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第九十話

第90話

姉の言葉


王都ルミナリア、王城の庭。

戦争が終わって数日。

城の中は久しぶりに静かな空気だった。

王城の庭のベンチにリュカは一人で座っていた。

手には自分の短剣。

赤い魔石が夕日に光っている。

リュカは小さく呟いた。

「赤魔法……」

白と黒。

二つの魔力が混ざる力。

昔から怖かった。

もし間違えたら、もし力に飲まれたら

ゼルヴァの言葉を思い出す。

『その力は世界を変える』

リュカは短剣を握る。

「私なんかが……」

その時、後ろから声がした。

「何考えてるの?」

振り向く。

エリシアだった。

リュカは少し慌てる。

「えっと……」

エリシアは隣に座った。

「リュカ」

優しい声。

「悩んでるでしょ」

リュカは少し黙る。

そして言った。

「ねえ、お姉ちゃん」

「私の力って……」

短剣を見る。

赤い光。

「怖くない?」

エリシアは首を傾げた。

「どうして?」

リュカは答える。

「白と黒の力だよ」

「もし間違えたら」

「私もゼルヴァみたいに……」

言葉が止まる。

エリシアは少し笑った。

「ならないよ」

リュカが顔を上げる。

「どうして?」

エリシアは言った。

「だってリュカ」

「その力で何した?」

リュカは少し考える。

そして答える。

「……みんなを守った」

エリシアが頷く。

「そう」

「それが答え」

リュカは黙る。

エリシアは続けた。

「力ってね」

「使う人で決まるの」

リュカを見る。

優しい目。

「リュカは優しい」

「だからその力は」

「誰かを守る力になる」

少し沈黙。

エリシアが笑った。

「それに」

「私の妹でしょ?」

リュカが驚く。

エリシアは言う。

「あなたが妹で良かった」

「本当に」

リュカの目が少し潤む。

こんな風に言われたのは初めてだった。

自分の力。

自分の存在。

それを肯定してくれる人がいる。

リュカは小さく笑った。

「ありがとう」

夕日が庭を染めている。

その光の中でリュカの心は

少しだけ軽くなっていた。

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