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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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59/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 59

イスラエルとハマスが、戦闘状態に陥った…


 もしや、これか?


 これが、あの葉問が、言ったことか?


 私は、驚いたと同時に、気付いた…


 気付いたのだ…


 私が、朝、驚いて、テレビを見ていると、


 「…始まりましたか…」


 と、誰かが、呟いた…


 いや、


 誰かでは、ない…


 この家にいるのは、私と葉尊だけ…


 だから、葉尊だった…


 私の夫の葉尊だったのだ…


 「…殿下が、危惧されていたことが、起こってしまいましたか…」


 「…殿下が、危惧されていたことだと?…」


 「…ハイ…」


 「…どういうことだ?…」


 「…ハマスが、イスラエルを電撃攻撃する…その情報は、殿下も掴んでました…」


 「…なんだと、掴んでいただと?…」


 「…ハイ…掴んでいました…ですから、殿下は、戦争にならないように、危惧して、さまざまな国々と水面下で、接触していました…」


 「…あのアムンゼンが、か…」


 「…そうです…」


 「…」


 「…だから、そうならないように、人一倍、殿下は、尽力していたのに…」


 葉尊が、悔しそうに言う…


 私は、驚いた…


 正直、声も、出んほど、驚いた…


 今、テレビで、見ている、戦争に、あのアムンゼンが、かかわっているなど、夢にも、思わんかった…


 思わんかったのだ…


 私は、


 「…どうして、だ?…」


 と、つい、呟いた…


 「…どうして、アムンゼンが、この戦争にかかわっているんだ?…」


 「…殿下が、アラブの至宝だからです…」


 「…なんだと?…」


 「…アラブ世界の平和を維持するのが、殿下の使命だからです…」


 「…」


 「…それゆえ、ハマスが戦争に、備えているのが、わかると、殿下は、真っ先に、動いた…戦争を回避するためです…アラブ諸国のトップに連絡して、対応を急いだ…」


 「…」


 「…だが、結果は、コレです…殿下の落胆は、いかばかりか…」


 葉尊が、言う…


 私の夫が、言う…


 私は、それを、聞いて、


 「…どうして、オマエに、そんなことが、わかる?…」


 と、つい、聞いてしまった…


 当たり前だった…


 いかに、葉尊が、日本の総合電機メーカー、クールの社長といえども、そんな情報は、入って来ないだろうからだ…


 いかに、大企業の社長といえども、一般人…


 そんな、情報は、入っては、来ないだろうからだ…


 だから、私は、聞いた…


 聞いたのだ…


 「…リンダですよ…お姉さん…」


 「…リンダだと?…」


 「…殿下が、リンダのファンだと言うことは、お姉さんも、ご存じでしょ?…」


 「…それは、知っているさ…」


 「…ですが、殿下の狙いは、リンダそのものだけでは、ありません…」


 「…どういう意味だ?…」


 「…リンダは、ハリウッドのセックス・シンボル…まぎれもない美人ですが、殿下の狙いは、リンダの持つネットワークです…リンダ・ヘイワースの持つ、人脈です…」


 「…人脈?…」


 「…リンダの後援会の会長が、イギリスのウィリアム皇太子だということは、お姉さんも、ご存じでしょ?…」


 「…それは、知っているさ…」


 「…殿下は、それを、知っていて、リンダに近付いたのです…」


 「…」


 「…もちろん、リンダは、あの美貌です…ですから、殿下が、リンダに憧れる気持ちに、ウソは、ないでしょう…ですが、殿下が、言葉が、悪いですが、リンダに目をつけたのは、リンダの持つ人脈も、大きい…」


 「…」


 「…殿下は、リンダに頼み、それとなく、今回のハマスの戦闘準備を告げた…リンダから、イギリスのウィリアム皇太子を筆頭とする、セレブに伝えるためです…彼らは、皆、世界各国のVIPと繋がっています…だから、対策を取れる…そう、思って、行動をしたんだと、思います…」


 「…」


 「…ですが、殿下の行動が、実を結ぶことは、なかった…」


 葉尊が、説明する…


 私は、それを、聞いて、ただただ、驚いた…


 いや、


 驚いたという言葉では、言い表せないほど、驚いた…


 ビックリした…


 まさか、あのアムンゼンが、そんなことを?…


 あの3歳のガキにしか、見えん生意気なチビが、そんな大それたことを、やっているとは、思えんかったからだ…


 だから、驚いた…


 目の玉が、飛び出るほど、驚いた…


 私の細い目が、思わず、大きくなるほどだった…


 が、


 しかし、だ…


 あのアムンゼンの豪邸を見れば、驚くことでも、ないかも、しれん…


 なにしろ、あの美術館とも、博物館とも、思える大豪邸だ…


 あんな大豪邸に住む人間など、見たことも、なかった…


 テレビでも、見たことは、なかった…


 もちろん、日本に限ってだ…


 世界各地では、あのアムンゼンの大豪邸を上回る豪邸が、存在することは、わかる…


 そして、そんな大豪邸に住む、人間だ…


 もしかしたら、世界を支配することが、できるかも、しれん…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 そして、そう思うと、今さらながら、ひとを評価するときは、そのひとを、評価するのではなく、そのひとの住む家や、クルマを見ることから、始める…


