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第二十話

第20話

姉妹


市場は静まり返っていた。

倒れた巨大狼。

逃げ惑っていた人々も、今は遠くで様子を見ている。

その中で。

二人だけが動けなかった。

エリシアと――

リュカ。

エリシアの瞳が震えている。

信じられないものを見るような目だった。

「……リュカ?」

小さな声。

六年間、何度も呼んだ名前。

リュカは動けなかった。

胸が苦しい。

逃げたい気持ちと。

逃げたくない気持ち。

その間で揺れていた。

エリシアが一歩近づく。

「リュカ……」

声が震えている。

涙が目に溜まっていた。

リュカは目を伏せる。

「……ごめん」

思わず言葉が出た。

エリシアが止まる。

リュカは小さく言った。

「私」

「村から追い出されて」

「お姉ちゃんも……」

言葉が詰まる。

怖かった。

もし。

本当に見捨てられていたら。

エリシアの顔が歪んだ。

次の瞬間――

走り出した。

「リュカ!」

ぎゅっと抱きしめる。

強く。

強く。

リュカは驚いた。

「お姉ちゃん……?」

エリシアは泣いていた。

声を上げて。

「ごめんなさい……!」

涙が止まらない。

「守れなかった……!」

「あなたを……!」

リュカの目が大きくなる。

エリシアは震える声で言った。

「ずっと探してた」

「六年間」

「どこにいるのか分からなくて……」

リュカの胸が熱くなる。

六年間。

一人だと思っていた。

でも。

違った。

エリシアは泣きながら言う。

「生きててくれて……」

「よかった……!」

リュカの目から涙がこぼれた。

ポロポロと落ちる。

「……お姉ちゃん」

ぎゅっと抱き返す。

六年ぶりの温もりだった。

遠くでアルベルトが静かに見ていた。

ガルヴァンも腕を組んでいる。

アルベルトが小さく笑う。

「よかったな」

ガルヴァンが言う。

「ああ」

市場の空気が少しずつ戻る。

人々が安心したように話し始める。

でも。

リュカには聞こえなかった。

ただ。

姉の腕の中で

泣いていた。

六年間の孤独が

少しずつ

溶けていくようだった。

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