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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 7

 まさか?…


 まさか?…


 ここで、お義父さんの名前が出るとは、思わんかった…


 夢にも、思わんかった…


 っていうか?


 キャンペーンガールの名前が、出てきて、いきなり、お義父さんの名前が、出てくるとは、思わんかった…


 思わんかったのだ…


 正直、頭がパニクった…


 いきなりの展開に、頭がついていかんかった…


 だから、口から出た言葉は、


 「…なぜだ? …どうしてだ?…」


 だった…


 「…どうして、お義父さんは、球団を買収するんだ?…」


 「…いえ、まだ決定事項では、ありません…」


 「…なんだと? まだ、決まってないのか?…」


 「…ハイ…ただ、葉敬も、台湾の旧知の財界人から、頼まれているので、断りづらいのです…」


 「…断りづらい?…」


 「…誰だって、そうでしょ? 誰かに頼まれて、すぐに、拒否の返事は、できないときもある…仮に、断るとしても、ある程度、時間を置いて、断るほうが、よいときもある…」


 「…」


 「…葉敬は、台湾屈指の財界人です…だから、余計に相手の立場を考える…」


 「…相手の立場?…」


 「…球団買収の話を持ってきた財界人に、すぐに、拒否をすれば、相手の面子を潰すことになりかねない…」


 「…」


 「…だから、余計に対応に苦慮する…」


 「…そうなのか?…」


 「…そうです…例えば、これは、男女でも、同じでしょ?…」


 「…同じ? …どう同じなんだ?…」


 「…例えば、男女が、知り合って、少し経って、いきなり、付き合って下さいと、告白して、すぐに、その場で、嫌です、と、返事をすれば、相手も、傷つく…」


 「…それは?…」


 「…でしょ?…」


 「…だから、2,3日、してから、アレ、色々考えたんだけれど、やっぱりとでも、言って、断れば、すぐに、断るよりも、体裁がいいというか…ホントは、最初から、嫌だったんだけれども、2,3日考えたフリをした方が、いいときもある…葉敬もそれと、同じです…」


 「…そうか?…」


 「…ただ…」


 「…ただ、なんだ?…」


 「…葉敬は、商売人です…」


 「…商売人…どういう意味だ?…」


 「…今、言った三星球団の買収…買収した方が、得か? あるいは、買収しない方が、得か? 色々、考えている…だから、結論が出るまで、すぐに、返事をしない…」


 「…そうなのか?…」


 「…とりわけ、リンです…」


 「…リンが、どうかしたのか?…」


 「…彼女は、台湾で、絶大な人気がある…」


 「…そうなのか?…」


 「…ハイ…だから、アムンゼン殿下も知ったのです…」


 言われてみれば、その通り…


 その通りに違いなかった…


 有名でなければ、アムンゼンに知られるわけはない…


 きっと、ネットで、知ったに決まっている…


 今の時代、テレビや雑誌よりも、ネット…


 まずは、ネットで、知られることが、大切…


 ネットでさえ、有名になれば、テレビや雑誌に出ずとも、有名になれる…


 世間に知られることが、できるからだ…


 だから、テレビや雑誌も、往時の勢いはない…


 それが、理解できないのは、おそらく五十代以上のオジサンたち…


 テレビや出版社に勤めるオジサンたちだ…

 

 もちろん、彼らも、往時の勢いは、ないことは、わかっている…


 しかしながら、彼らは、それほど、テレビや雑誌が、凋落したと、思っていない…


 それが、いわゆる、若手…


 二十代や、三十代前半の若手たちに比べ、意識の差があるということだ(爆笑)…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…そして、リンです…」


 と、葉問が続けた…


 「…葉敬が、三星球団を買収するか、どうかも、実は、彼女が関係している…」


 「…彼女が、関係しているだと?…」


 「…ハイ…」


 「…どうしてだ? どうして、リンが、お義父さんの球団買収に関係するんだ?…」


 「…彼女の人気は、凄まじい…正直、そのおかげで、三星球団の価値も上がっている…」


 「…」


 「…もっとも、だから、三星球団の方は、今が、売り時と考えているんでしょう…彼女の人気も、いつまで、続くか、わからない…だから、彼女の人気が、あるうちに、球団を売却したいのでしょう…」


 「…そうか?…」


 「…そのおかげで、余計に台湾では、誰が、

三星球団を買収するか、話題になっている…きっと、アムンゼン殿下は、その記事を偶然、ネットで、見たんでしょう…」


 葉問が、アムンゼンが、リンを知った背景を、そう説明した…


 たしかに、あのアムンゼン…


 アラブの至宝と呼ばれるほどの頭脳の持ち主だ…


 世界中の情報を得ているだろう…


 それには、当然、台湾も含まれる…


 当たり前のことだ…


 それになんといっても、あのリンという女…


 ものすごい美人だ…


 たしかに、この矢田も、男なら、夢中になるかも、しれん…


 この矢田トモコも、男なら、夢中になるかも、しれん…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 そして、そんなことを、考え続けていると、


 「…どうしたんですか? お姉さん…そんなに、考え込んで…」


 葉問が、聞いた…


 「…いや、そのリンという女…たいそうな美人だと、思ってな…」


 「…それは、そうでしょう…彼女は、今、アジアの三大美女の一人です…」


 「…アジアの三大美女? なんだ、それは?…」


 「…中国のディリラバ、日本の佐々木希…そして、台湾のリン…彼女たち三人を称して、そう呼ばれているんです…」


 「…そうか…」


 私は、言った…


 深く、頷いた…


 たしかに、そう、言われれば、わかる…


 わかる…


 納得する…


 「…だからこそ、葉敬も悩んでいるのだと、思います…」


 葉問が、力を込める…


 私は、その言葉を聞いて、納得したが、同時に、吹き出しそうになった…


 なぜ、吹き出しそうになったのか?


