第十二話
第12話
地下水路
町の外れ。
石造りの小さな建物の前に三人は立っていた。
入口には鉄の格子。
その奥には暗い階段が続いている。
アルベルトが言う。
「ここが地下水路だ」
リュカは中を覗き込んだ。
ひんやりした空気。
薄暗い通路。
水の流れる音が聞こえる。
「……暗い」
ガルヴァンが扉を押し開けた。
ギィ……
重たい音が響く。
「行くぞ」
三人は階段を降りた。
地下は想像以上に広かった。
石の通路。
足元には水路が流れている。
ところどころに松明が灯っているが、光は弱い。
リュカは小さく呟いた。
「迷いそう」
アルベルトが頷く。
「だから新人は単独で来ない」
その時だった。
ガルヴァンの耳がぴくりと動いた。
「……来る」
低い声。
次の瞬間。
通路の奥から走る音。
キィィィ!
巨大ネズミが現れた。
普通のネズミの三倍はある。
鋭い牙。
赤い目。
一匹ではない。
三匹。
リュカが短剣を握る。
アルベルトが言う。
「リュカ、後ろ!」
だが。
ガルヴァンはもう動いていた。
ドンッ!
地面を蹴る。
大剣を振り上げる。
「はあっ!」
剣が横に振られた。
ザンッ!
一匹の巨大ネズミが真っ二つになる。
リュカの目が丸くなる。
(速い……!)
二匹目が飛びかかる。
ガルヴァンは一歩踏み込む。
ドン。
体当たり。
ネズミが壁に叩きつけられる。
そして――
ザシュッ。
大剣が突き刺さった。
残り一匹。
ネズミがリュカへ向かう。
アルベルトが叫ぶ。
「リュカ!」
リュカは落ち着いていた。
手を前に出す。
「赤火」
炎弾が飛ぶ。
ドン!
ネズミが燃え上がる。
そのまま倒れた。
静寂。
地下水路に水の音だけが残る。
アルベルトが口笛を吹いた。
「すごいな」
ガルヴァンは剣の血を振り払った。
「普通だ」
リュカは少し驚いた顔で見ていた。
あっという間だった。
三匹の魔物が
数秒で倒された。
アルベルトが笑う。
「町一番の冒険者ってのは伊達じゃないな」
ガルヴァンは何も言わない。
ただリュカを見る。
「お前も悪くない」
短い言葉。
リュカは少し照れた。
その時だった。
奥の通路から音がした。
ガサガサ……
アルベルトが眉をひそめる。
「まだいるな」
ガルヴァンが大剣を構える。
「群れか」
リュカも短剣を握る。
暗い通路の奥から――
大量の赤い目が光っていた。
巨大ネズミの群れ。
地下水路の戦いは
まだ終わらなかった。




