第三十九話
第39話
王立魔導研究院の少女
冒険者ギルドの中。
ざわめきが少し広がっていた。
ワイバーン討伐の話が伝わっている。
その時。
二階から降りてきた少女が
リュカの前で立ち止まった。
金色の髪。
青い瞳。
小柄な体。
だがローブの胸には
王立魔導研究院の紋章。
少女はリュカをじっと見つめた。
まるで観察するように。
リュカが少し困った顔をする。
「えっと……?」
少女が口を開いた。
「あなた」
「赤魔法使いですね?」
リュカが驚く。
「え?」
バルドックが小さく笑った。
「さすが研究院だな」
少女は真剣な顔のままだった。
「私」
「赤魔法を研究しています」
リュカは目を丸くする。
「研究?」
少女はこくりと頷いた。
「はい」
それから少しだけ笑った。
「自己紹介が遅れました」
軽くローブの裾を持ち上げる。
「セレスティアです」
「王立魔導研究院の研究員です」
十四歳とは思えない落ち着いた礼儀だった。
エリシアが少し驚く。
「研究院?」
バルドックが言う。
「王国の魔法研究の中心だ」
セレスティアはリュカの手を見ていた。
そこに残る
赤い魔力の痕跡。
「白と黒」
「両方の魔力反応」
小さく呟く。
「やっぱり……」
リュカは少し緊張していた。
村では
赤魔法は
忌み子の力だった。
だが。
この少女は違う。
怖がっていない。
むしろ――
興味を持っている。
セレスティアが顔を上げた。
「少し」
「お話を聞かせてもらえませんか?」
その時。
アルベルトが口を開いた。
「研究か?」
セレスティアはアルベルトを見た。
そして。
一瞬だけ
表情が止まった。
青い瞳が少し見開く。
「……」
だがすぐに
いつもの落ち着いた顔に戻る。
「はい」
アルベルトは静かに頷いた。
「構わない」
リュカが小さく聞いた。
「アル?」
アルベルトは少し笑った。
「悪い話じゃない」
セレスティアは
もう一度リュカを見た。
その目は
まるで
宝物を見つけた研究者のようだった。
王都ルミナリア。
その中心で――
赤魔法は
新しい出会いを迎えようとしていた。




