第七話
第7話
初めての町
街道を歩いて半日ほど。
遠くに石の建物が見えてきた。
「見えてきたな」
アルベルトが言う。
リュカは目を細めた。
木々の間から現れたのは――
小さな城壁。
そしてその中に広がる町だった。
「……町」
思わず声が漏れる。
リュカは足を止めた。
人がいる。
たくさん。
荷車を引く商人。
旅人。
兵士。
今まで見たことのない光景だった。
アルベルトが振り返る。
「大丈夫か?」
リュカは少し緊張しながら頷く。
「うん……」
二人は門へ向かう。
門の前には見張りの兵士が立っていた。
アルベルトが軽く手を上げる。
「旅人だ」
兵士は二人を見た。
特に問題はなさそうだ。
「通っていいぞ」
簡単な確認だけで通してくれる。
リュカは驚いた。
(こんな簡単なんだ……)
そして。
門をくぐった瞬間――
世界が変わった。
「わぁ……」
思わず声が出る。
町の通りには店が並んでいた。
野菜を売る店。
肉屋。
パン屋。
鍛冶屋。
色んな匂いが混ざっている。
人の声も賑やかだ。
「安いよ安いよ!」
「焼きたてのパンだ!」
「ポーション入荷したぞ!」
リュカはきょろきょろと周りを見る。
まるで子供のようだった。
アルベルトが少し笑う。
「初めての町だもんな」
リュカは頷く。
「すごい……」
こんなに人がいる場所。
初めてだった。
その時。
いい匂いが漂ってきた。
パンの香りだ。
リュカのお腹が鳴る。
「……」
アルベルトが笑った。
「腹減ったな」
リュカは恥ずかしそうにうつむく。
アルベルトは近くのパン屋へ向かった。
「おばちゃん、パン二つ」
店の女が紙袋を渡す。
アルベルトは銅貨を払った。
そしてリュカにパンを渡す。
「ほら」
リュカは少し戸惑う。
「いいの?」
「もちろん」
アルは笑う。
「旅の仲間だからな」
リュカはゆっくりパンをかじった。
ふわふわの生地。
温かい。
「……おいしい」
目が少し潤む。
こんなパン、久しぶりだった。
アルベルトは嬉しそうに言う。
「だろ?」
しばらく歩くと、大きな建物が見えてきた。
石造りの建物。
入口の上には大きな看板。
剣と盾の紋章。
アルベルトが指差す。
「あれだ」
リュカが首をかしげる。
「あれ?」
「冒険者ギルド」
リュカはその建物を見上げた。
扉の中からは大きな声が聞こえる。
笑い声。
酒の匂い。
そして――
武器を持った人たち。
アルベルトが言った。
「ここが」
扉を開ける。
「冒険者の集まる場所だ」
リュカの心臓が少し速くなる。
新しい世界。
新しい人生。
その扉が
今
開いた。




