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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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69/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 69

そんなやりとりを続けながら、地下駐車場に向かった私たちだが、やがて、目的の地下駐車場に着いた…


 そこには、大型のクルマが、留まっていた…


 そのクルマを見て、


 「…ロールスロイスですか?…」


 と、アムンゼンが、口を開いた…


 「…よく、わかったね…」


 葉敬が、驚愕する…


 「…いえ、ボクも持っていますから…」


 「…キミも持っているって?…」


 「…いえ、厳密には、父が、所有しているんですが…」


 その言葉に、さすがに、葉敬は、驚愕したというか…


 尋常ではない、驚きを示した…


 そんな葉敬の姿を見た、バニラが、


 「…この子の父親は、大金持ちらしいです…」


 と、遠慮がちに、告げた…


 「…大金持ちらしい?…どうして、わかる?…」


 「…この子は、マリアと同じ保育園に通ってます…あの保育園は、この日本に滞在する世界中のセレブの子弟が、集まる保育園…だから…」


 と、言って、後は、言わんかった…


 このアムンゼンが、ホントは、30歳で、サウジアラビアの王族だとは、言わんかった…


 アムンゼンに口止めされているから、言わんかった…


 が、


 そんなバニラの説明を聞いて、葉敬は、


 「…なるほど…」


 と、納得した…


 呆れるほど、簡単に納得した…


 「…たしかに、あの保育園に通っているのなら、驚くほどの、ことでは、ないかも、しれないな…あの保育園に通う園児たちは、この日本に滞在する、世界中のセレブの子弟が、通う保育園…世界的な企業の創業者の子弟や、世界中の王族の子弟が、集う保育園だ…」


 葉敬が、納得する…


 「…では、アムンゼン君とか、言ったね…キミのお父さんは、なにをしているの? 大きな会社の社長さんをしているの?…」


 「…いえ、父は、石油関連の仕事をしています…」


 「…石油関連? …そういえば、キミの肌の色は、浅黒い…出身は、中東かな?…」


 「…ハイ…そうです…」


 「…そうか…」


 葉敬は、納得した…


 簡単に納得した…


 「…石油関連か…たしかに、金持ちだろうね…」


 と、言って、納得した…


 そして、それ以上、その話は、しなかった…


 3歳の子供相手に、いつまでも、親の職業を聞いても、仕方がないと、思ったのかも、しれんかった…


 当たり前のことだった…


 いかに、アムンゼンが、頭が良くても、3歳の子供だと、思っている葉敬が、これ以上、親のことを、聞いても、仕方がないと、思うのが、当たり前だった…


 そして、葉敬が、ロールスロイスに歩み寄り、ドアを開けた…


 が、


 中には、誰も、いなかった…


 いや、


 正確には、いたが、それは、運転手だった…


 このロールスロイスを運転する運転手だけだった…


 葉敬は、驚いた…


 そして、すぐさま、運転手を詰問した…


 「…このクルマに乗っていた女は、どうした?…」


 と、詰問した…


 正直、少々厳しい、言い方だった…


 いや、


 きつすぎる言い方だった(笑)…


 つまりは、葉敬は、それほど、驚いたに違いなかった…


 「…キミは、それを止めなかったのか?…」


 と、続けて、言った、口調もまた、厳しかった…


 葉敬の怒りが、現れていた…


 しかしながら、その怒りは、空回りというか…


 運転手が、


 「…いえ、お止めしたのですが、制しを振り切って…」


 と、言うと、すぐに、葉敬も諦めた…


 「…そうか…」


 と、だけ、言って、諦めた…


 おそらく、この運転手が、制しても、それを、振り切って、行ってしまったと、気付いたに違いない…


 また、私もそれを、聞いて、驚かんかった…


 昨日、初対面で、初めて、会っただけだが、その印象は、正直、最悪だった…


 ハッキリ言えば、


 …わがままな女…


 と、言うのが、正しいというか…


 それが、リンの評価だった…


 なにしろ、昨日、初めて会っただけだが、ド派手な衣装を着て、態度も、横柄というか、生意気と、いうか…


 とにかく、最悪だった(苦笑)…


 だから、いかに、運転手が、何を、言おうと、いうことを、聞かなかったと、言われても、納得する…


 そういうことだ…


 きっと、台湾で、チヤホヤされ、調子に乗っているのだろう…


 天狗になっているのだろう…



 まあ、台湾で、一番の人気があれば、仕方がない…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 しかしながら、同時に、気付いた…


 なにに、気付いたかと、言われれば、リンの人気に気付いたのだ…


 なぜなら、リンは今、台湾でナンバーワンの人気のチアガールと言ったが、それを、言えば、このバニラも、有名なモデル…


 世界中で、人気がある…


 そして、もう一人…


 リンダだ…


 リンダ・ヘイワースだ…


 リンダもまた、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれ、圧倒的な人気がある…


 しかしながら、二人とも、驕り高ぶった態度を取ったことを、見たことがない…


 それは、なぜか?


