第六十話
第60話
龍の洞窟
北部山岳地帯。
山の斜面に開いた巨大な洞窟。
アルベルトは入口を見上げた。
岩が削れている。
明らかに
自然の洞窟ではない。
何か大きな生き物が
長い時間をかけて作った場所。
「龍の巣だな」
バルドックが言う。
ガルヴァンが頷いた。
「匂いが強い」
魔物の匂い。
血。
そして
もっと重い気配。
アルベルトが言った。
「隊列を組む」
先頭。
ガルヴァン。
その後ろにアルベルト。
中央に
リュカ、セレスティア、セラフィーナ。
最後尾に
エリシアとバルドック。
ゆっくり洞窟に入る。
中は暗かった。
リュカが言う。
「暗いね」
エリシアが手を掲げる。
「ライト」
白い光が灯る。
洞窟の壁が照らされた。
岩肌には
深い爪跡がある。
バルドックが言う。
「相当でかいぞ」
ガルヴァンが前を見ていた。
「まだ奥」
歩き続ける。
洞窟は広い。
まるで地下迷宮のようだ。
セレスティアが小さく言う。
「魔力が濃いです」
セラフィーナも頷いた。
「この場所」
「均衡が乱れています」
リュカが少し不安そうに聞く。
「大丈夫かな」
エリシアが優しく言う。
「大丈夫」
「みんないるよ」
その時。
ガルヴァンが止まった。
「待て」
アルベルトが聞く。
「何だ」
ガルヴァンは地面を見ていた。
骨。
魔物の骨。
山狼。
ゴブリン。
そして
飛竜の骨もある。
バルドックが低く言う。
「食われてるな」
この洞窟の主が。
ガルヴァンが言った。
「奥」
「動いた」
その瞬間。
洞窟の奥から
低い音が響いた。
ゴォォ……
空気が震える。
リュカが息を呑む。
「今の……」
アルベルトが剣を握る。
「警戒」
だが
まだ姿は見えない。
セラフィーナが静かに言った。
「これは」
「龍種の気配です」
洞窟の奥。
暗闇のさらに奥。
そこに
山の主がいる。
七人は
まだその姿を見ていない。
だが確実に
近づいていた。




