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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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74/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 74

そして、アムンゼンの説得を聞いて、リンは、考え込んだ…


 「…」


 と、考え込んだ…


 それを、見た、アムンゼンが、追い打ちをかけるように、


 「…ここにいる、葉敬さんは、台湾の大実業家…台湾の教科書にも載る、名経営者です…当然、人脈は、広い…そして、葉敬さんの隣のバニラさんは、有名なスーパーモデル…リンさんもご存じでしょ?…」


 「…ええ…」


 「…二人とも、凄い人脈を、持っていますよ…だから、このお二人に話せば、もしかしたら、力になってくれるかも、しれませんよ…」


 アムンゼンが、熱心に説得する…


 が、


 その説得は、リンの心に、響かなかった…


 「…坊やの言うことは、わかる…」


 と、リンが、力なく、呟く…


 「…でも、私が、欲しいのは、アラブ世界の力…」


 「…アラブ世界の力…ですか?…」


 と、アムンゼン…


 「…別の言い方をすれば、アラブ世界の人脈…」


 と、リン…


 「…アラブ世界の人脈…」


 「…アラブ世界に精通していなければ、力になれない…」


 「…」


 「…ごめんなさい…坊やが、せっかく、言ってくれてるのに…」


 そう、言われると、アムンゼンは、なにも、言えんかった…


 「…」


 と、一言も、言えんかった…


 が、


 突然、バニラが、


 「…オスマン…」


 と、声を上げた…


 「…オスマン?…」


 と、アムンゼン…


 ビックリした様子だった…


 「…だって、オスマンは、サウジアラビアの王族でしょ?…」


 バニラが、言う…


 アムンゼンを見て、言う…


 しかしながら、それを、聞いて、真っ先に声を上げたのは、リンでは、なかった…


 葉敬だった…


 「…バニラ…オマエ、サウジアラビアの王族の方と知り合いなのか?…」


 と、驚いた…


 「…どうして、知り合ったんだ?…」


 と、葉敬が、聞く…


 当たり前だった…


 「…そんな偉い方と、知り合いなんて…」


 と、葉敬が、続ける…


 「…実に、幸運だ…」


 と、葉敬…


 「…だが、一体、どうやって、知り合ったんだ?…」


 葉敬の質問にバニラが、黙った…


 すぐには、答えれんかった…


 葉敬には、黙っていたからだ…


 このアムンゼンの正体や、オスマンのことを、黙っていたからだ…


 隠していたからだ…


 だから、少し考え込んでから、いきなり、


 「…お姉さんが…」


 と、私を名指しした…


 …エッ?…


 …私?…


 私は、焦った…


 焦ったのだ…


 当たり前だった…


 ここで、私の名前が出るとは、夢にも、思わんかったからだ…


 が、


 私の名前が出たのを、聞いて、今度は、葉敬が、考え込んだ…


 「…そう言えば、お姉さんの力で、我が台北筆頭も日本のクールも、アラブ世界で、急速に、製品の売り上げが、伸びた…それは、お姉さんの人脈によるもの? …そのオスマンというサウジアラビアの王族の方と、知り合いだったから、売り上げが、伸びたということですか?…」


 葉敬が、聞く…


 この矢田に聞く…


 私は、どうして、いいか、わからんかった…


 わからんかったのだ…


 だから、つい、すがるように、アムンゼンを見た…


 アラブの至宝を見た…


 が、


 アラブの至宝は、いきなり、私から、目をそらした…


 目をそらして、別の方向を見た…


 …コイツ! 許せん!…


 私は、思った…


 これまで、さんざん、この矢田が、面倒を見て、あげたにも、かかわらず、目をそらすとは…


 許せん!


