35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 76
が、
私をそんな感じで、リンを見ていると、
「…それは、ホントね…」
と、誰かが、言った…
声の主は、マリアだった…
私は、なにが、ホントなのか?
悩んだ…
考えた…
すると、マリアが、
「…パパにオスマンを紹介するのは、ホントね…」
と、続けた…
それを、聞いた、葉敬は、
「…マリア…オスマンって、オスマンさんを知っているの?…」
と、優しく、聞く…
「…うん、知ってるよ…」
と、マリア…
「…いつも、このアムンゼンと、いっしょに、いるよ…」
その言葉を聞いて、葉敬が、
「…なんだ…そうだったんだ…」
と、明るい声を出した…
「…そんなに、仲がいいなら、簡単に紹介して、もらえるよね…」
葉敬が、アムンゼンに言う…
さすがに、そこまで、言われては、アムンゼンとしても、葉敬にオスマンを紹介しないわけには、いかなかった…
さすがに、できんかった…
すると、だ…
葉敬が、
「…善は急げだ…」
と、呟いた…
「…早速だが、このアムンゼン君に、オスマンさんを紹介してもらおう…」
葉敬が、思いがけないことを、言う…
まさか…
まさか、そういう展開になるとは、夢にも、思わんかった…
思わんかったのだ…
私を含む、その場にいる全員が、呆気に、取られて、葉敬を見た…
驚いて、葉敬を見た…
が、
葉敬は、平然としていた…
それを、見た、バニラが、ただ一人、
「…これから、ディズニーランドに行くんじゃ…」
と、控えめに言った…
これは、当たり前…
当たり前だった…
みんなで、ディズニーランドに行くために、このロールスロイスに乗っているのだ…
久々に、台湾から、来日した葉敬が、日本に滞在する愛人のバニラと、娘のマリアと、いっしょに、親子水入らずで、ディズニーランドに行く…
それを、バニラは、楽しみにしているのは、明らかだった…
が、
葉敬は、
「…それは、わかっている…」
と、言ったが、その後に、
「…でも、私の日本の滞在時間は、短い…それが、今、サウジアラビアの王族の方と、会えるチャンスを得た…ディズニーランドに行くのは、バニラとマリアには、すまないが、またできることだ…だが、サウジアラビアの王族の方と、出会えるチャンスは、今だけだ…」
葉敬が、言う…
迷いなく、言う…
私は、それを、見て、つくづく、この葉敬は、ビジネスマンだと、思った…
商売人だと、思った…
が、
同時に、それだから、葉敬が経営する台北筆頭が、葉敬一代で、台湾を代表する会社になったと、思った……
葉敬が、台湾の教科書に載るほどの、大きな会社になるほどのことが、できたと、思った…
どんなときも、ビジネスを優先する…
それが、徹底できなければ、会社を大きくすることなど、できないからだ…
そして、私が、そんなことを、考えていると、葉敬が、アムンゼンに、
「…では、アムンゼン君…どこに、行けばいい?…」
と、聞いた…
これには、私も驚いたが、当たり前だった…
オスマンに会うには、このアムンゼンに聞くしかないからだ…
しかしながら、アムンゼンは、戸惑った…
見るからに、狼狽している様子は、火を見るよりも明らかだった…
葉敬が、アムンゼンに
「…オスマンを紹介してくれ…」
と、言い、アムンゼンが、了承しても、それが、今すぐ、これから、オスマンに会わせてくれという意味だとは、思いもしなかったで、あろうことは、誰の目にも、明らかだった…
狼狽したアムンゼンは、少し戸惑った声で、
「…今から?…ですか?…」
と、言った…
暗に、葉敬を非難しているのは、明らかだった…
しかしながら、葉敬は、少しも気にしていない様子だった…
「…当然だよ…善は急げと言うし、時は金なりとも言う…大切なことは、なにより、早く行動しなくちゃ、ダメだ…チャンスを逃してしまうからね…」
葉敬が、しみじみと言う…
「…大事なのは、まず、行動することだ…後回しにしちゃ、ダメだ…誰かに、そのチャンスを奪われてしまうかも、しれないし、チャンスは、もしかしたら、その一回限りかも、しれない…」
「…チャンスが、その一回限りって?…」
バニラが、口を挟む…
「…もしかしたら、そのオスマンさんのようにサウジアラビアの王族の方と出会えるチャンスは、これが、私の人生で、最初で、最後のチャンスかも、しれない…これは、リンさんも、同じでしょ?…」
「…どういうことですか?…」
と、いきなり、葉敬に話を振られた、リンは、アムンゼン同様、戸惑った様子で、葉敬に聞いた…
「…リンさんのような、芸能人も、同じってことですよ…ほら、芸能事務所に、所属していれば、仕事は、回ってくるかも、しれないが、同じ仕事は、なかなか、回ってこないでしょ?…」
「…それは…」
「…そして、その仕事を受けて、ブレイクした人間も稀にいるでしょ?…」
