35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 6
「…キャンペーンガールの護衛だと?…」
私は、言った…
私の細い目を、さらに、細めて、言った…
が、
葉問は、反応せんかった…
私が、睨んだのにも、反応せんかった…
だから、私は、葉問を睨むのを、止めた…
「…バカも休み休み言え…」
と、言って、止めた…
「…この私にキャンペーンガールの護衛など、できるわけがないだろ?…」
「…ですよね…」
葉問が、あっさりと言った…
「…目的はなんだ?…」
「…アムンゼン殿下です…」
「…なぜ、ここで、アムンゼンの名前が出る…」
「…殿下が、そのキャンペーンガールのファンなんです…」
「…あのアムンゼンが、か?…」
「…そうです…」
うーむ…
驚いた…
が、
考えてみれば、当たり前…
あのアムンゼンも、3歳の子供にしか、見えんが、ホントは、30歳…
30歳の大人だ…
だから、キャンペーンガールに憧れても、おかしくはない…
当たり前のことだからだ…
「…どんな女だ?…」
私が、聞くと、葉問が、スマホを取り出して、見せた…
そして、スマホの画面の中の水着の美女を見せた…
「…これが、リンです…」
「…そうか…」
呟きながら、私は、再び、私の細い目を、さらに、細めて、その写真を見た…
たしかに、いい女だった…
長身で、水着が似合う…
顔もいい…
いわゆる、目鼻立ちの整った正統派の美人顔…
たしかに、あのアムンゼンが、惚れるのは、わかる…
わかるのだ…
なにより、長身なのが、いい…
なぜなら、あのアムンゼンは、3歳のガキ並みのカラダしかない…
だから、長身の美女に憧れる…
なぜなら、自分にないものだからだ…
これは、アムンゼンに限らず、同じ…
背の低い男が、背の高い女に憧れる…
真逆に、背の高い男が、背の低い可愛い女に憧れる…
これもまた自分にないものだからだ…
だから、憧れる…
頭のいい男や女に、頭の悪い男や女が、憧れるのも、同じ構図だ…
つまりは、自分にないものに、憧れるというやつだ…
だから、憧れる…
そういうことだ…
が、
不思議だった…
なぜ、この葉問が、そんなことを、知っているのか?
不思議だった…
アムンゼンの存在は、極秘…
極秘=トップシークレットだ…
サウジアラビアのトップシークレットだ…
だから、アムンゼンが、どんな人間か、誰も、知らない…
当然、この葉問も知るはずがない…
いや、
この葉問も、また、アムンゼンとは、面識があるが、そこまで、知っているわけがない…
アムンゼンの趣味嗜好まで、知っているわけはない…
しかしながら、知っている…
と、すれば、どうだ?
どこかで、調べたか?
あるいは、誰かに、教えてもらったか?
私は、そう、思った…
私は、そう、睨んだ…
「…どうしました? …お姉さん? …そんな難しい顔をして?…」
「…オスマンか?…」
私は、言った…
いきなり、言った…
「…オスマンが、どうか、しましたか?…」
「…オスマンに教えて、もらったのか?…」
私が、言うと、
「…」
と、葉問が、黙った…
と、沈黙した…
「…図星だな…」
「…どうして、そう思うんです?…」
「…オマエとオスマンが、似ているからさ…」
「…ボクと、オスマンが、似ている?…」
「…そうさ…だから、仲がいい…違うか?…」
「…どうして、そう思うんですか? オスマンとは、以前、ボクは、殴り合っているんですよ…」
葉問が、言う…
私は、それを、聞いて、思い出した…
以前のことを、思い出した…
この葉問は、以前、オスマンと殴り合いのケンカをした…
原因は、アムンゼンだった…
以前も、言ったように、アムンゼンは、サウジアラビアの国王にならんとした…
実際には、国王には、なれないから、サウジアラビアの実権を握り、誰か、別の人間を国王にして、自分は、陰から、その人間を操ろうとした…
が、
その計画が、事前に漏れ、クーデターは、失敗…
日本に追放された…
そして、日本で、オスマンの面倒を見た…
オスマンは、この葉問と同じ、ヤンキー上がり…
だから、国王も手を焼いて、日本に追放した…
そして、アムンゼンに、オスマンの面倒を見ろと、命じた…
なにしろ、アムンゼンは、アラブの至宝と呼ばれるほどの、頭脳も持ち主…
頭脳が、ずば抜けている…
しかも、オスマンは、アムンゼンの甥…
面倒を見ろと、国王が、言うのは、ある意味、当然だった…
