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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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60/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 60

「…たしかに、その可能性は、ある…その可能性は、否定できない…」


 「…一体、誰が、お義父さんに、三星球団の買収を持ちかけたんだ?…」


 「…李相…台湾の立法院の議員です…」


 「…立法院?…」


 「…台湾の国会です…ですから、日本で言えば、国会議員に相当します…」


 「…」


 「…そして、彼は、間違いなく、大物です…」


 「…大物?…」


 「…そうでなければ、台湾のプロ野球の球団の買収を、葉敬に、持ちかけないでしょ? …そもそも、プロ野球球団の買収を持ちかけることなど、下っ端の議員なら、不可能です…」


 葉尊が、当たり前のことを、言う…


 「…ということは、その李相が、今回の戦争になにか、絡んでいると、いうことか?…」


 「…その可能性は、大ですね…彼は、台湾でも、屈指の国際派です…海外に、大物の知人も多い…お姉さんの言う通り、彼なら、今回のことを、仕掛けたのも、納得する…」


 「…」


 「…お姉さん…いいところに、目をつけました…さすがに、お姉さんです…」


 葉尊が、私を褒める…


 が、


 私は、少しも、喜ばんかった…


 「…当たり前さ…私を誰だと思っているのさ…矢田トモコさ…こんなことぐらい朝飯前さ…」


 私は、言うなり、まだ朝飯を食べていないことに、気付いた…


 いや、


 朝飯どころか、昨日、葉敬を迎えに、空港から、自宅に、戻って来て以来、なにも食べていないことに、気付いた…


 そして、それに気付くと、同時に、腹が鳴った…


 グーと、なんとも、言えない音が、した…


 さすがに、これは、私としても、恥ずかしかった(苦笑)…


 女として、妻として、恥ずかしかった(苦笑)…


 が、


 さすがは、葉尊…


 私の夫だ…


 私が、空腹過ぎて、腹が鳴ったのを、聞こえないフリをした…


 私に恥をかかせないためだ…


 だから、わかっているにも、かかわらず、聞こえないフリをした…


 ただ、


 「…もう、朝です…朝食を取りましょう…」


 と、だけ、言った…


 私は、そんな葉尊の態度を見て、


 …コイツ、それほど、悪いヤツじゃ、ないかも、しれん…


 と、思い直した…


 最初は、気付かんかったが、この葉尊には、裏表がある…


 表の顔と裏の顔がある…


 それに、気付いた…


 いや、


 まだ、結婚して、半年足らず…


 結婚する前に出会ったのも、その二か月ぐらい前だ…


 だから、知り合って、八か月ぐらいしか、経っていない…


 それゆえ、葉尊の人柄が、わからない…


 当たり前のことだ…


 これは、誰でも、同じ…


 同じだ…


 知り合って、まもなく結婚した男女が、相手のことが、わかるわけが、ないからだ…


 ただ、外見が、おとなしく見えれば、おとなしい人物だと、思うし、外見が、ヤンチャに見えれば、ヤンチャなんだろうと、思う…


 が、


 それは、見た目だけ…


 あくまで、見た目だけだ…


 中身は、当然、違う…


 まじめそうに、見えれば、性格もまじめとは、限らないし、ヤンチャに見えれば、性格もヤンチャなわけでは、決してない…


 良い例が、派手な女が、男関係が、派手とは、限らないし、まじめそうな女が、男関係が、派手ということもある(笑)…


 要するに、見た目と中身は、違うということだ…


 私は、夫の葉尊と結婚して、まだ半年あまり…


 最初は、ただ、おとなしく、まじめな男だと思っていたが、そうではないことが、徐々にわかってきた…


 が、


 それとて、想定内というか…


 別段、驚きもなかった…


 なにしろ、この矢田トモコも、35歳…


 昨日、今日、この世に生を受けたのでは、ないからだ…


 これまで、派遣や契約社員や、アルバイトなど、さまざまな仕事をして、多くの人間を、見てきた…


 だから、よけいに、外見と中身は、別だということが、わかってきた…


 ただ、葉尊に限っては、正直、昼間、家にいない…


 外で、働いているからだ…


 だから、当たり前だが、二十四時間、いっしょにいるわけではない…


 それゆえ、イマイチ、葉尊の人間性が、掴めんかった…


 これが、学校や会社のように、長時間、いっしょにいれば、その人の人間性が、掴める…


 が、


 私と葉尊の場合は、違う…


 それまで、会ったことも、見たこともなかった…


 それが、突然、出会って、結婚した…


 いわば、見合いといっしょ…


 出会って、数回で、結婚したわけだ…


 だから、お互いの人間性が、わからない…


 どんな人間か、わからない…


 そういうことだ…


 が、


 しかしながら、昔は、これが、普通だったと聞く…


 見合い結婚が、普通だったと聞く…


 今から、五十年以上前や、明治、大正期や、昭和初期は、普通だったと聞く…


 いや、江戸時代もそうか…


 とにかく、昔は、それが、普通だったと、聞く…


 つまり、今のような恋愛結婚が、主流ではないと、いうことだ…


