表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/70

第一話

第1話

忌み子


ルメール村の朝は、いつも静かだった。

森の霧がまだ残る中、村の小さな広場には人が集まっていた。

ざわざわと、重たい空気が流れている。

その中心に立っているのは、一人の少女だった。

まだ十歳ほど。

赤い髪。

そして――

怯えた瞳。

少女の名は、リュカ。

「……どうして」

小さな声で呟いた。

しかし誰も答えない。

村人たちは、みな一歩距離を取っていた。

まるで、触れてはいけないものを見るように。

その視線の先には――

リュカの手のひら。

そこに、赤い炎が揺れていた。

「黒魔法だ……」

誰かが震えた声で言った。

「違う!」

リュカは慌てて首を振る。

「これは黒魔法じゃ……」

言葉が続かなかった。

自分でも分からない。

ただ、森で魔物に襲われた時。

必死で手を伸ばした瞬間。

炎が生まれたのだ。

赤い炎。

村の誰も見たことのない魔法だった。

「危険だ」

村の神官が前に出る。

白い神官服を着た老人だ。

「その魔法は黒の力だ」

「違います!」

リュカは叫んだ。

涙が滲む。

「私はそんなこと……」

「黙りなさい」

冷たい声。

村長だった。

杖をつきながら前に出る。

「ルメール村は、白魔法の村だ」

静かな声。

「黒の力は許されない」

周囲の村人が頷く。

この村では

白魔法こそ正しい力

黒魔法は

恐れるべきもの

そう信じられていた。

リュカの胸が締め付けられる。

「でも……」

震える声。

「私、この村で生まれて……」

「それでもだ」

村長は言った。

「危険な力は排除する」

その言葉が落ちた瞬間。

リュカの世界が崩れた。

「……え?」

村長はゆっくり告げる。

「リュカ」

「お前を――」

冷たい宣告。

「この村から追放する」

風が吹いた。

広場の空気が凍りつく。

リュカの視界が揺れた。

「……どうして」

誰も答えない。

ただ、村人たちは目を逸らす。

その中で一人だけ。

泣いている少女がいた。

金色の髪。

リュカの姉。

エリシアだった。

「待ってください!」

エリシアが前に出る。

「リュカは悪くありません!」

「まだ子供です!」

必死の声。

しかし村長は首を振る。

「危険な力だ」

「しかし!」

「決定だ」

静かな一言だった。

エリシアの声が止まる。

リュカは何も言えなかった。

ただ立ち尽くす。

村人たちは誰も近づかない。

まるで

化け物を見るような目だった。

やがて村長が言う。

「今日中に村を出なさい」

リュカの足が震える。

家。

友達。

全部ここにある。

それなのに。

「……行きなさい」

その言葉が

最後だった。

夕焼けの道。

リュカは一人歩いていた。

小さな荷物だけ。

振り返る。

遠くに村が見えた。

ルメール村。

生まれ育った場所。

でも

もう帰れない。

リュカの目から涙がこぼれた。

「……どうして」

答えはない。

ただ

赤い炎だけが

静かに揺れていた。

そしてこの日。

誰も知らなかった。

この小さな少女が

千年に一人の存在――

赤魔法使い

であることを。

そして。

未来で

世界を救うことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