第五十八話
第58話
山の飛竜
北部山岳地帯。
巨大な影が地面に降り立つ。
ドォン!!
灰色の鱗。
鋭い牙。
大きく広がる翼。
ワイバーン。
だが
王都で戦った個体より
明らかに大きい。
「ギャアア!!」
咆哮が山に響いた。
アルベルトが剣を抜く。
「前衛!」
ガルヴァンが前へ出る。
「任せろ」
飛竜が爪を振り下ろす。
ドォン!!
ガルヴァンが大剣で受け止める。
衝撃。
地面が少し沈む。
ガルヴァンが低く言う。
「重い」
アルベルトが横から斬り込む。
ザン!
鱗に刃が当たる。
だが
深くは入らない。
「硬いな」
バルドックが爆弾を取り出す。
「ならこれだ!」
投げる。
ドォン!!
爆発。
飛竜がよろめく。
セレスティアが叫ぶ。
「翼です!」
「飛ばせると危険!」
アルベルトが頷く。
「翼を狙う!」
リュカが短剣を握る。
魔導短剣の赤い魔石が光る。
「赤火!」
炎が飛ぶ。
ドン!
翼に炎が当たる。
飛竜が怒りの声を上げる。
「ギャア!」
その瞬間。
飛竜が大きく羽ばたいた。
強風。
岩が飛ぶ。
リュカがバランスを崩す。
エリシアが叫ぶ。
「リュカ!」
白い光。
「ヒール!」
リュカが立ち直る。
その時。
ガルヴァンが言った。
「隙」
飛竜の翼が岩に当たっている。
動きが止まった。
アルベルトが叫ぶ。
「今だ!」
リュカが走る。
「はやあし!」
赤い光。
一瞬で距離を詰める。
翼の付け根。
そこは鱗が薄い。
リュカが叫ぶ。
「赤刃!」
炎の刃が燃え上がる。
ザシュ!!
翼の付け根が斬れる。
「ギャアア!!」
飛竜が大きくよろめいた。
セラフィーナが手を掲げる。
「聖光」
白い光が降り注ぐ。
飛竜の動きが鈍る。
アルベルトが剣を振り上げた。
「終わらせる!」
渾身の一撃。
ザン!!
刃が首を深く斬る。
飛竜の体が揺れる。
そして
ゆっくり崩れ落ちた。
ドシン……
山に静寂が戻る。
リュカが息を吐いた。
「はあ……」
エリシアがすぐ駆け寄る。
「リュカ、大丈夫?」
「怪我ない?」
リュカが笑う。
「うん」
バルドックが笑った。
「いい戦いだったな」
ガルヴァンも頷く。
「連携よかった」
アルベルトは倒れた飛竜を見ていた。
だが
表情は少し険しい。
セレスティアが聞く。
「どうしました?」
アルベルトは山の奥を見ていた。
そして言う。
「この飛竜」
「逃げていた」
ガルヴァンが頷く。
「同感」
「もっと強いのがいる」
セラフィーナが小さく言った。
「龍種です」
山の奥。
雲の向こう。
そこに
本当の主がいる。
リュカは山頂を見上げた。
その時。
遠くで
大きな咆哮が響いた。
「グオオオオォォ!!」
山全体が震える。
バルドックが呟く。
「……本物だな」
北部山岳地帯。
その頂に
竜がいる。




