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第五十九話

第59話

龍の巣


飛竜の死体のそば。

山の風が強く吹いていた。

アルベルトは空を見ていた。

雲の向こう。

さっきの咆哮。

間違いなく

もっと大きな存在だった。

バルドックが飛竜を見下ろす。

「素材は良さそうだな」

ガルヴァンが首を振る。

「今は無理」

「匂いが広がる」

血の匂いは

魔物を呼ぶ。

アルベルトが頷いた。

「先に進む」

リュカが聞く。

「ドラゴン?」

セラフィーナが静かに言う。

「おそらく」

「龍種です」

セレスティアが目を輝かせる。

「本物の龍種……」

研究者としては

かなり興味があるらしい。

エリシアが少し困った顔をする。

「喜ぶところじゃないよ」

セレスティアが少し照れた。

「そうですね……」

七人は山を登っていく。

岩場が増えてきた。

風も強くなる。

ガルヴァンが突然止まった。

「待て」

アルベルトが聞く。

「どうした」

ガルヴァンは地面を見ていた。

大きな爪跡。

岩が削れている。

「龍種」

低い声。

リュカがその跡を見る。

「大きい……」

爪だけで

手のひらほどある。

バルドックが言う。

「これはワイバーンじゃないな」

その時。

セラフィーナが前を見ていた。

「……あれ」

山の斜面。

岩の隙間。

暗い穴。

アルベルトが目を細める。

「洞窟か」

近づく。

入口は大きい。

人が数人並んで入れる。

中から

冷たい風が吹いている。

セレスティアが小さく言う。

「魔力が強いです」

ガルヴァンも頷いた。

「中」

「強い気配」

アルベルトが静かに言う。

「巣か」

龍種の巣。

その可能性が高い。

リュカは洞窟の奥を見た。

暗闇。

深く続いている。

「行くの?」

アルベルトは少し考えた。

そして答える。

「調査が目的だ」

「入る」

バルドックが笑う。

「ダンジョンだな」

エリシアがリュカを見る。

「リュカ」

「無理しないでね」

リュカが頷く。

「うん」

ガルヴァンが大剣を握る。

「先に行く」

アルベルトも剣を抜いた。

「隊列を組む」

北部山岳地帯。

その奥にある洞窟。

そこは

ただの巣ではない。

七人はまだ知らない。

この洞窟の奥に

山の主が眠っていることを。

そして

その存在が

この山の均衡を

崩していることを。

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