 そんな当たり前のことに、気付いた…


 ひとは、どうしても、まず、そのひとを、見て、判断する…


 評価する…


 話をしてみて、頭が、いいか、悪いか…


 話をしてみて、人柄が、よいか、悪いか?…


 ルックスが、いいか、悪いか…


 あるいは、真面目か、不真面目か?…


 など、当人を見て、判断する…


 が、


 それ以上に、その当人の持ち物が、大事…


 その当人が、所有している持ち物で、その人間が、金持ちか、否か、わかるからだ…


 ただ、アムンゼンのように、外見が、悪いと、どうしても、ひとに侮られる…


 これは、人間が、軽くても、同じ…


 同じだ…


 どうしても、威厳がある、重々しい人物が、優れていると、思ってしまう…


 しかしながら、いかに、威厳があり、重々しい人物でも、頭が、良かったり、性格が、良かったりするわけではない…


 見た目と、中身とは、別だからだ…


 だが、それが、わかっていても、つい、同じだと、思ってしまう…


 見た目と中身が、同じだと、思ってしまう…


 大半の人間が、私と同じだろう…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 そして、そんなことを、考えていると、葉尊が、


 「…しかし、イマイチ、リンの役割がわからない…」


 と、呟いた…


 「…リンの役割だと?…」


 私は、驚いた…


 まさか、この場面で、リンの名前が出てくるとは、思いもせんかったからだ…


 「…リンも、たぶん、この戦争にかかわっていると、思うんだが、それも、思い過ごしか…」


 葉尊が、呟く…


 私は、唖然として、葉尊を見た…


 私の夫を見た…


 「…どういうことだ? …あのリンも、アムンゼン同様、この戦争に、なんらかの形で、かかわっているのか?…」


 「…それは、わかりません…ただ…」


 「…ただ、なんだ?…」


 「…タイミングが良すぎます…」


 「…タイミング…なんのタイミングだ?…」


 「…リンの来日したタイミングです…」


 「…でも、リンが、来日したのは、お義父さんの葉敬が、来日するのに、合わせて…」


 「…たしかに、それもありますが、それだけで、この偶然を説明できるのか?…」


 「…」


 「…そもそも、リンが、来日するのは、葉敬が、台湾の三星球団を買収する可能性が、高いからです…」


 「…」


 「…リンは、三星球団所属のチアガール…にも、かかわらず、今や、三星球団そのものが、リンの存在に頼ってます…」


 「…リンの存在に頼っているだと?…」


 「…ハイ…今は、プロ野球、三星球団の価値は、選手でも、監督でもなく、チアガールのリンなのです…」


 葉尊が、言う…


 しかしながら、その話は、前にも、聞いた…


 この葉尊だか、葉問だか、忘れたが、どっちかに、聞いた(苦笑)…


 「…だから、葉敬が、三星球団を買収する、もっとも、重要なキーマンにリンが、なる…それゆえ、葉敬は、今回、リンを連れて、この日本に来日した…リンの人柄を知るためです…リンが、どんな人間か、知るためです…」


 「…」


 「…ですが、そのタイミングが、なんとも…」


 「…だったら、リンが、このハマスとイスラエルの戦争に関係していると、いうのか?…」


 「…それは、わかりません…」


 「…わからないだと?…」


 「…ハイ…わかりません…ただし、殿下なら、なにか、知っている可能性が、高いです…」


 「…あのアムンゼンが知っている可能性が、高いだと?…」


 「…そうでなければ、殿下が、リンのファンだと、公言する理由が、わかりません…なにしろ、このタイミングです…当然、なにか、理由がある…あるいは、深読みかも、しれませんが、そう考えるのが、普通です…」


 うーむ…


 たしかに、葉尊の言うことは、わかる…


 わかるのだ…


 このタイミングで、あのアムンゼンが、リンのファンだと、公言する…


 当然、なにか、隠された理由が、あるに、違いないからだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、それを、考えると、いつのまにか、私は、腕を組み、うんうん唸っていた…


 それを、見た、葉尊が、仰天した…


 「…お姉さん…なにを、うんうん、唸っているんですか?…」


 「…いや、いろいろ考えると、どうしても、辻褄が合わなくな…」


 「…辻褄が、合わない?…」


 「…そうさ…だって、今回、葉敬は…お義父さんは、台湾の旧知の知人から、その三星球団の買収を持ちかけられたんだろ?…それが、きっかけで、リンと来日することになったんだろ?…」


 「…ハイ…そうです…」


 「…だったら、もしかしたら、お義父さんに、最初に、その三星球団の買収を持ちかけた人間が、今回の騒動になにか、関係があるかも、しれんさ…そうは、思わんか?…」


 私が言うと、葉尊が、黙り込んだ…


 難しい顔をして、黙り込んだ…


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