 許せんのだ!…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 が、


 いつまでも、考えているわけには、いかんかった…


 葉敬の質問に、答えなければ、いかんからだ…


 私は、少し、考えて、


 「…マリアの保育園で…」


 と、言った…


 「…マリアの保育園で、どうしたんですか? お姉さん?…」


 「…あの保育園は、この日本に滞在する、世界中のセレブの子弟が、通っています…そこで、知り合ったんです…」


 私の答えに、葉敬は、少し、


 「…」


 と、考え込んだ…


 考え込んでから、


 「…なんだ? そういうことだったんですか?…」


 と、陽気に笑った…


 「…そうです…そういうことだったんです…」


 と、私。


 「…バニラさんが、仕事で忙しいから、私が、バニラさんの代わりに、マリアの通う保育園に行って、それで、知り合ったんです…」


 と、言ってから、アムンゼンを見た…


 わざと、見た…


 「…それで、このアムンゼン君とも、親しくなって…」


 「…アムンゼン君と?…」


 と、葉敬…


 「…そのオスマンさんは、このアムンゼン君の保護者らしいです…たしか、叔父さんか、なにかだと、聞いています…」


 と、私は、葉敬に言ってやった…


 わざと、言ってやった…


 すると、途端に、アムンゼンが、当惑した…


 明らかに、驚いた顔で、私を見た…


 その顔を見ると、


 「…オマエ…なんで、そんなことを、言うんだ…」


 とでも、いう顔で、私を見た…


 当然ながら、葉敬は、アムンゼンに、


 「…それは、本当かい? アムンゼン君?…」


 と、聞いた…


 聞いたのだ…


 が、


 アムンゼンは、ビックリして、どう答えて、いいか、わからん様子だった…


 いかに、アラブの至宝でも、いきなりでは、この事態に、どう対応して、いいか、わからん様子だった…


 アムンゼンが、ビックリして、どう答えて、いいか、わからん様子を見て、葉敬が、さらに、


 「…どうなんだね? …アムンゼン君?…」


 と、重ねて、聞いた…


 真剣な調子で、聞いた…


 熱心な調子で、聞いた…


 これは、葉敬の立場から、いえば、当然…


 当然だ…


 サウジアラビアの王族と知り合うことが、できるのだ…


 ビジネス上の大きなチャンスを掴むことが、できるからだ…


 ビジネス上の大きなチャンス=人脈を掴むことができるからだ…


 だから、アムンゼンが、子供にしか、見えんにも、かかわらず、熱心に聞くのが、当然だった…


 当然だったのだ…


 葉敬が、あまりにも、熱心に聞くから、アムンゼンも、


 「…ハイ…」


 と、小さく、頷いた…


 とてもではないが、この状態で、否定することは、不可能だった…


 葉敬の圧が凄かったからだ(笑)…


 いや、


 凄すぎたからだ(爆笑)…


 だから、答えんわけには、いかんかった…


 まして、この場で、否定することなど、できんかった…


 否定すれば、私やバニラが、なにを言い出すか、わからんからだ…


 だから、否定するわけには、いかんかった…


 アムンゼンは、


 「…ハイ…」


 と、小さく葉敬に答えた後、この矢田を物凄い目で、見た…


 ずばり、睨みつけた…


 が、


 私は、ビビらんかった…


 …ざまあ、見ろ!…


 と、言ってやりたかった…


 この矢田から、目をそらした罰さ…


 と、言ってやりたかった…


 が、


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…アムンゼン君…そのオスマンさんを、私に紹介してくれないかな…」


 と、葉敬が、いきなり、言い出した…


 「…ぜひ、頼むよ…」


 葉敬が、いきなり、アムンゼンに頭を下げた…


 60歳前後の葉敬が、3歳の幼児にしか、見えないアムンゼンに頭を下げた…


 さすがに、この事態に、アムンゼンは、どうして、いいか、わからんかった…


 だから、助けを求めるように、私やバニラを見た…


 交互に見た…


 が、


 私は、なにも言ってやらんかった…


 これは、バニラも、同じだった…


 私は意地悪で、言ってやらんかったが、バニラは、違う…


 おそらく、アムンゼンが、偉過ぎるから、どう言っていいか、わからんかったのだ…


 実は、こういうときは、このバニラの方が、この矢田よりも、常識がある(笑)…


 それは、バニラは、スーパーモデルで、世界中を飛び回っているからだ…


 だから、世界中の色々な人間と接している…


 それゆえ、こういうときは、黙るのが、一番と、わかっている…


 十分、わかっているからだ…


 さらに言えば、アムンゼンとの関係…


 正直、私の方が、バニラよりも、アムンゼンと、仲がいい…


 だから、アムンゼンに親しく接することが、できる…


 要するに、距離間が、近いのだ…


 バニラは、アムンゼンを常に、


 「…殿下…」


 と呼び、敬っている…


 が、


 それは、別の言い方をすれば、距離を置いているということだからだ…


 私が、


 「…おい、アムンゼン…」


 と、呼び捨てにするほど、バニラは、親しくないということだ…


 だから、余計に、なにか、言えんかった…


 この矢田のように、アムンゼンと親しくないから、余計に、言えんかったのだ…


 アムンゼンを見ると、明らかに、当惑していた…


 明らかに、動揺していた…


 私は、それを見て、実に、面白かった…


 実に、愉快だった(笑)…


 この矢田に嫌がらせをするからだと、思った…


 そして、アムンゼンが、どうするかと、興味深げに見ていると、いきなり、マリアが、


 「…アムンゼン…パパが、聞いているでしょ? さっさと、答えなさいよ!…」


 と、怒鳴った…


 大声で、怒鳴った…


 そして、それが、とどめだった…


 アムンゼンの行動に、とどめを刺した…


 「…わかったよ…マリア…」


 と、力なく、アムンゼンが、呟いた…


 アラブの至宝が、呟いた…


 いわば、マリアに白旗を上げたのだ…


 アラブの至宝といえども、女には、勝てない…


 自分の好きな女には、勝てない…


 それが、わかった瞬間だった(爆笑)…


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