第九話
第9話
初めての依頼
翌朝。
町の外の森。
朝露が草の上で光っていた。
リュカは地面をじっと見ている。
「……この辺」
アルベルトが少し驚く。
「もう分かるのか?」
リュカは頷いた。
森の匂い。
土の湿り気。
日当たり。
全部を見れば分かる。
「薬草はここ」
リュカは草を指差した。
細長い葉。
薄い紫色の花。
アルベルトがしゃがむ。
「これか?」
リュカは首を振る。
「違う」
そして隣の草を指差す。
「こっち」
アルベルトが見比べる。
ほとんど同じだ。
「見分けつくのか?」
リュカは少し得意そうに言った。
「葉っぱの形」
よく見ると、微妙に違う。
アルベルトは笑った。
「森の先生だな」
リュカは少し照れる。
二人は薬草を摘み始めた。
依頼書には
薬草10本
と書いてある。
しばらくして。
アルベルトが数えた。
「八本」
リュカは別の場所を見ていた。
「あと少し」
その時だった。
ぷるん。
小さな音。
リュカが振り向く。
「……スライム」
青い半透明の魔物が草の間から出てきた。
Fランク魔物。
アルが肩をすくめる。
「お出ましか」
スライムはゆっくり近づいてくる。
危険な魔物ではない。
だが油断はできない。
リュカが短剣を構える。
「私やる」
アルベルトは少し離れた。
「任せた」
リュカは手を前に出す。
小さく呟く。
「赤火」
ぽっ。
小さな炎が生まれる。
そして――
ドン。
炎弾がスライムに当たる。
ジュッ。
スライムが溶けた。
あっという間だった。
アルベルトが笑う。
「見事」
リュカは短剣をしまう。
「弱い」
森ではよく見た魔物だ。
二人は薬草を集め終えた。
アルが数える。
「十本」
リュカが袋を閉じる。
初依頼達成だ。
町へ戻る道。
アルベルトが言った。
「順調だな」
リュカは少し笑った。
「うん」
森の生活は辛かった。
でも。
その経験が今、役に立っている。
町の門が見えてきた。
リュカは冒険者証を握る。
初めての依頼。
初めての報酬。
胸が少しだけ高鳴っていた。




