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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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56/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 56

 「…なんだと? …抗争だと?…」


 私は、目を細めて、葉問に聞いた…


 実に、意味深…


 意味深な言葉だったからだ…


 「…それは、どういう意味だ?…」


 私が、聞くと、葉問が、笑った…


 実に、意味深に笑った…


 私は、頭に来た…


 私をバカに、したと、思ったからだ…


 「…さっさと、答えろ、葉問!…」


 私は、頭にきて、葉問を怒鳴った…


 怒鳴ったのだ…


 すると、


 「…お姉さんも、見たでしょ?…」


 と、葉問が、聞いた…


 「…見た? …なにを、見たんだ?…」


 「…殿下の豪邸で、天女をイメージしたリンの肖像画を…」


 葉問が、いきなり、言った…


 私が、思っても、見ないことを、言った…


 「…たしかに、見たさ…でも、アレが、どうかしたのか?…」


 「…アレは、殿下の抗争の意思表示です…」


 「…なんだと?…」


 「…アレは、リンを知っているものならば、誰が、見ても、リンを描いたものと、気付くでしょう…それが、殿下の狙いです…」


 「…狙い?…」


 「…そうです…」


 葉問が、言う…


 実に、意味深に、言う…


 「…狙いは、なんだ?…」


 「…わかりません…」


 「…わからないだと?…」


 「…ハイ…」


 葉問が、自信たっぷりに、言う…


 自分は、わからないと、自信たっぷりに、言う…


 だから、私は、


 「…オマエ、おかしくないか?…」


 と、言ってやった…


 「…なにが、おかしくないんですか?…」


 「…だって、そうだろ? わからないと、自信たっぷりに、言うなんて…」


 私が、言うと、葉問が、笑った…


 実に、愉快そうに、笑った…


 「…たしかに、お姉さんの言う通りですね…自信たっぷりに、わからないと言うのは、おかしいですね…」


 「…」


 「…でも、事実です…殿下は、狡猾です…決して、自分の考えを他人に、読ませない…」


 「…」


 「…だから、傍から見れば、なにを考えているか、わからない…」


 「…」


 「…殿下は、自分の見た目を最大限に利用しています…子供にしか、見えない見た目を最大限、利用しています…」


 「…」


 「…おそらく、殿下がリンを好きと言うのは、事実か、どうか、わかりません…」


 「…なんだと?…」


 「…殿下は、あのカラダです…おそらく、成人男子が、持つ、性的欲求は、ないでしょう…」


 「…性的欲求だと?…」


 「…ぶっちゃけ、あの女と寝たい…セックスをしたいという欲求です…」


 「…」


 「…ある意味、殿下は、宦官と同じです…」


 「…宦官と同じだと?…」


 「…宦官は、男ですが、去勢されていますから、子供を作ることが、できない…つまり、子孫を作れない…だから、現世の自分の欲求にのみ、こだわる…財産を作ったりすることに、こだわる…執着する…」


 「…」


 「…ですが、殿下は、生まれつき、財産は、腐るほど、ある…だから、金に執着しない…」


 「…」


 「…おそらく、殿下の頭の中にあるのは、サウジアラビア…そして、アラブ世界です…」


 「…」


 「…かつて、私は、イギリスと結婚したと、公言したエリザベス一世女王と同じです…」


 「…」


 「…殿下の視線の先には、サウジアラビアが、そして、アラブ世界が、常にある…だからこそ、殿下は、アラブの至宝なんです…」


 葉問が、力を込めて言う…


 が、


 私は、信じんかった…


 なにしろ、あのアムンゼンだ…


 3歳にしか、見えんガキだ…


 つい、先日も、この矢田といっしょに、ラーメンを食べた…


 この矢田と、甥のオスマンと三人で、ラーメンを食べた…


 あのアムンゼンが、どうしても、そんなに、偉くは、見えんかった…


 これは、おそらく、大会社の社長と同じ…


 プライベートで、いつも、冗談を言いあったりして、会社での偉い姿を見たことが、ない人間を、偉いとは、誰も、思わない…


 それと、同じだ…


 そして、それを、考えたとき、ふと、オスマンのことを、思い出した…


 あのオスマンが、この矢田とアムンゼンといっしょに、ラーメンを食べている…


 その映像が、サウジアラビアに流れて、大騒ぎになっていることを、思い出した…


 なぜ、たかだか、ラーメンを食べていることが、大騒ぎになったのか?


 それは、イスラム世界は、肉食禁止だからだ…


 それが、ラーメンを食べた…


 厚切りの分厚いチャーシューを食べた…


 それが、問題になったことを、思い出した…


 思い出したのだ…


 しかも、その映像を、流した張本人は、あのアムンゼンだと言う…


 にわかには、信じられんかったが、たしかに、あの映像を取れる人間は、限られる…


 だから、犯人は、あのアムンゼンの可能性が、高い…


 しかし、なぜ、あのアムンゼンが、そんなことを、するのか、わからない…


 なぜなら、あのオスマンは、あのアムンゼンの甥…


 そして、あのアムンゼンの忠実なボディーガードだからだ…


 その忠実なボディーガードをなぜ、裏切るような真似をしたのか?