が、
それは、建前…
ホントは、オスマンは、アムンゼンの監視役だった…
日本に追放したアムンゼンが、再び、暴走しないか、身近で、アムンゼンを監視するために、オスマンを派遣した…
それが、真相だった…
そして、それに、気付いたアムンゼンが、オスマンを捕まえようとした…
そして、その捕まえようとした場所が、アムンゼンの通う、セレブの保育園だった…
まさか、セレブの子供たちが大勢通う保育園で、そんな大捕りものを、行うはずがない…
それが、一般人の考える発想だ…
しかしながら、アムンゼンは、その盲点を突いた…
だから、油断したオスマンが、パニックになり、こともあろうに、バニラの娘のマリアを人質にとって、セレブの子弟の通う保育園から、逃げ出そうとした…
ちょうど、その日は、セレブの子弟の通う保育園の文化祭だった…
だから、お忍びで、娘のマリアの姿を見ようとしたバニラが、オスマンの前に立ち塞がった…
お忍びというのは、バニラは、世界的に有名なモデル…
だから、世間では、子持ちであることは、隠している…
なにしろ、バニラは、まだ23歳…
3歳の娘が、いることが、バレれば、人気が、急落する可能性が、高いからだ…
だから、堂々と、娘のマリアの通う保育園に顔を出すことが、できない…
バレたら、困るからだ…
だから、お忍びで、やって来た…
その眼前で、自分の、娘が、オスマンに人質にされている光景を目の当たりにした…
バニラの怒りが、爆発した…
バニラは、元ヤン…
暴力には、滅法強い…
なにしろ、身長180㎝の大女だ…
だから、オスマンに立ち向かった…
が、
いかに、バニラが、元ヤンで、身長が、180㎝あろうとも、男女の違いがある…
最初は、オスマン相手に善戦したバニラだったが、やがて、倒された…
そして、バニラの代わりに、突然、現れたのが、この葉問だった…
オスマンは、バニラとの戦いで、体力を消耗したこともあり、この葉問に、屈した…
私は、今、それを、思い出した…
あれ以来、この葉問とあのオスマンが、会ったのを、見たことは、ない…
が、
当然、私の知らないところで、連絡をとっていても、おかしくはない…
そう、思ったのだ…
だから、オスマンから、聞いたのでは?
そう、考えたのだ…
すると、この葉問は、あっさりと、認めた…
「…ハイ…お姉さんの言う通りです…」
と、あっさり、認めた…
「…さすがですね…お姉さん…」
葉問が、私を褒めたが、私は、気に入らんかった…
なにか、ある…
まだ、なにか、ある…
これは、直観だった…
この矢田トモコの直観だった…
だから、
「…葉問…オマエ…まだ、なにか、隠しているな? …言ってみれば、いいさ…」
と、言った…
が、
葉問は、すぐには、答えんかった…
この矢田を弄ぶように、すぐには、答えんかった…
この矢田を、わざと、じらした…
だから、頭に来たが、私は、待った…
葉問の言葉を待った…
どうせ、遅かれ早かれ、葉問は、口にするに、決まっているからだ…
だから、待った…
待ち続けた…
すると、だ…
「…キャンペーンガールと言いましたが、実際は、違います…」
「…違う?…」
「…ハイ、違います…」
「…じゃ、なぜ、キャンペーンガールと言ったんだ?…」
「…似たようなものだからです…」
「…似たようなものだと?…」
「…ハイ…そうです…」
「…具体的には、なんだ?…」
「…チアガールです…」
「…チアガールだと?…」
「…リン…彼女は、台湾のプロ野球球団、三星のチアガールです…今、日本でも、日本ハムのチアガールが有名です…」
「…そうなのか? …知らんかったさ…」
私は、言った…
正直に、言った…
日本ハムは、知っている…
日本ハムというプロ野球の球団は、知っている…
が、
チアガールは、知らんかった…
知らんかったのだ…
「…で、それが、どうした? …私になんの関係がある…」
「…おおありです…」
「…おおありだと? どうしてだ?…」
「…今も言ったように、リンは、台湾のプロ野球球団、三星のチアガールです…ですが、その三星球団…身売りの話が出ているのです…」
「…なんだと?…身売りだと?…」
「…そうです…そして、その三星球団を、買うと言われているのが…」
「…まさか?…」
「…そのまさかです…」
葉問が、笑った…
不敵に笑った…
「…お義父さんか?…」
「…そうです…台北筆頭を率いる葉敬です…」
葉問が、断言した…