 それは、リン…


 リンというチアガールの存在が、三星球団の価値を高めているという事実だ…


 プロ野球球団だ…


 普通は、選手だろう…


 あるいは、監督だろう…


 それが、その球団に属するチアガールとは?


 試合もしないチアガールの存在が、球団の価値を高めるなんて…


 前代未聞…


 聞いたことのない珍事だった…


 だから、笑えた…


 思わず、吹き出しかけた…


 そして、私の考えが、表情に出たのだろう…


 葉問が、


 「…どうしました? …お姉さん?…ボクが、今、なにか、おかしなことを、言いましたか?…」


 と、真顔で、聞いた…


 私は、


 「…言ったさ…」


 と、言ってやった…


 「…なにが、おかしいんですか?…」


 と、葉問が、真顔で、聞く…


 「…だって、おかしいだろ?…」


 「…なにが、おかしいんですか?…」


 「…だって、今、オマエの話を聞いていると、そのリンという女が、三星球団の価値を決めているようじゃないか? 普通は、選手だろ? あるいは、監督だろ?…」


 私が笑いながら、言うと、葉問も、一瞬、驚いた表情になったが、すぐに、


 「…ですよね…」


 と、言って笑った…


 つまり、私の言葉に同意したわけだ…


 「…だろ?…」


 「…ハイ…」


 「…オマエの言葉を聞いていると、日本ハムの価値が、チアガールで決まるみたいだ…」


 「…たしかに…」


 「…それは、おかしいだろ?…」


 「…ハイ…」


 葉問が、素直に、私の言葉に、同意した…


 が、


 すぐに、


 「…ですが…」


 と、付け加えた…


 「…ですが、なんだ?…」


 「…そのリン…実は、台湾のお偉いさんの間でも、人気があるんです…」


 「…お偉いさんだと? どんなお偉いさんだ?…」


 「…つまり、政治家や財界人…クラスの人間です…」


 「…なんだと?…」


 「…考えてみて、下さい…お姉さん…」


 「…なにを、考えてみるんだ?…」


 「…どこの国でも、お偉いさんは、大抵、歳を取った男です…高齢の男です…」


 「…」


 「…だから、当然、若い女が好き…そういうことです…」


 葉問が、笑う…


 私は、それを、聞いて、絶句した…


 絶句=文字通り、言葉を失った…


 しかしながら、事実…


 事実だった…


 誰にでも、わかる事実だった…


 これは、例えば、会社に勤めていれば、誰にでも、わかる…


 例えば、四十代、五十代のオジサンは、若い女には、甘い…


 いかに、美人でも、四十代の女の美人と、二十代のかわいい女とは、対応が、違う…


 大抵は、二十代のかわいい女の勝ち…


 勝負にならない…


 そういうものだ…


 そして、これは、男女が、逆転しても、同じ…


 同じだ…


 どうしても、女も歳を取ると、若い男が、好きになる…


 若い男=若いイケメンが、好きになる…


 つまりは、男女とも、歳を取ると、自分より、はるかに、若い、ルックスのよい異性を好きになると、いうことだ…


 もちろん、例外はあるし、若ければ、なんでもいいというわけではない…


 やはり、基本は、男女とも、美男美女…


 そして、性格が、良ければ、これに、勝るものは、ない…


 いかに、ルックスが良くても、性格がよくなければ、ダメだ…


 そして、会社ともなると、当然、歳をとった男女が、多い…


 学生時代の若い男女では、ない…


 歳をとれば、誰もが、少しは、ひとを、見る目ができてくる…


 いかに、美男美女でも、性格が悪い人間は、皆、毛嫌いしている…


 問題は、それを、態度に出すか、否か…


 若いときは、自分が、嫌われていても、案外、わからない人間も多いものだ…


 そして、それは、なぜかと、言えば、露骨に嫌われてないから…


 だから、わからない…


 そういうことだ…


 実は、私も、以前、契約社員で、会社に勤めたときに、そんな人間と接したことがある…


 その若い男性は、常にひとの悪口を言っていた…


 他人の悪口や、噂話をしていた…


 そして、以前、その会社の親会社を受験して、不採用になったことを、笑い話にしていたが、実際は、はらわたが煮えくり返っていたと、思う…


 が、


 その男性が、なぜ、採用されなかったのか?


 私は、一目で、わかった…


 目に険があり、性格の悪さが、顔に出てしまっているのだ…


 だから、人事が、敬遠したというのが、真相だろう…


 私は、そう思った…


 そして、問題は、目に険があることではなく、誰もが、それを当人に教えないことだろう…


 まあ、常にひとの悪口や噂話をしている人間に教えるひとも、いないと思うが(苦笑)…


 私は、今、葉問と話して、そのことを、思い出した…


 思い出したのだ…


 そして、


 そして、だ…


 この話…


 アムンゼンの初恋の話…


 乗って、損になる話ではない…


 ふと、気付いた…


 なにしろ、あのアムンゼンの好きな女と接するのだ…


 その女を、アムンゼンに紹介すれば、アムンゼンも、喜ぶだろう…


 ひょっとすると、この矢田にも、礼になにがしらのプレゼントをくれるかも、しれん…


 なにしろ、アムンゼンは、アラブの王族だ…


 現国王の弟だ…

 

 金は、たんまり、持っている…


 だから、きっと、この矢田にも、たっぷりと、お金をくれるかも、しれん…


 この矢田が、どんな贅沢をしようと、一生、使い切れんほどのお金をくれるかも、しれん…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 奇貨居くべし…


 いや、


 棚からぼたもちか?


 いずれにしろ、この矢田トモコにも、チャンスが、巡って来た…


 生涯、最大のチャンスが、巡って来た…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


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