 さっぱり、わからんかった…


 わからんかったのだ…


 だから、葉問に、


 「…あのオスマンが、分厚いチャーシューを食べている映像が、サウジアラビア本国で流れて、問題になっていると、聞いたが、アレは、アムンゼンが、わざと、流したと、たしか、オマエが、言っていたな…」


 と、聞いた…


 「…どうして、アムンゼンは、そんな真似をしたんだ?…」


 「…おそらく、殿下は、オスマンに試練を与えようとしたんじゃないでしょうか?…」


 「…試練だと?…」


 「…そうです…」


 「…なんでだ?…なんで、そんなことをする?…」


 「…殿下から、見れば、オスマンは、苦労が足りてないと、思っているのかも、しれない…だから、わざと…」


 「…それを、言えば、あのアムンゼンだって、ボンボンだ…苦労はしていないだろ?…」


 「…たしかに、生まれは、アムンゼン殿下とオスマンは、同じサウジアラビアの王族ですが、殿下は、あの外見です…苦労は、人並み以上に、しているでしょう…だから、余計に、オスマンを見て、苦労が、足りてないと、思うのでしょう…」


 「…」


 「…だから、わざと、試練を与えた…そう、考えるのが、正しいでしょう…」


 「…」


 「…なにしろ、オスマンは、あの外見です…長身で、イケメン…叔父のアムンゼン殿下とは、真逆です…サウジアラビア国内で、女性からの支持率が、驚異的に、高いそうです…」


 「…なんだと? …女性からの支持率だと?…」


 「…要するに、女から、モテる…だから、今、サウジアラビア国内で、オスマンを非難する連中は、皆、男…つまり、嫉妬です…イケメンで、金持ちの王族…だから、許せない…そういうことです…」


 葉問が、笑う…


 「…まあ、今、オスマンは、サウジアラビア国内で、男の嫉妬の的に、なっている…でも、オスマン本人は、この日本にいる…だから、たいした影響は、ない…実に、幸運です…」


 と、葉問が、笑いながら、言った後、


 「…ですが、それも、殿下の狙いかも、しれません…」


 と、付け加えた…


 「…殿下の狙いだと?…」


 「…さすがに、かわいい甥を直接、男たちの嫉妬の嵐の前に立たせるわけには、いかない…日本国内という安全圏にいるからこそ、今回のことを、仕掛けたのかも、知れません…」


 「…」


 「…かわいい子には、旅をさせよと、日本のことわざにあるそうじゃ、ないですか?…殿下の真意も、おそらく、それと、同じでしょう…オスマンが、かわいいからこそ、試練を与える…そういうことでしょう…」


 葉問が、説明する…


 アムンゼンの真意を説明する…


 私は、それに、意義をとなえるつもりは、まるでなかった…


 が、


 しかし、だ…


 どうして、そんなことが、この葉問にわかる?


 それが、問題だった…


 この矢田ですら、わからないことを、簡単に、解説する…


 なにしろ、この矢田は、あのアムンゼンと親しい…


 あのアムンゼンとオスマンといっしょに、ラーメンを食べた仲でもある…


 しかしながら、あのアムンゼンは、そんなことは、一言も、この矢田に、言わんかった…


 あれほど、この矢田を、


 「…矢田さん…」


 「…矢田さん…」


 と、慕っているにも、かかわらず、一言も、この矢田に、言わんかった…


 だが、この葉問は、あのアムンゼンの真意を知っている…


 ただの想像だけでは、あるまい…


 おそらく、どこかから、情報を集めて、自分なりに、考えて、答えを出したに、決まっている…


 そうで、なければ、これほど、自信を持って、私に言うわけは、ない…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 そして、そう考えると、ひとつの答えが、浮かんだ…


 この葉問が、誰に、そんなことを、聞いたのか?


 答えが、浮かんだのだ…


 「…リンダか?…」


 私は、言った…


 「…リンダが、葉問…オマエに、教えたんだな…」


 私は、断定した…


 勝手に、決めつけた…


 「…お姉さん…どうして、そう、思うんですか?…」


 葉問が、笑いながら、聞く…


 「…リンダが、オマエに惚れてるからさ…」


 私は、言ってやった…


 「…そして、そのリンダに、アムンゼンは、惚れてる…」


 私は、言った…


 「…だから、リンダが、アムンゼンから得た情報をオマエに、教えたんじゃないのか?…」


 私が、言うと、葉問が、笑った…


 笑いながら、


 「…さすがです…お姉さん…」


 と、私を褒めた…


 「…当たり前さ…」


 私は、言ってやった…


 「…私を誰だと、思っているのさ…矢田トモコさ…この矢田に隠し事はできんさ…この矢田の目をごまかすことは、不可能なのさ…」


 私が、言うと、葉問が、笑った…


 実に、意味深に笑ったのだ…


 「…なにが、おかしい?…葉問?…」


 私は、聞いてやった…


 「…おかしい? …なにがです?…」


 「…オマエのその笑いだ?…一体、なんだ? その笑いは?…」


 私は、怒って言ってやった…


 すると、だ…


 「…お姉さん…大事なことを、忘れてますよ…」


 「…大事なこと?…」


 「…そうです…」


 「…なんだ? …それは?…」


 「…空港で、昼間、葉敬を迎えたとき、リンは、リンダと同じ格好をしてきましたよね? 同じような派手な格好をしてきましたよね?…」


 「…それが、どうかしたのか?…」


 「…アレは、リンダの指示です…」


 葉問が、仰天の事実を言った…


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