第三話
第3話
二人の戦い
炎弾がゴブリンを吹き飛ばした。
「ギャアッ!」
焼け焦げた魔物が地面に転がる。
森の空気が一瞬止まった。
金髪の少年が振り返る。
青い瞳が、まっすぐリュカを見た。
「……魔法?」
驚いた声だった。
しかし、ゴブリンは待ってくれない。
「ギャギャ!」
残りのゴブリンが一斉に襲いかかる。
少年はすぐ剣を構えた。
「話は後だな」
低く呟く。
そして次の瞬間。
剣が閃いた。
ザンッ!
一体のゴブリンが真っ二つになる。
リュカは目を見開いた。
(速い……)
ただの剣士じゃない。
動きが鋭い。
まるで騎士のような剣。
しかし敵はまだ多い。
「五体か……」
少年が周囲を見た。
リュカも短剣を握る。
怖い。
でも。
逃げたらこの人が死ぬ。
リュカは息を吸った。
「……はやあし」
赤い光が足元に広がる。
次の瞬間。
リュカの体が一気に加速した。
森の中を風のように走る。
ゴブリンの背後へ回り込む。
「えっ!?」
少年が驚いた。
リュカは短剣を振る。
「赤刃!」
刃に赤い炎がまとわりつく。
ザシュッ!
ゴブリンの肩が焼き裂かれた。
「ギャア!」
魔物が倒れる。
少年が口笛を吹いた。
「やるな」
その間にもゴブリンが迫る。
一体がリュカに飛びかかった。
「危ない!」
少年が叫ぶ。
だがリュカは落ち着いていた。
手を前に出す。
「赤火!」
ボン!
炎弾がゴブリンの顔に直撃する。
魔物はそのまま倒れた。
残り二体。
少年が前に出る。
「ここは任せろ」
剣を構える。
ゴブリンが突っ込む。
その瞬間。
剣が弧を描いた。
ザンッ!
一体撃破。
もう一体が後ろから襲う。
だが――
「遅い」
振り返りざまの一閃。
ゴブリンの体が崩れ落ちた。
静寂。
森が再び静かになる。
しばらく誰も動かなかった。
やがて少年が剣を鞘に収める。
「助かった」
そう言って笑った。
「ありがとう」
リュカは少し戸惑う。
人と話すのは久しぶりだった。
「……うん」
小さく頷く。
少年は周囲を見渡した。
「この森、ゴブリンが多すぎるな」
そして改めてリュカを見る。
「君、ここに住んでるのか?」
リュカは少し迷ってから答えた。
「……うん」
「六年くらい」
少年の目が丸くなる。
「六年!?」
驚きすぎて声が裏返った。
「一人で?」
リュカは頷く。
少年はしばらく黙っていた。
それから小さく笑う。
「すごいな」
リュカは少し顔を赤くした。
褒められることなんて、久しぶりだった。
少年が手を差し出す。
「俺はアルベルト」
気さくな笑顔。
「旅の剣士だ」
もちろん。
それは半分だけ本当だった。
リュカは少し迷ってから、手を握る。
「……リュカ」
短い自己紹介。
しかしこの出会いが。
少女の運命を
そして
世界の運命を
大きく変えていくことになる。




