35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 77
なぜか、いつのまにか、このメンバーの中で、リーダーシップを取っている…
しかも、違和感なく、リーダーシップを取っている…
3歳の子供にしか、見えんにも、かかわらず、リーダーシップを取っている…
だから、凄い…
やはり、アラブの至宝は、凄いと、私は、思った…
思ったのだ(笑)…
が、
葉敬は、違った…
違った意見を言った…
「…さすがだね…アムンゼン君…」
と、言って、違う意見を出した…
「…なにが、さすがなんですか? …葉敬さん?…」
「…だって、アムンゼン君…キミだって、サウジアラビアの王族だろ?…」
「…ボクが、王族? どうして、そう思うんですか?…」
「…だって、王族のオスマンさんと、いつもいっしょに、いるんだろ? だったら、キミも王族に違いない…」
「…ご冗談でしょ? ボクは、ただの平民です…王族なんて、そんなに偉い存在じゃ、ありません…」
「…だったら、なぜ、王族のオスマンさんと、アムンゼン君は、いつも、いっしょにいるの?…」
「…両親が、オスマンさんと知り合いなんです…」
「…知り合い?…」
「…そうです…だから、サウジアラビアから、遠く、この日本にやって来たボクの面倒を、オスマンさんは、両親に代わって、見てくれているんです…」
「…だったら、アムンゼン君のご両親は、今、日本にいないの? ご両親は、なにをやっているの…」
葉敬が、立て続けに、アムンゼンを質問責めにする…
すると、それを見かねたバニラが、
「…ちょっと、葉敬…」
と、口を挟んだ…
「…なんだ? …バニラ?…」
「…いくら相手が子供でも、そう根掘り葉掘りするものじゃ、ないでしょ? アムンゼン君も、さっきから、困っているわ…」
バニラに言われて、葉敬も、我に返ったというか…
大人の自分が、子供のアムンゼンに対して、あまりに、露骨に、根掘り葉掘りしていることに、今さらながら、気付いた…
「…これは、うっかりした…サウジアラビアの王族のオスマンさんと知り合いだというから、つい…」
と、葉敬…
「…根掘り葉掘りして、すまなかった…」
と、葉敬は、アムンゼンに詫びた…
葉敬は、アムンゼンに、頭を下げて、詫びた…
「…いえ…」
と、アムンゼンは、一言…
次いで、
「…葉敬さんの言われることは、わかります…」
と、告げた…
「…わかる? …なにが、わかるの?…」
と、葉敬…
「…ボクを、王族と間違えたことです…」
「…」
「…王族のオスマンさんと、いつも、いっしょに、いれば、ボクも、王族と思うのは、当然です…」
「…」
「…でも、残念ながら、ボクは、王族では、ありません…」
アムンゼンが、否定する…
私は、その様子を見ながら、このアムンゼンは、よくもこう自信を持って、ウソを言えるものだと、感心した(笑)…
そして、それは、おそらく、バニラも、同じ…
同じだった…
アムンゼンの正体を知っている、バニラも同じだったに違いない…
が、
にもかかわらず、バニラを見ると、バニラは、すましていた…
私は、なにも知らないとでも、いうような顔をしていた…
私は、そんなバニラの態度にも、驚いた…
驚いたのだ…
まさか、このバニラに、そんな芸当が、できるとは、思わんかった…
私の天敵、バカ、バニラに、こんな真似ができるとは、思わんかったのだ…
そして、もう一人…
この車内にいる、もう一人の大人…
リンを見た…
リンの表情を見た…
リンが、どんな表情をしているのか?
