第十話
第10話
初めての報酬
ギルドの扉を押し開けると、いつもの賑やかな声が響いた。
「お、また来たぞ」
「新人だな」
冒険者たちがちらりとリュカを見る。
でも昨日ほど怖くはなかった。
アルベルトがカウンターへ歩く。
「依頼完了だ」
薬草の袋を受付嬢に渡した。
受付嬢が一本ずつ確認する。
「……はい」
にこりと笑った。
「依頼達成です」
そしてカウンターの下から小さな袋を取り出す。
「報酬になります」
リュカは少し緊張しながら受け取った。
袋の中から出てきたのは――
銅貨。
五枚。
リュカはしばらくそれを見つめた。
「……これ」
アルベルトが言う。
「リュカが稼いだ金だ」
リュカは目を瞬かせた。
六年前。
村を追い出された時。
何も持っていなかった。
でも今。
自分の力で手に入れたお金。
胸が少し熱くなる。
「……ありがとう」
小さく呟いた。
受付嬢が優しく言う。
「初依頼お疲れ様でした」
アルベルトが笑う。
「いいスタートだな」
リュカは小さく頷いた。
その時。
後ろの酒場から、低い声が聞こえた。
「新人か」
振り向く。
そこにいたのは――
大きな男だった。
身長はアルベルトより頭一つ高い。
筋肉質な体。
灰色の耳。
そして鋭い金色の目。
狼獣人。
男は腕を組んでこちらを見ていた。
「珍しい魔法を使っていたな」
リュカの心臓が少し跳ねる。
見られていた。
アルベルトが軽く肩をすくめた。
「見てたのか」
男は静かに言う。
「少しな」
そして立ち上がる。
足音が重い。
リュカの前で止まった。
「名前は?」
リュカは少し緊張しながら答えた。
「……リュカ」
男は頷く。
「ガルヴァンだ」
短い自己紹介。
それからアルベルトを見る。
「お前の仲間か」
アルベルトが答える。
「まあ、そんなところだ」
ガルヴァンはリュカをじっと見た。
そして小さく言った。
「悪くない動きだった」
それだけ言うと、酒場へ戻っていった。
リュカは少し驚いた顔をしている。
アルベルトが笑う。
「気にするな」
「ああいう奴だ」
リュカは聞いた。
「知り合い?」
アルベルトは首を振る。
「有名人」
リュカが首をかしげる。
アルベルトは言った。
「この町で一番強い冒険者だ」
リュカは驚いた。
「あの人が……」
アルベルトは笑った。
「冒険者の世界は広い」
リュカは銅貨を握る。
まだ始まったばかり。
でも――
少しずつ。
確実に。
世界が広がっている。




