表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 57

「…なんだと? …リンダの指示だと?…どういうことだ?…」


 「…アレは、リンダが、提案したんです…」


 「…リンダが、提案? …どうしてだ?…」


 「…その方が、アムンゼン殿下に、アピールできるからです…」


 「…アピールできるからだと?…」


 「…殿下は、リンダのファン…だから、リンダと被る服を着ることを提案した…リンダが、リンダ・ヘイワースで、いるときは、いつも、パンツが、見えそうな短いスカートを履き、胸が、こぼれそうなド派手な服を着る…だから、同じ格好をするように、提案したんです…」


 「…なぜ、そんなことを?…」


 「…忘れたんですか? …お姉さん?…」


 「…なにを、忘れたと言うんだ?…」


 「…リンダのネットワーク…」


 「…ネットワークだと?…」


 「…リンダの後援会の会長は、イギリスのウィリアム皇太子です…そして、ウィリアム皇太子を筆頭とするセレブのネットワークを、リンダは、持ってます…自分の後援会の会員に持ってます…」


 「…」


 「…そして、リンダの後援会の会員になっているセレブたちは、ただのリンダのファンでは、ありません…」


 「…どういうことだ?…」


 「…皆、セレブですから、情報を知りたがっている…」


 「…情報?…」


 「…いわゆる、投資の情報が、メインですが、世界のセレブが、どう動くのか? 今、なにを、考え、なにをしているのか? それを、知りたがっている…」


 「…」


 「…そして、その動静が、もっとも、気になる人物の一人が、あのアムンゼン殿下です…」


 「…なんだと? …アムンゼンだと?…」


 「…殿下は、アラブの至宝と呼ばれた、アラブ世界の大物の一人…殿下の一声で、アメリアを始めとする全世界の株価をも、変動します…」


 葉問が、言う…


 葉問が、信じられんことを、言う…


 私は、アムンゼンを思い出していた…


 どう見ても、3歳のガキにしか、見えん姿を思い出していた…


 あの3歳のガキにしか、見えんアムンゼンが、そんな力を持っているのか?


 それを、思えば、ラーメンではなく、もっと、高価なものを、あのアムンゼンにおごってもらっても、よかったと、思った…


 なにしろ、金持ちだ…


 ラーメンの十杯や、二十杯は、軽いだろう…


 だったら、別にラーメンではなくても、よいだろう…


 今度は、かつ丼にするか?


 私は、思った…


 思ったのだ…


 すると、なぜか、よだれが、出てきた…


 考えてみれば、当たり前だった…


 私は、この家に昼間、帰ってきて、以来、なにも、口にしていなかった…


 なにも、食べてなかった…


 だから、腹が減っていた…


 減っていたのだ…


 よだれが、出て、当たり前だった…


 そして、私が、よだれを流したのを見て、葉問が、


 「…お姉さん…ひょっとして、お腹が減っているんですか?…」


 と、聞いた…


 「…その通りさ…」


 私は、答えた…


 あっけなく、答えた…


 自分でも、よくわからんが、この葉問には、話しやすい…


 夫の葉尊よりも、話しやすい…


 だから、あっけなく、私も言えた…


 「…だったら、お姉さんも、一杯飲みますか?…」


 葉問が、ウィスキーをグラスに注いだ…


 ただし、ロックではない…


 水割りだ…


 水に割って、作った、ウィスキーの水割りのグラスを私に差し出した…


 「…茶腹も、いっときでは、ありませんが、なにも、口にしないよりましです…」


 私は、一瞬、迷ったが、


 「…そうか…」


 と、言って、グラスを受け取った…


 そして、チビチビと、飲み出した…


 すると、葉問が、


 「…お姉さん…酒を飲みながらでも、いいですから、聞いて下さい…」


 と、切り出した…


 私は、


 「…わかったさ…」


 と、言って、葉問の言うことを、聞くことにした…


 「…この世界は、三大宗教に、大きく分けられます…いや、三大宗教に、事実上、支配されているとも、言えます…」


 「…三大宗教?…」


 「…仏教、キリスト教、そして、イスラム教の三つの宗教です…」


 「…それが、どうかしたのか?…」


 「…アムンゼン殿下は、アラブの至宝…イスラム世界を代表する人物です…」


 「…」


 「…ですが、他の宗教が、支配する地域では、当然、違います…仏教国や、キリスト世界では、殿下の力は、それほど、及びません…」


 「…」


 「…なにより、他の宗教国では、例えば、日本や台湾では、ローマ法王が、どれほどの権威を持ち、どれほどの影響力が、あるのか、わかりません…それと、同じで、殿下の権威は、アラブ世界では、絶対です…そして、ボクやお姉さんは、アラブ世界の人間では、ないので、殿下の影響力が、イマイチ、よくわかりません…」


