番外編④
番外編④
妹の物語
王都ルミナリア。
夕方の庭。
エリシアはベンチに座っていた。
手には一冊の本。
表紙にはこう書かれている。
アルヴェリア王国物語
セレスティアが書いた本だった。
エリシアはページをめくる。
黒月戦争。
聖峰アウレリア。
赤魔法の少女。
そこには
リュカの活躍が書かれていた。
エリシアは小さく笑う。
「すごい子になったね」
昔のことを思い出す。
まだ小さかった頃。
リュカはよく転んでいた。
魔法も上手く使えなかった。
その度に
泣きながら言っていた。
「私なんて……」
「何もできない」
エリシアは本を閉じる。
庭の向こう。
訓練場が見える。
そこに
リュカがいた。
アルベルトと剣の練習をしている。
リュカが笑う。
「もう一回!」
アルベルトが少し笑う。
「元気だな」
二人の剣がぶつかる。
エリシアはその様子を見ていた。
あの子は変わった。
昔より
ずっと強くなった。
でも
一番変わったのは
きっと心だ。
エリシアは小さく呟く。
「もう大丈夫だね」
その時。
リュカがこちらに気づいた。
手を振る。
「お姉ちゃーん!」
エリシアも手を振る。
「なに?」
リュカが笑う。
「今度また旅に出るかも!」
エリシアは少し驚く。
でも
すぐに笑った。
「いいよ」
リュカが嬉しそうに言う。
「ほんと?」
エリシアは立ち上がる。
「当たり前でしょ」
「妹だもん」
リュカが走ってくる。
昔と同じ笑顔。
でも
もう迷いはない。
エリシアは思う。
この物語は
王国の物語かもしれない。
でも
自分にとっては違う。
これは
たった一人の妹の物語だ。
エリシアは本をもう一度開く。
最後のページ。
そこにはこう書かれていた。
赤魔法の少女は
仲間と共に
未来へ歩き続ける。
エリシアは微笑んだ。
「うん」
「その通りだね」
庭の空は
ゆっくり夕焼けに染まっていた。