興味があったからだ…
リンは興味津々だった…
明らかに、興味津々な様子で、アムンゼンと、葉敬のやり取りを、見ていた…
誰が、見ても、わかるほど、興味津々な表情で、アムンゼンと、葉敬のやり取りを、見ていた…
いや、
葉敬ではない…
アムンゼンを見ていた…
おそらく、王族のオスマンと、親交があるというアムンゼンを見ていた…
王族と親交があるということが、たぶん、彼女の興味を引いたに違いない…
私は、そう見た…
私は、そう睨んだ…
そして、私が、そう思って、彼女を、見ていると、
「…なにを見ているの? 35歳のシンデレラ…」
と、いきなり、私に呼びかけた…
私は、仰天した…
たしかに、私は、35歳のシンデレラと呼ばれたが、それは、半年前のこと…
葉尊と結婚した半年前のことだからだ…
日本の平凡な家庭出身の女である、私が、台湾の大財閥の御曹司の葉尊と結婚した…
それを、評して、世間が、私を、
「…35歳のシンデレラ…」
と、呼んだ…
それは、私が、35歳だから…
だから、そう呼んだ…
が、
それは、半年前…
葉尊と結婚した半年前のことだ…
近頃、そう呼ばれたことは、ない…
今の時代、半年前は、遠い過去…
遠い過去の話だからだ(笑)…
だから、私は、驚いて、
「…よく、知っているな…」
と、聞いた…
「…なにを、言っているの? …お姉さん…昨日、会ったとき、言ったでしょ?…」
リンが、笑う…
私は、それを、聞いて、思い出した…
昨日、リンと初めて会ったとき、リンが、
私を、
「…35歳のシンデレラ…」
と、呼んだことを、思い出した…
今の今まで、昨日、このリンに会ったとき、
「…35歳のシンデレラ…」
と、呼ばれたことを、すっかり、忘れていた(苦笑)…
要するに、このリンは、調べていた…
今回、同伴した葉敬のこと…
葉敬のみならず、葉敬の周囲の人間をも、調べていた…
だから、葉敬の実子の葉尊の妻である、私のことも、調べていた…
そういうことだ…
そして、そのリンが、今や、アムンゼンに興味津々…
これは、実に意味深…
意味深だった…
だから、私は、直球で、
「…リンとやら…」
と、声をかけた…
「…なに? …お姉さん?…」
「…オマエ…アムンゼンに興味津々のようだな…」
私は、言ってやった…
わざと、言ってやった…
が、
リンは、私の発言を軽く、受け流した…
「…それは、お姉さん…当然でしょ?…」
「…なにが、当然なんだ?…」
「…だって、そのオスマンって、サウジアラビアの王族なんでしょ?…」
「…そうさ…」
「…だったら、そんな凄いひとと、知り合える機会なんて、滅多にあるものでも、ないでしょ? 葉敬じゃなくても、会いたくなるのが、当たり前…」
リンが、当然のように、言う…
そう言われると、私も言葉もなかった…
どう言っていいか、わからんかった…
リンの言うことは、正論…
誰が、聞いても、当たり前のことだったからだ…
サウジアラビアの王族…
そんな凄い人間と知り合う機会など、普通は、滅多にあるものでは、ないからだ…
そして、それを、思うと、さっき、このリンが、言ったことを、思い出した…
アラブの実力者と、会いたいと言ったことを、思い出した…
だから、
「…良かったな…リン…」
と、私は、リンに呼びかけた…
「…エッ? …良かった?…」
リンが、戸惑った…
「…そうさ…だって、オマエは、アラブの実力者と会いたいんだろ?…」
「…それは…」
「…アラブの至宝と呼ばれるほどの、実力者では、ないかも、しれんが、あのオスマンだって、サウジアラビアの王族さ…きっと、偉いに違いないさ…」
「…お姉さん…オスマンさんを知っているの?…」
「…知ってるさ…」
「…どんなひと?…」
「…どんなひとと、言っても…」
私は、しばし、考え込んだ…
それから、
「…長身のイケメンさ…」
と、答えた…
「…長身のイケメン?…」
「…そうさ…背が高くて、いい男さ…」
私が、答えると、リンが、考え込んだ…
今さっきの私同様しばし、考え込んだ…
その様子を見た、バニラが、
「…リンさん、どうしたの?…」
と、聞いた…
そして、笑いながら、
「…イケメンは、嫌い?…」
と、聞く。
もちろん、冗談だ…
イケメンを嫌いな女は、いないからだ…
これは、美人が、嫌いな男がいないのと、同じ…
同じだ(笑)…
が、
リンは、バニラの質問に答えなかった…
なにも、言わんかった…
だから、余計に、怪しいというか…
その様子を見た、アムンゼンが、
「…リンさんは、イケメンが、お嫌いですか?…」
と、聞いた…
もちろん、冗談だ…
イケメンが、嫌いな女が、この世の中に、いるはずが、ないからだ…
が、
しかしながら、アムンゼンの質問にも、リンは、答えんかった…
答えんかったのだ…
これは、意外…
まさに、意外だった…
こんなときは、誰もが、
「…ハイ…」
とか、
「…ええ…」
とか、言えば、すむ話だからだ…
だから、余計に、リンに注目が集まった…
車内の注目が集まった…




