第十八話
第18話
会えない理由
夜。
町の外れの小さな丘。
リュカは一人で座っていた。
遠くに町の灯りが見える。
静かな夜だった。
草が風に揺れる。
リュカは膝を抱えていた。
「……お姉ちゃん」
小さく呟く。
六年前の記憶がよみがえる。
村の広場。
村人たちの冷たい視線。
そして――
泣いていたエリシア。
『リュカを追い出さないでください!』
必死に叫んでいた声。
でも。
結局。
リュカは村を出た。
森で六年。
一人で生きた。
リュカは顔を伏せる。
「……会えない」
もし今会ったら。
何て言えばいいのか分からない。
その時だった。
「ここにいたか」
後ろから声がした。
アルベルトだった。
手にはパンの袋。
リュカの隣に座る。
「腹減ってるだろ」
パンを渡す。
リュカは少し笑った。
「ありがとう」
二人で黙って食べる。
しばらくして。
アルベルトが言った。
「さっきの人」
リュカは目を伏せる。
「……お姉ちゃん」
アルベルトは頷いた。
「探してたな」
リュカは小さく言う。
「ずっと」
風が静かに吹く。
リュカは言葉を続けた。
「でも」
「会うの怖い」
アルベルトは黙って聞いている。
リュカは震える声で言った。
「私」
「村を追い出された子だから」
「お姉ちゃんも」
「私を見たら……」
言葉が止まる。
アルベルトが静かに言った。
「違う」
リュカが顔を上げる。
アルベルトは真っ直ぐ言う。
「さっきの人」
「お前を探してた」
それだけだった。
でも。
その言葉は強かった。
リュカは少し黙る。
胸の奥が温かくなる。
アルベルトが笑う。
「焦らなくていい」
「いつか会えばいい」
リュカは小さく頷いた。
「……うん」
空を見上げる。
星が綺麗だった。
六年前。
森で一人だった夜。
星を見ながら泣いていた。
でも今は。
隣に人がいる。
アルベルトが立ち上がる。
「戻るか」
リュカも立つ。
町の灯りへ向かって歩く。
リュカは少しだけ思った。
いつか。
ちゃんと。
お姉ちゃんに会いたい。
そう思える自分が
少しだけ
嬉しかった。




