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第八十五話
第85話
黒月の主
王国の中央。
聖峰アウレリア。
白い雪に覆われた神聖な山。
その頂近く、古い石の神殿があった。
神殿の奥。
巨大な魔法陣。
黒い光が静かに揺れている。
その前に
一人の男が立っていた。
黒いローブ。
長い銀髪。
静かな目。
男の前に
黒月の魔導師たちが跪いている。
その一人が言った。
「ヴァルグ将軍が敗北しました」
静寂。
だが
男は怒らなかった。
「そうか」
落ち着いた声。
魔導師が続ける。
「王国軍が勝利しています」
男は空を見上げた。
聖峰の空。
静かな夜。
「構わない」
魔導師たちは驚いた。
男はゆっくり魔法陣を見る。
巨大な黒い紋様。
それは
王都の地下魔法陣と
同じ形だった。
男が言う。
「準備は整った」
その時
魔法陣が少し光る。
ゴォォ……
山の空気が震える。
魔導師が震える声で言った。
「主よ」
男は静かに答える。
「我が名は」
ゆっくり振り向く。
赤い瞳。
「ゼルヴァ」
黒月の主。
闇の魔導師。
男は続けた。
「世界の均衡は」
「間違っている」
手を掲げる。
黒い魔力が広がる。
「だから」
「我々が作り直す」
聖峰アウレリア。
その山の奥で
世界を揺るがす計画が
静かに進んでいた。
王都ルミナリア。
アルベルトたちは
まだその事実を知らない。
だが
黒月の戦争は
最終段階へ
近づいていた。




