第二十一話
第21話
巡回白魔法師エリシア
夕暮れ。
市場の騒ぎはすっかり落ち着いていた。
巨大狼の死体は兵士が運んでいった。
リュカとエリシアは町の小さな広場に座っている。
隣にはアルベルトとガルヴァン。
エリシアはまだ少し涙目だった。
でも表情は穏やかだ。
リュカの手をぎゅっと握っている。
まるで離したくないように。
エリシアが言った。
「本当に……生きててよかった」
リュカは少し照れくさい。
「森で暮らしてた」
エリシアの目が驚きで大きくなる。
「森で……?」
リュカは頷いた。
「六年間」
アルベルトが苦笑する。
「普通は生きていけない」
ガルヴァンも頷いた。
「強い」
エリシアはリュカを見つめた。
その目には誇らしさがあった。
「すごいわ」
リュカは少し恥ずかしそうに俯く。
その時。
アルベルトが立ち上がった。
「そうだ」
「まだ自己紹介してなかったな」
エリシアを見る。
「俺はアルベルト。」
軽く手を上げる。
「旅の剣士だ」
エリシアは礼儀正しく頭を下げた。
「エリシアです」
「巡回白魔法師をしています」
ガルヴァンも短く言う。
「ガルヴァン」
それだけだった。
エリシアは少し驚いた顔をする。
「狼獣人……」
ガルヴァンは気にしていない。
アルベルトが説明する。
「今は一緒に冒険してる」
エリシアは少し考えた。
そしてリュカを見る。
「リュカ」
優しい声。
「あなた」
「冒険者なの?」
リュカは頷く。
「なったばかり」
エリシアは嬉しそうに笑った。
「そう」
「素敵ね」
少し沈黙。
それからエリシアが言った。
「私も」
「しばらくこの町に滞在する予定なの」
アルベルトが聞く。
「仕事か?」
エリシアは頷いた。
「巡回白魔法師だから」
「近くの村を回って治療や浄化をするの」
それから少し照れたように言う。
「……でも」
リュカを見る。
「あなたと一緒にいられるなら」
「嬉しい」
リュカの胸が温かくなる。
六年間。
会えなかった姉。
でも今。
こうして隣にいる。
アルベルトが笑う。
「なら決まりだな」
リュカが首をかしげる。
「何が?」
アルベルトは言った。
「一緒に行動しよう」
エリシアを見る。
「ヒーラーは貴重だ」
ガルヴァンも頷く。
「助かる」
エリシアは少し驚いた。
でも。
すぐに微笑む。
「いいの?」
アルベルトが肩をすくめる。
「もちろん」
リュカを見る。
「どうする?」
リュカは迷わなかった。
小さく笑う。
「一緒がいい」
エリシアの目が少し潤む。
「……ありがとう」
こうして。
リュカの旅に
新しい仲間が加わった。
巡回白魔法師。
そして――
姉。




