35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 48
なぜ、リンのことなのか?
それは、この葉敬が、大勢の人間を引き連れて、台湾から、やって来た…
その中に、リンとつるむもの…
あるいは、真逆に、リンを監視するものが、いるのでは、ないか?
ふと、思ったのだ…
なにしろ、人数が、多過ぎる…
正直、誰が、どんな役目で、今回、葉敬といっしょに、来日したのか、わからない…
だから、余計に、そんなことを、考えるのかも、しれない…
これが、葉敬の側近ならば、また違うことを、言うだろう…
なぜなら、葉敬の身近にいれば、誰が、どんな役割で、今回、葉敬といっしょに、来日したか、わかっているからだ…
私は、今、葉敬といっしょに、この部屋にいて、そんなことを、考えた…
そんなことを、考えたのだ…
立ちながら、そんなことを、考えたのだ…
すると、近くにいたリンダが、
「…お姉さん…どうしたの?…」
と、聞いた…
私は、リンダを見た…
リンダは、今、女の格好をしている…
なぜなら、このリンダは、今、リンダ・ヘイワースとして、ここに来たからだ…
ホントは、普段は、いつも、男装している…
男の格好をしている…
リンダ、いわく、その方が、楽だからだ…
このリンダは、ハリウッドのセックス・シンボル…
つまり、ハリウッドを代表する、いい女ということだ…
いい女=男なら、一度でも、こんな女と寝てみたいと、思わせる女だからだ…
だから、街中を歩くと、リンダ・ヘイワースと知らなくても、つい、見てしまう…
実に、いい女だからだ…
だから、疲れる…
気疲れする…
誰もが、見知らぬ、周囲の人間に、ジロジロ見られるのは、気疲れするものだからだ…
だから、普段は、男装している…
男装して、ヤンと、名乗っている…
男装=男の格好をしているわけだ…
しかしながら、今回は、男装は、していない…
堂々と、リンダ・ヘイワースの格好をしている…
つまり、おっぱいが見えそうな服と、パンツが、見えそうな短い、スカートを履いている(爆笑)…
要するに、自分のカラダのラインをわざと、強調するような服を着ている…
なぜなら、それが、リンダ・ヘイワースだからだ…
ハリウッドのセックス・シンボルだからだ…
だから、リンダ・ヘイワースで、いるときは、とことん、セクシーな服を着る…
ハッキリ言えば、水着や下着で、歩いているようなの…
だが、それこそが、リンダ・ヘイワース…
ハリウッドのセックス・シンボルだからだ…
そして、私が、そんなことを、考えていると、いつしか、リンが、私と同じように、リンダを見ているのが、わかった…
わかったのだ…
どうして、このリンが、リンダを見ているのか?
それは、この矢田にも、すぐにわかった…
この二人は、似た者同士だからだ…
このリンもまた、リンダと同じく、ド派手な格好をしている…
まるで、水着のような衣装を着ている(爆笑)…
やはり、目立つためだろう…
一目見て、台湾のチアガールのリンと、わかるためだろう…
ということは、どうだ?
このリンも、リンダと同じく、仕事で、来ている?…
台湾のチアガールのリンとして、来ている?…
いわゆる、プライベートでは、来ていない?…
私は、そう、思った…
私は、そう、思ったのだ…
すると、リンが、リンダに、
「…おキレイですね…」
と、声をかけた…
リンダは、いきなり、リンに話しかけられて、動揺した様子だった…
が、
さすがは、リンダ・ヘイワース…
ハリウッドのセックス・シンボルだけのことはある…
すぐに、優雅に、
「…ありがとう…」
と、リンに礼を言った…
すると、リンが、
「…実は、私も一部では、アジアのセックス・シンボルと言われているんですよ…」
と、言った…
おそらく、リンダに対抗するために、言った…
わざと、対抗するために、言ったのだ…
これには、リンダも、どう答えていいか、わからない様子だった…
明らかに、リンダが、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれていることに、対抗する言葉だったからだ…
だから、リンダは、困惑した様子で、
「…それは、おめでとうと、言っていいものか、どうか…」
と、言った…
困惑した様子で、言った…
が、
リンは、平気だった…
少しも、困惑した様子は、なかった…
むしろ、堂々と、
「…褒め言葉ですよ…これは…」
と、言った…
「…誉め言葉?…」
と、リンダ…
「…だって、そうでしょ? 男のひとから、そう言われるのって、誉め言葉でしょ?…」
リンがあっけらかんと、言う…
リンダは、明らかに困惑した様子だった…
同性の、しかも、初めて会った人間に、こんなことを、言われて、どうして、いいか、わからない様子だった…
いわば、対応に困った様子だった…
私は、どうして、いいか、考えた…
これを、見て、正直、助け舟を出すべきか、否か、悩んだ…
なにしろ、目の前で、やりとりをしている…
だから、リンダに、手を差し伸べるか、否か、悩んだのだ…
が、
悩んでいる暇は、なかった…
なぜなら、いきなり、リンの矛先が、私に向かったからだ…
「…で、35歳のシンデレラは、どう思うの?…」
と、いきなり、リンが、私に、聞いた…
「…セックス・シンボルって、呼ばれたい?…」
と、直球で、聞いた…
私は、動揺したが、なにより、頭に来た…
この矢田をバカにするが如く、私に質問をするリンに頭に来た…
が、
同時に、思った…
なぜ、このリンは、執拗に、この矢田に絡んで来るのか?