 しかしながら、離婚も昔からあるし、結婚しても、一生、別れないカップルも多い…


 もちろん、社会情勢の変化もある…


 昔は、専業主婦が、多かった…


 結婚した女は、家庭に閉じこもる女が、多かった…


 夫の給料だけで、生活はできるから、働く必要もないし、働き口もないからだ…


 今現在、普通に、結婚して、働いている女性が、多い時代とは、雲泥の差だ…


 だから、昔は、女性が、簡単に離婚できなかったのは、わかる…


 離婚した女性が、生きるために、働く職場が、あまりないからだ…


 しかしながら、戦前の離婚率は、今と同等だったと、聞いたことがある…


 つまり、今と同じ…


 嫌いになったから、別れたということだろう…


 つまり、なにが、いいたいかと言えば、学校や職場で、知り合って、結婚しようが、見合いで、数回会っただけで、結婚しようが、結果は、同じだということだ…


 事前に知り合ってから、結婚したのと、複数回会っただけで、結婚したのと、たいして、離婚率は、変わらないということだ…


 これには、驚いたが、冷静に考えれば、そんなものかも、しれん…


 なまじ、学校や職場で、知り合って結婚しても、


 …こんなひとだとは、思わなかった!…


 ということは、多いだろう…


 学校や職場で、見た姿しか、知らないからだ…


 家庭での姿を知らないからだ…


 いわば、学校や会社は、公の世界…


 そこで、見せる姿と、家庭=プライベートで、見せる姿は、別ということが、あるからだ…

 

 真逆に、私と葉尊のように、まるで、お見合いのように、数回会っただけでも、うまくいくものは、うまくいく…


 そういうものかも、しれない…


 もちろん、キャラ変もある…


 男でも、女でも、途中から、キャラが、変わる場合が、あるからだ…


 とりわけ、女は、子供ができたら、変わる場合が、多い…


 あれほど、勉強が、嫌いだった女が、子供ができてから、教育ママに豹変した姿を見れば、もはや、ホラーだ(爆笑)…


 もはや、ホラー映画に近い…


 キャラ変という言葉では、言い表せない豹変ぶりだからだ(笑)…


 私は、葉尊を見ながら、そんなことを、考えた…


 考えた…


 考えたのだ…


 そして、考えながら、朝食の準備をした…


 実は、この矢田トモコは、手が早い…


 学生時代から、スポーツ万能だった…


 だから、なにをやらせても、早い…


 それゆえ、冷蔵庫の中にあった、ありあわせの食材で、すぐに、朝食を作った…


 そして、すぐに、食卓に並べた…


 それから、私と葉尊は、向かい合って、朝食を食べた…


 すると、すぐに、葉尊が、


 「…お姉さんは、おいしいです…」


 と、言った…


 「…お姉さんの作る料理は、いつも、おいしいです…」


 と、私を褒めた…


 「…当たり前さ…」


 と、私は、言った…


 「…私を誰だと、思っているのさ…矢田トモコさ…矢田トモコは、なんでも、できるのさ…」


 そう言いながら、わざと、私は、胸を大きく張った…


 私の唯一の武器である、巨乳を強調するためだ…


 私の巨乳を見て、


 「…すごいです…お姉さん…」


 と、葉尊が、言うのを、期待したのだ…


 が、


 なにも、言わんかった…


 いや、


 葉尊の視線が、そもそも、私を見ていなかった…


 食事に夢中だった…


 …チッ!…


 私は、内心、舌打ちをした…


 せっかく、この矢田トモコ様が、自慢の巨乳を揺らして、アピールしたにも、かかわらず、食事に夢中とは…


 ダメな奴だ!


 男の風上にも、置けん!…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 が、


 しかし、


 「…おいしいです…」


 とか、


 「…うまいです…」


 と、連呼して、私の作った料理をおいしそうに、食べる葉尊を見ると、私は、許してやることにした…


 私の女としての、魅力に気付かない葉尊を許してやることにした…


 なにしろ、葉尊は、まだ29歳…


 35歳のこの矢田トモコから、見れば、子供…


 子供に過ぎん…


 35歳の、この矢田の妖艶な魅力も、わからんかも、しれん…


 29歳のお子ちゃまには、難しいかも、しれん…


 私は、そう、思い直した…


 思い直したのだ…


 そして、そう考えると、葉尊を、怒る気もせんかった…


 相手が、子供だから、仕方がない…


 そう、思ったのだ…


 事実、葉尊は、私の作った料理を実に、うまそうに、食べていた…


 それを、見ると、葉尊を怒る気にも、ならんかった…


 やはり、自分の作った料理を、おいしそうに、食べる姿を、見れば、誰でも、嬉しいものだ…


 この矢田トモコも、例外ではない…


 例外ではないのだ…


 まるで、子供のように、嬉しそうに、私の作った料理を食べる葉尊を見て、私は、許すことにした…


 この矢田の妖艶な魅力に、気付かん、お子様の夫を許すことにした…


 そして、そんなお子様の葉尊を見ながら、もう一人のお子様を、考えた…


 アムンゼンのことだ…


 アラブの至宝のことだ…


 アイツは、今、なにを考え、これから、どうしようというのか?


 そもそも、アムンゼンの狙いは、なんだ?


 そんなことを、考えた…


 考え続けた…


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