫通し、隠れていた戦闘員を撃ち殺した。

 グーワィはその場に伏せ、重機関銃の弾幕の下でかろうじて助かった。


「我が弾に込めし、混沌なる魂――」


 伏せたままグーワィはバトルライフルを構えて、呪文を呟く。


「我は刃、我は弾丸。生者を喰らう者。すなわち死神なり」


 引き金を引く。放たれた銃弾はバリケードに突き刺さると大爆発を起こした。銃を撃っていた者、装填していた者、予備の武器を運んできた者を、等しく全滅させた。

 戦闘員たちが建物内に飛び込む。バリケードの先は、ほぼ個人か、二、三人程度の兵、もしくはスタッフばかりだったが、黒装束は魔石拳銃や刀で、次々に基地兵を仕留めていった。


『グーワィ様、こちら三班です』


 トレーラーを守る戦闘員から念話が届く。


『敵の数が多すぎます! ここは支えきれません!』

「わかった。基地に来い。こちらと合流しろ」

『了解――うわっ』


 念話が途絶えた。基地の外にも敵兵――青エルフが武装して向かってきている。この町の住民は全部兵士かもしれない――という前情報はもしかしたら本当なのかもしれない。


 ――それだけここに重要なブツがあるということだ。


 グーワィは基地内を進む。正面の守りさえ突破すれば、あとは雑兵ばかり。特殊作戦用の戦闘員であれば、各個撃破も容易い。


「第二班、入り口を守れ。第一班、地下に向かう」


 正面に立ち塞がるは鋼鉄の重々しいゲート。この扉の先は地下へのエレベーターがあり、その先に、グーワィたちが求めるモノが保管されている。

 十年前の遺物。世界を滅ぼす可能性を秘めた異物が。

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