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第十七話

第17話

巡回白魔法師


夕方。

冒険者ギルド。

扉を開けると、いつもの賑やかな空気が流れていた。

アルベルトがカウンターへ歩く。

「依頼完了」

受付嬢が驚いた顔をする。

「もうですか?」

アルベルトが笑う。

「オーク一匹だ」

受付嬢は書類を確認する。

そして頷いた。

「確認できました」

カウンターの下から小さな袋を取り出す。

「報酬です」

袋の中には――

銀貨一枚。

リュカの目が少し大きくなる。

銅貨より大きい。

ずっしり重い。

アルベルトが言う。

「オーク討伐だからな」

リュカは袋を握りしめた。

森で一人だった頃。

お金なんてなかった。

でも今は違う。

自分の力で手に入れた報酬。

受付嬢が微笑む。

「順調ですね」

アルベルトが肩をすくめる。

「まあな」

その時だった。

ギルドの扉が開いた。

ギィ……

静かな音。

中に入ってきたのは――

白いローブの女性だった。

長い金色の髪。

優しい目。

胸には教会の紋章。

受付嬢が言う。

「巡回白魔法師様」

リュカは少し驚いた。

白魔法師。

それは村で尊敬される存在だった。

女性は受付へ歩いてくる。

穏やかな声で言った。

「少しお聞きしたいのですが」

受付嬢が頷く。

「はい」

女性は少し迷うようにしてから言った。

「この町の近くで」

「赤い髪の少女を見ませんでしたか?」

リュカの心臓が強く跳ねた。

赤い髪。

それは――

自分。

アルベルトもガルヴァンも気づいた。

だが何も言わない。

受付嬢が首をかしげる。

「赤い髪ですか?」

女性は頷く。

「六年前」

「妹がいなくなりました」

静かな声。

でも。

どこか悲しそうだった。

リュカの胸が締め付けられる。

女性は続ける。

「ずっと探しているんです」

リュカは目を伏せた。

胸の奥がざわつく。

その時。

アルベルトが軽く言った。

「見てないな」

受付嬢も首を振る。

「この町では聞きませんね」

女性は少し残念そうに微笑んだ。

「そうですか……」

それから小さく頭を下げる。

「ありがとうございました」

そしてギルドを出て行った。

扉が閉まる。

しばらく沈黙が続いた。

リュカの手が少し震えていた。

アルベルトが静かに聞く。

「……知り合いか?」

リュカは小さく答えた。

「……お姉ちゃん」

アルベルトは驚かなかった。

なんとなく分かっていた。

リュカは呟く。

「エリシア」

六年前。

村で最後に泣いていた人。

妹を止められなかった人。

今も

探してくれている。

リュカの目が少し潤んだ。

でも。

今はまだ。

会う勇気がなかった。

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