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第二話

第2話

森で生きる少女


森の奥で、短い悲鳴が響いた。

「ギィッ!」

小柄な影が素早く動く。

次の瞬間。

赤い炎が閃いた。

「――赤火」

ボッ!

炎弾がゴブリンに直撃する。

魔物はその場に倒れた。

焦げた匂いが漂う。

少女はしばらく警戒してから、ゆっくり息を吐いた。

「……もういないよね」

赤い髪。

深紅の瞳。

六年前、村を追放された少女――

リュカ

年齢は十六歳になっていた。

リュカは倒したゴブリンを見下ろす。

「ごめんね」

小さく呟く。

だが、この森では躊躇は命取りだった。

魔物は毎日のように現れる。

戦わなければ、生きられない。

リュカは短剣を抜く。

慣れた手つきで魔石を取り出す。

ゴブリンの胸に埋まっている小さな結晶。

これが冒険者の収入源だ。

もっとも――

リュカはまだ冒険者ではない。

ただの

森で生きる少女だ。

魔石を袋に入れると、リュカは周囲を見渡す。

静かな森。

木漏れ日が地面に落ちている。

六年間。

この森が、リュカの世界だった。

最初は怖かった。

夜は泣きながら過ごした。

でも。

今は違う。

「……はやあし」

赤い光が足元を包む。

次の瞬間。

リュカの体が風のように走り出す。

森の中を軽やかに駆け抜ける。

獣のように静かで速い。

しばらくして、リュカは小さな小屋に戻った。

木と枝で作った簡素な住処。

六年かけて少しずつ作った。

リュカは荷物を置くと、焚き火を起こす。

生活魔法を使うほど魔力に余裕はない。

だから普通の火打石だ。

やがて小さな炎が揺れ始める。

「……今日も生きてる」

ぽつりと呟く。

それは習慣だった。

生きていることを確認するための言葉。

焚き火の前で、リュカは空を見上げる。

青空。

森の上を鳥が飛んでいる。

ふと。

六年前のことを思い出した。

村。

姉。

泣いていたエリシア。

リュカは小さく首を振った。

「考えない」

そうしないと、涙が出そうになるから。

その時だった。

ガサッ。

森の奥で音がした。

リュカの体が固まる。

ゆっくり短剣を握る。

魔物かもしれない。

いや――

音は複数。

足音。

人間?

この森に?

リュカは木の陰に隠れた。

息を殺す。

しばらくして。

声が聞こえた。

「くそっ、数が多い!」

男の声。

そして。

ギャギャッ!!

ゴブリンの叫び。

戦闘の音だった。

リュカは目を見開く。

人が戦っている。

この森で。

そして次の瞬間。

一人の少年が木の間から飛び出してきた。

金色の髪。

剣を持っている。

その後ろには――

大量のゴブリン。

少年は舌打ちした。

「囲まれたか」

その時。

リュカは無意識に動いていた。

短剣を握る。

手に赤い炎が灯る。

「……赤火」

炎弾が飛んだ。

ドン!

ゴブリンが吹き飛ぶ。

少年が驚いて振り向いた。

そして。

初めて二人の目が合った。

森で生きてきた少女。

そして――

未来の王子。

リュカとアルベルトの出会いだった。

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