「…」
「…だから、チャンスと思えば、自ら、率先して、受けなければ、ならない…もしかしたら、そんなチャンスは、二度と、自分に巡って来ないかも、しれない…」
葉敬が、しみじみと、言う…
そして、
「…これは、アムンゼン君も同じだよ…」
と、今度は、いきなり、アムンゼンに話を振った…
「…なにが、同じなんですか?…」
「…キミが、大人になって、女性とデートしたときも、同じだって、ことさ…」
「…どういう意味ですか?…」
「…キミが、将来、物凄い美人と知り合って、偶然、その美人とデートできたりする…そしたら、そのチャンスを逃しちゃ、ダメさ…」
「…どういう意味ですか?…」
「…たまたま、その美人が、暇だったから、キミの誘いに、応じただけなのかも、しれない…でも、失礼ながら、キミに限らず、ほとんどの男には、そんな美人とデートできるチャンスは、あまりない…」
「…」
「…だから、そのチャンスを逃しちゃ、ダメさ…いっしょにデートして、面白いひととか思ってもらい…とにかく、もう一度会ってみたいと思わせなければ、ダメさ…」
「…」
「…これは、女性も同じでしょ?…」
と、葉敬は、言って、なぜか、葉敬は、私に向かって、
「…女性なら、こんなイケメンと付き合いたい…結婚したいと、思わせる男が、現れたら、やはり、アタックすべきだ…」
「…」
「…それで、ダメだったら、諦める…なにもしないで、見ているだけじゃ、ダメだ…まずは、行動を起こすことだ…」
葉敬が、力説する…
それを、聞いたバニラが、
「…葉尊は、イケメンよ…」
と、いきなり、言った…
が、
葉敬は、自分の息子にも、限らす、
「…例えだ…例え…」
と、バニラに笑って言う…
「…葉尊が、イケメンであろうと、なかろうと、関係ない…」
と、あっさりと言う…
これは、やはりというか…
この葉敬、葉尊父子に確執があるのは、明らかだった…
たぶん、二人とも、互いに嫌っている…
あるいは、嫌いと言わないまでも、好いてはいない…
そういうことだろう…
そういう二人の関係だろう…
私は、あらためて、そう思った…
思ったのだ…
「…で、アムンゼン君…オスマンさんを紹介してくれるね…」
葉敬が、しつこく、言う…
傍から見ても、あまりにしつこい葉敬だった…
しつこすぎる葉敬だった…
が、
何度も言うように、だから、葉敬は、成功したのだろう…
台湾の教科書に載るほどの成功をしたのだろう…
他人と同じことを、していては、成功は、難しい…
他人を出し抜くことが、まずは、大切…
あるいは、
他人を嫌がることを、率先して、やることが、大切だからだ…
だから、今のように、明らかに、アムンゼンが、嫌がっているにも、かかわらず、強引に、オスマンに、会おうとする…
たしかに、この葉敬が、言うように、オスマンのように、サウジアラビアの王族と知り合う機会など、滅多にあるものではない…
それが、今、会う機会を得た…
ならば、行動するのみ…
とにかく、すぐに、行動するのみだからだ…
私は、思った…
私は、思ったのだ…
すると、アムンゼンが、ようやく、口を開いた…
オスマンに会わせろと、しつこく要求する、葉敬に根負けしたアムンゼンが、口を開いた…
「…とりあえず、サウジアラビア大使館に…」
と、口を開いた…
「…サウジアラビア大使館?…」
葉敬が、口に出す…
あまりに、意外な場所だったからだ…
「…そうです…日本のサウジアラビア大使館です…」
と、アムンゼンが、続ける…
「…どうして、サウジアラビア大使館なの?…」
葉敬が、アムンゼンに、優しく、聞く…
「…それは、オスマンさんが、サウジアラビアの王族だからです…」
「…王族だから、どうだと言うの?…」
「…サウジアラビアの大使館のお偉いさんと、親しい…」
「…」
「…正直、王族でも、千差万別…現国王に近い王族もいれば、そうでない王族もいます…ですが、オスマンさんは、現国王に近い存在の王族…」
「…」
「…だから、サウジアラビア大使館に行って、オスマンさんの居所を聞くのが、一番…オスマンさんは、日本のサウジアラビア大使館の大使とも、親しいと、聞いています…」
「…でも、アムンゼン君は、いつも、オスマンさんといっしょに、いるんじゃ…」
「…いつもでは、ありません…」
「…エッ?…」
「…だって、今は、この通り、いっしょじゃ、ないでしょ?…」
そう、アムンゼンに言われると、葉敬も、一言も反論できなかった…
「…とりあえず、サウジアラビア大使館に行きましょう…すべては、それからです…」
アムンゼンが、告げる…
ふと、気が付けば、いつのまにか、この車内のメンバーの中で、葉敬にとって代わって、このアムンゼンが、指示を出していた…
3歳にしか、見えんアムンゼンが、先頭に立って、皆に指示を出していた…
もしや、これが、アラブの至宝の実力か?
と、私は、思った…
私は、考えた(笑)…