 「…」


「…しかし、それを、よく、思わないものも、少数ながら、存在します…」


 「…」


 「…殿下は、そんな人間たちの標的になっている側面もあります…」


 「…どういうことだ?…」


 「…殿下は、おそらく、自分を標的にして、自分をよく思わない勢力を一掃しようとしているんだと、思います…」


 「…なんだと?…」


 「…いかに、殿下といえども、神様でも、なんでもありません…ただの人間です…だから、殿下に反発する人間も、少なからず、いる…」


 「…だったら、リンは…あのリンは、なんなんだ?…」


 「…おそらく、殿下への刺客でしょう…」


 「…刺客?…」


 「…当然、彼女の背後には、誰か、いる…リンを操る人間が、いる…」


 「…」


 「…だから、あえて、アムンゼン殿下は、自宅にリンの肖像画を描いた…そうすれば、いずれ、リンを自宅に、招くことが、できる…そのための殿下がとった布石でしょう…」


 「…」


 「…と、言いたいところですが、真逆に、殿下が、ホントに、リンを好きで、それを、利用されたとも、考えられます…」


 「…なんだと? …利用?…」


 「…殿下が、リンのファンだと、聞いた、殿下をよく思わない反対勢力が、リンを使って、殿下に、近付こうとしている…それを、逆手に取り、わざと、殿下は自宅に、リンの肖像画を描かせた…自分が、リンの熱烈なファンだと、アピールするためです…」


 「…」


 「…ボク自身は、真相は、案外、そんなところだと、思います…」


 「…証拠はあるのか?…」


 「…さあ、それは…」


 葉問が、笑った…


 実に、意味深に笑った…


 …コイツ、ホントは、知っているかも、しれん…


 …いや、知っていなくても、わざと、笑ったのかも、しれん…


 …コイツ、自分が、少しばかり、いい男だと、思って、わざと笑って見せたのかも、しれん…


 …女を騙すのと、同じだ…


 …いい男が、意味深に笑う…


 それだけで、女は、余計に、そのイケメンに惹かれるものだからだ…


 だが、その手は、この矢田トモコには、通じん…


 そんな小手先のテクニックが、この矢田トモコ様に、通じると思うのは、間違い…


 大きな間違いだからだ…


 私は、思った…


 私は、思ったのだ…

 「…だったら、これから、どうなる?…」


 私は、急いで、聞いてやった…


 「…おそらく、遠からず、なにかが、起きます…」


 「…なにか、とは、なんだ?…」


 「…それは、ボクにも、わかりません…」


 「…わからないだと?…」


 「…アラブ諸国のどこかの国で、政変が起きるか?…」


 「…政変?…」


 「…民衆が、蜂起して、クーデターを起こして、政権が、倒れるとか?…」


 「…そんなことが?…」


 「…まあ、仮に、そこまで、いかなくても、なにがしかのことは、起こるでしょう…ただし…」


 「…ただし、なんだ?…」


 「…それが、表に現れるか、否かは、誰にも、わからないでしょう…」


 「…どういうことだ?…」


 「…昔、この日本で、オウム真理教という宗教がありました…お姉さんは、覚えていますか?…」


 「…覚えているさ…」


 「…だったら、話が、早いです…彼らは、サティアンという建物を作り、その中で、さまざまなことを、しました…ですが、誰も、彼らだけで、あんな大きな建物を作り、勝手に、生活していたとは、思えません…」


 「…どういうことだ?…」


 「…当時も、噂になりましたが、どこか、外国の政権が、彼らを援助したり、あるいは、日本国内の、政治家や、実業家が、援助した可能性は、大いにあります…」


 「…」


 「…ですが、真相は、藪の中…世間に、出てきません…」


 「…なぜ、出てこない?…」


 「…たぶん、それを、明らかにすることで、迷惑を被る人間が、いて、その人間たちが、当時も、そして、今現在も、力を持っている…だから、誰も、言えない…世間に、今もって、公表できない…そういうことでしょう…」


 「…」


 「…そして、おそらく、いえ、確実に、今、殿下の置かれている状況も、同じです…」


 「…同じ? なにが、同じなんだ?…」


 「…今回、殿下が、なにを、考え、どう動くかは、わかりません…ただ、殿下の動きが、公になることはない…」


 「…」


 「…アラブの至宝と呼ばれ、アラブ世界のために、いかに、殿下が、尽力しても、それが、公になることは、なく、歴史に残ることもない…そういうことです…」


 「…なんだと…歴史に残るだと?…」


 言いながら、私は、驚いた…


 実に、驚いた…


 それでは、日本で、言えば、西郷隆盛や坂本龍馬のような偉人のようでは、ないか?


 実は、その時代に、この矢田トモコが、いっしょに、いて、この矢田の活躍が、歴史に残らない…


 歴史から、この矢田の実績が、消える…


 なかったことになる…


 そういうことではないか?


 私は、それに、気付くと、頭に来た…


 頭に来たのだ…


 せっかく、この矢田が、命がけで、この日本のために、動いたのに、歴史に少しも、残らない…


 本当なら、矢田トモコ記念館ができても、いいはずだ…


 しかし、そんなものは、どこにもない…


 だから、それを、考えると、頭に来た…


 実に頭に来たのだ…


 そして、それが、私の表情に出たのだろう…


 私が、なにか、口にするまでもなく、葉問が、


 「…殿下は、無私の人です…」


 と、いきなり、言った…


 「…無私の人?…」


 「…つまり、自分の欲望では、決して、動かないし、見返りも、また期待しない…」


 「…」


 「…それゆえ、アラブの至宝なんです…」


 葉問が、力を込めて、言う…


 葉問が、力んで、言う…


 が、


 しかし、だ…


 葉問の言うことは、わかるが、私の脳裏には、あのアムンゼンの姿しか、思い浮かばんかった…


 誰が、見ても、3歳の幼児にしか、見えん姿しか、思い浮かばんかった…


 この前も、私と、いっしょに、ラーメンを食べた姿しか、思い浮かばんかった…


 ラーメンよりも、むしろ、お子様ランチが、似合う姿しか、思い浮かばんかった…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