それが、謎だったからだ…
だから、改めて、その謎について、考えた…
考えたのだ…
すると、マリアが、いきなり、
「…セックス・シンボルって、なに?…」
と、聞いた…
リンは、子供に言われて、一瞬、戸惑ったが、すぐに、
「…男のひとが、いっしょに、寝たいと、思う女よ…」
と、答えた…
すると、
「…だったら、矢田ちゃんは、セックス・シンボルだよ…」
と、マリアが言った…
それを、聞いて、私は、仰天した…
いや、
私だけではない…
リンダを始め、その場にいる人間が、仰天した…
ずばり、固まった…
「…なんで、このお姉さんが、セックス・シンボルなの?…」
リンが、優しく、マリアに聞く…
3歳の子供に聞く…
当たり前だった…
この矢田がセックス・シンボルのわけは、ないからだ(苦笑)…
すると、マリアが、
「…だって、矢田ちゃんと、寝ると、あったかいんだよ…マリアもときどき矢田ちゃんと、いっしょに、寝るけど、すごく寝心地が、いいの…」
マリアが、あっけらかんと、言う…
それを、聞いて、爆笑したのが、葉敬だった…
誰よりも、大きな声で、声を上げて、笑った…
「…たしかに、そう思えば、お姉さんは、セックス・シンボルに決まっている…このお姉さんは、誰よりも、あったかい、心の持ち主だからね…」
それを、聞いて、リンが、絶句した…
「…」
と、絶句した…
きっと、言葉が、見つからないに違いなかった…
思いがけない展開に明らかに、戸惑っていた…
「…このお姉さんが、セックス・シンボル…35歳のシンデレラが、セックス・シンボル…」
と、ブツブツと、独り言を言った…
おそらく、自分でも、どうしていいか、わからない様子に見えた…
見えたのだ…
そして、葉敬が、優しく、
「…リンさんは、お姉さんが、羨ましいの?…」
と、聞いた…
直球で、聞いた…
このリンに直球で、聞いたのだ…
その質問に、リンは、固まった…
明らかに、固まった…
あまりの直球の質問に、リンは、どう答えていいか、わからない様子だった…
自分でも、どう答えていいか、わからず、葉敬の質問に固まっていた…
が、
しかしながら、答えないわけには、いかない…
葉敬の質問だからだ…
だから、答えないわけには、いかない…
無視することは、できなかった…
「…どうして…どうして、そう思うんですか?…」
と、まるで、声を振り絞るかのように、葉敬に、聞いた…
小さく、聞いたのだ…
そこには、つい今の今まで、この矢田にケンカを売るが、如く、ケンカ腰の態度は、微塵もなかった…
なかったのだ…
「…どうしてって、だって、リンさんは、ずっと、このお姉さんに、ケンカを売っているだろ?…」
葉敬が、優しく、言う…
「…一体、どうして、ケンカを売っているんだい? リンさんは、このお姉さんと、初対面だろ? …面識は、ないはずだ…」
葉敬の質問に、リンは、答えられなかった…
「…」
と、押し黙ったままだった…
「…このお姉さんが、羨ましい? …一般の家庭の出身のお嬢さんが、葉尊と、結婚したのが、羨ましい? だから、お姉さんに、ケンカを売っている? 自分が、葉尊と、結婚できなかったから、ケンカを売っている?…それとも…」
「…」
「…それとも、誰かに頼まれた? …このお姉さんに、わざと、ケンカを売って、私を困らせてやれと、でも、依頼を受けた?…」
葉敬が、言う…
お義父さんが、言う…
仰天の言葉を言う…
それまで、考えたことのない言葉を、言った…
私は、驚いた…
まさに、想定外の言葉だったからだ…




