第十三話
第13話
群れ
地下水路の奥。
暗闇の中で――
赤い目がいくつも光っていた。
ガサガサ……
無数の足音。
リュカが小さく呟く。
「……多い」
アルベルトが数える。
「五……いや」
「七匹」
巨大ネズミの群れだった。
ガルヴァンが大剣を肩に乗せる。
「まとめて来い」
挑発するように言う。
ネズミたちは一斉に走り出した。
キィィィ!!
狭い通路を埋めるように突っ込んでくる。
アルベルトが言う。
「ガルヴァン!」
ガルヴァンは一歩前へ出た。
「下がっていろ」
大剣を両手で握る。
深く息を吸う。
そして――
振り抜いた。
「はああっ!」
ドォン!!
空気が震えた。
巨大な横薙ぎ。
ザンッ!
三匹のネズミが一撃で吹き飛ぶ。
だが残りは止まらない。
一匹が横から飛びかかる。
アルベルトが剣を抜く。
「させるか!」
ザシュッ!
ネズミの体が裂けた。
残り三匹。
リュカは状況を見ていた。
(正面はガルヴァン)
(横はアル)
でも。
一匹が後ろへ回り込んでいる。
「アル!」
アルベルトが振り向く。
だが間に合わない。
ネズミが飛びかかった。
その瞬間。
リュカが走る。
「はやあし!」
赤い光が足元を包む。
一瞬で距離を詰める。
短剣を振る。
「赤刃!」
炎をまとった刃。
ザシュッ!
ネズミの体が焼き裂かれる。
アルベルトが驚く。
「助かった」
リュカは息を整えた。
だが。
最後の二匹が同時に襲ってくる。
ガルヴァンが笑った。
「いい動きだ」
そして。
大剣を振り上げる。
「終わりだ」
ドンッ!
地面を踏み込む。
次の瞬間。
剣が落ちた。
ズドォン!!
衝撃が通路に響く。
二匹の巨大ネズミが叩き潰された。
静寂。
水の流れる音だけが残る。
アルベルトが剣を収めた。
「全部か?」
ガルヴァンが周囲を見回す。
「……ああ」
戦いは終わった。
リュカは壁に手をついて息を整える。
アルベルトが笑う。
「初ダンジョンで群れ討伐」
「なかなかだな」
リュカは少しだけ笑った。
ガルヴァンが言う。
「新人にしては上出来だ」
それから通路の奥を見た。
「巣がある」
アルベルトが頷く。
「根本を潰すか」
三人は奥へ進む。
少し歩くと、小さな空洞があった。
そこには巣。
そして――
袋が置かれていた。
アルベルトが眉を上げる。
「誰かの荷物?」
ガルヴァンが拾い上げる。
中には工具が入っていた。
ハンマー。
金属部品。
そして小さな爆弾。
アルベルトが呟く。
「鍛冶師の道具だな」
ガルヴァンが袋を見る。
袋の内側には刻印があった。
バルドック工房
リュカが首をかしげる。
「誰?」
アルが笑う。
「この町のドワーフ鍛冶師だ」
「かなり有名な人だぞ」
ガルヴァンが袋を肩にかけた。
「返しに行く」
アルが頷く。
「ちょうどいい」
リュカを見る。
「面白い人だぞ」
地下水路を出る三人。
この出会いが
後に
パーティーの重要人物
を呼び寄せることになる。