 それは、きっと、二人とも、人気が出たのが、昨日、今日ではないからだ…


 人気が出たのが、ずっと前だからだ…


 だから、横柄ではない…


 調子に乗ってない…


 いわば、数年前から、人気が出たから、すでに、自分に、人気があるのが、当たり前になっているからだ…


 だから、調子に乗ってない…


 誰もが、いきなり、人気が出れば、調子に乗るものだ…


 いわば、それまで無名の一般人だった人間が、いきなり有名になる…


 そうなれば、調子に乗るなという方が、難しいからだ…


 すでに、このバニラやリンダは、数年前から、人気が出ている…


 だから、それに慣れているというか…


 とりわけ、リンダは、もうずっと前から、人気がある…


 最初は、モデルで、人気が出て、それから、女優に転身した…


 だから、キャリアが、長い…


 そして、人気があるのが、当たり前になったから、調子に乗らない…


 すでに、昨日、今日、人気が出たのでは、ないからだ…


 また、このバニラも、そこまで、調子に乗ってないのには、おそらく、マリアの存在がある…


 マリアは、バニラの娘…


 バニラは、リンダには、遠く及ばないが、スーパーモデルとして、人気がある…


 が、


 公には、知られていないが、このマリアがいる…


 マリアという娘がいる…


 バニラは、まだ23歳だが、3歳の娘がいる…


 そして、それは、いうなれば、バニラの弱点…


 いかに、バニラが、若く、キレイでも、3歳の娘がいることが、わかれば、興ざめするファンが、いるからだ…


 当たり前のことだ…


 日本で言えば、子連れで、アイドルをやれと、いうようなものだからだ(笑)…


 アイドル=架空の恋人というか…


 アイドル=理想の恋人だからだ…


 その恋人が、子持ちでは、幻滅するからだ…


 これは、男も女も同じ…


 同じだ…


 子持ちであるのが、バレれば、人気は、失墜する…


 当たり前のことだ…


 そして、それを、バニラ自身が、よくわかっている…


 だから、バニラは、調子に乗らない…


 まだ、23歳と、若くても、調子に乗らない…


 そういうことだ…


 だから、それに、気付いた私は、


 「…お義父さん?…」


 と、いきなり、葉敬に、言った…


 「…なんですか? …お姉さん?…」


 「…リンさんが、人気が出たのは、いつですか?…」


 「…なんですか? …お姉さん、いきなり、そんなことを?…」


 「…いえ、リンさんが、台湾で、人気のチアガールというのは、わかりましたが、それを言えば、このバニラも、有名人だし、リンダも同じ有名人です…」


 「…なにが、言いたいのですか? …お姉さん?…」


 「…いえ、昨日、リンさんと、初めて、お会いしましたが、態度が、横柄というか、わがままというか…同じ有名人でも、このバニラや、あのリンダは、リンさんのような態度は、取りません…それは、もうずっと前から、人気があるから、その環境に慣れているからです…でも、あのリンさんの態度は、急に人気が出たから、じゃないかと、思って…」


 私が、言うと、葉敬が、考え込んだ…


 腕を組んで、考え込んだ…


 「…たしかに、お姉さんの言う通りかも、しれない…私が、リンの存在を知ったのも、最近だし…そんなに前から、人気が、あれば、いかに、私のようなオジサンでも、知っていたはずだ…」


 葉敬が、言うと、


 「…人気が出たのは、つい最近ですよ…」


 と、誰かが、言った…


 その声の主は、他でも、ない、アムンゼンだった…


 「…それまでは、ずっと泣かず飛ばす…なにをやっても、うまくいかなかった…それが、三十歳を超えて、ようやく、ブレイクして…なまじ、それまで、売れるようになるまで、苦労したんだから、余計に謙虚にならなければ、いけないのに…」


 アムンゼンが、言う…


 アラブの至宝が、言う…


 私は、それを、聞いて、驚いたが、それは、一瞬…


 ほんの一瞬だった…


 なぜなら、アムンゼンは、リンのファンだからだ…


 まぎれもない、ファンだからだ…


 だから、リンのことを、知っていて、当然だった…


 リンの過去を知っていて、当然だった…


 が、


 それは、私だけ…


 葉敬も、バニラも、知らない…


 まして、バニラの娘のマリアは、まだ3歳と幼いから、知らない…


 だから、驚いた…


 とりわけ、アムンゼンの正体を知らない葉敬は、驚いて、アムンゼンを見た…


 そして、


 「…まったく…キミには、驚かせられる…まるで、大人のようだ…」


 と、感想を述べた…


 率直な感想を述べた…


 「…いえ、偶然知っただけです…」


 と、アムンゼン…


 「…偶然、知っただけ?…」


 「…そうです…」


 「…で、キミは、どうなんだ?…」


 葉敬が、言った…


 いきなり、言った…


 「…どうと、言うと?…」


 「…リンのファンなのかね? …将来、キミも、大人になったら、リンと結婚したいかね?…」


 と、葉敬が、聞いた…


 直球で、聞いた…


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