第十一話
第11話
狼獣人の戦士
翌日の朝。
冒険者ギルドはいつもより静かだった。
朝早い時間は、依頼を受ける冒険者が集まる時間だ。
リュカとアルベルトは掲示板の前に立っていた。
依頼書がたくさん貼られている。
アルベルトが腕を組む。
「さて」
「次はどれにするか」
リュカは一枚の紙を見ていた。
薬草採取
また同じ依頼だ。
安全だけど――
アルベルトは首を振った。
「それもいいが」
「少し戦闘も経験した方がいい」
リュカは少し緊張する。
「戦うの?」
アルベルトは掲示板から別の紙を取った。
依頼:巨大ネズミ討伐
ランク:E
町の地下に住み着いた魔物。
数匹。
リュカは紙を見つめる。
ゴブリンよりは弱い。
でも。
魔物討伐だ。
アルベルトが言う。
「どうする?」
リュカは少し考えた。
森で生きてきた。
戦いは避けられない。
「……やる」
アルベルトが笑った。
「決まりだ」
その時。
背後から低い声がした。
「その依頼」
振り向く。
そこに立っていたのは――
ガルヴァンだった。
狼獣人の戦士。
腕を組んで二人を見下ろしている。
アルベルトが軽く笑う。
「また会ったな」
ガルヴァンは依頼書を見る。
「新人がやるには少し危険だ」
リュカは少しむっとする。
「できる」
ガルヴァンは一瞬だけ目を細めた。
昨日の戦いを思い出しているようだった。
そして言う。
「……まあ」
「無理ではない」
アルベルトが聞く。
「何か用か?」
ガルヴァンは少し考えてから答えた。
「暇だ」
短い言葉。
「その依頼」
「同行してやる」
リュカが驚く。
「え?」
アルも少し意外そうだった。
「いいのか?」
ガルヴァンは肩をすくめる。
「新人が死ぬと後味が悪い」
ぶっきらぼうな言い方だった。
でも。
どこか面倒見の良さが感じられる。
リュカは少し迷った。
こんな強そうな人と一緒なら安心だ。
でも――
頼ってばかりも嫌だった。
アルベルトが笑う。
「いいじゃないか」
「心強い」
ガルヴァンは何も言わない。
ただ剣を背負い直した。
巨大な大剣。
普通の人では持てない重さだ。
アルベルトが受付へ行く。
「この依頼受ける」
受付嬢が頷いた。
「三人ですね」
依頼書に印が押される。
アルベルトが戻ってくる。
「場所は町の地下水路だ」
リュカが聞く。
「地下?」
アルベルトが説明する。
「町の下には水路がある」
「そこに魔物が住み着くことがある」
ガルヴァンが歩き出した。
「行くぞ」
短い言葉。
リュカとアルベルトも後を追う。
ギルドの扉を出る。
空は晴れていた。
でも。
これから向かう場所は――
暗い地下。
リュカは短剣を握った。
三人の冒険者。
その最初の探索が
今
始まろうとしていた。




